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君を自転車で轢いた後 ※完結済み  作者: じなん
第四章 凛堂四葉のお話し
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第二十二話 凛堂四葉


 取り止めのない日記 この人は駄目だった、あの物語はつまらなかったという記述が続いたかと思うと、日記の最後あの事故の数日前の記述にはただこう書かれていた。



『気になる人を見つけた。あの坂で待ってみよう』



 それを見て、ゾクっと怖気がしたと同時に、全てのパズルのピースが綺麗にはまったような気がした。



 つまりは、そういうことのか?

あの日の事故は、偶然ではなく……。



 考えると、いくつか心当たりがある。



何故あの日、木陰の暗がりに四葉さんがいたのか。


何故あの日、四葉さんは黒い服を着ていたのか。


何故あの日、あの時あの場所にいたのか。


……何故あの日、俺の自転車のライトが故障したのか。



 ふと、視線を感じて目を向けると、そこにはいつものようにこちらを見つめる四葉さんがいた。

薄暗がりの中、瞳孔を大きく広げてじっとこちらを見ている。



「四葉さん、教えてください。あの日の事故は……」



 とふと我に返る。

……そもそもこの人には説明などできないのだ。

彼女は言葉を失っているのだから。

日記に書いてあることは、別の人のことかもしれない。

けれども、状況としてはこういうことなのかもしれない。



 一目惚れしたから事故の慰謝料等を免除して、相手を自分のお世話係にしたのではなく、


 そもそも、()()()()()()()()()()()()()()に事故を起こして、慰謝料をふっかけた。



 相手を加害者にして、自分を被害者にすることで、無理やり相手の弱みを作り出した。



 ……いや、そんなことがあるのだろうか?

現に今、四葉さんは大きな怪我を負って、その後遺症に苦しんでいる。見ず知らずの他人にそんな大きなリスク。

下手をすれば自分の命をもかける必要があるのだろうか?

もしかすると、自分のように責任をとろうとするまでもなく、逃げてしまう可能性だってあるのに。



 それに、そうまでした結果が赤の他人を……

通りがかっただけの相手を側に置いておくことだけなんて、全く理屈に合わない話だ。



 ()()()()()()()()()()()()()()()()



 ……けれど。今までの四葉さんの行動を考えると、それぐらいのことはしかねないとも思えた。



 四葉さんが俺を好きになった理由は……

偶然、あの時間に俺があの坂を下っていたから。

そう考えると、全てのことに合点がいった。



「四葉さん、あの事故は、本当に……」


「………………」




「事故、だったのか?」




当然だけれども


四葉さんは答えることはなかった。

ただいつかのようにくすくすと微笑みを浮かべて、

頬に手を添えてゆっくりと口づけをした。


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