第二十一話 理想の恋愛
相手のことは置いておいて私は実際どんな恋愛をしたいのだろう。
もちろん、好きあった相手と仲睦まじい関係になりたい……というのは前提としてある。
それはもう出会ってから死ぬまで。ずっとずっと一緒にいて愛を語り合いたい。お互いのことを好きあって尊敬しあい、そしてできれば死が二人を分つとも。
だから浮気は論外。恋人がいながら別の人間にうつつをぬかすなど耐えられない。愛する人が愛を注ぐ相手は私だけでいいし。私が愛を囁くのもその人だけでいい。
それが私にとっての最低条件だった。
けれど、それを友人に話したら、
「凛ちゃんってやっぱり……重いわw」
だそうだ。何か変なことを言ったつもりはないのだけど、
笑われてしまった。
世の恋人たちはそうではない、ということなのだろう。
考えてみるといつもニュースでは誰々が結婚したという速報以上に、誰々が離婚したというスクープを何度も何度も繰り返している。
価値観の相違、不倫、別居、育児方針の違い……。
そんなことがずらずらと出てきては、幸せなはずの二人の仲を引き裂いていく。
それに……そもそも私もそうなのではないだろうか?
今は夢見るままに理想を考えているけれど、
いざ誰かと付き合い出したら他の人と比べたり、些細なことですれ違ったりして自分から理想の恋愛を終わらせてしまうのではないだろうか?
どうにかして、愛する二人が絶対に離れられないようにする、くびきが必要なのだと。そのとき私は思い至った。
私と相手を縛るくびき。
どうあっても外れない、運命のようなもの。
それさえあれば、私は恋をできるかもしれない。
つまるところ、相手は誰だっていいのだ。
自分と相手が互いに不可欠な存在になってしまえば、必然的にその相手を必要として結果として愛が芽生えるだろう。
そうすれば、私の理想の恋愛ができる。
先に二人の間柄を絶対に離れられないものにして、後から相手を好きになればいい。
そう結論が出たときに、全てに納得がいった。
これならば、たとえ私の気持ちが薄れようとも相手の気持ちが離れていこうとも、永遠に、お互いを愛することしかできない。
けれども、そんな都合の良い相手が見つかるものだろうか?
夏の暑さが次第に深まるなかで、
何気なく開いていた窓の外、
勢いよく坂を下っていく、一人の男の子。
やはり、私は運がいい。