第二十話 恋を探して
今まで、大抵のことはなんでもできた私にとって恋だけはどうしてもできないことだった。
ある日、ふと母に馴れ初めを聞いた。
「私? 私たちはお見合い結婚だったのよ。凛堂さんはこの地域では有名なお家で家柄も良くて年の瀬も近いからって、お父様が取り計らってくれてね。会ってみて悪い人ではなかったから」
なんともつまらない内容だった。
なんの参考にもならなかったしもしかすると自分も同じように親に相手を探されるとなると、嫌悪感すら湧いた。
彼氏のいる同級生にも聞いた。
「別に、そこまで変なことはしてないよ〜。
アイツとは昔っからの付き合いだしそのまま成り行き的な? ……まあ、気が合うし一緒にいて苦痛じゃないならいいんじゃね?」
参考にならない話だった。一緒にいて苦痛じゃない他人なんてそれこそもう既に好きあってる状態ではないだろうか?
私はその、前段階で足踏みしているというのに。
この世に数多ある、愛を語る作品から学ぼうとした。
「君を一目見た時から運命を感じたんだ!
それは心に雷を落とされたかのような鮮烈で、心を焦がすほどに堪えられない衝動だった! だから僕は君を愛してるんだ! 一生をかけて、君を幸せにしてみせる!」
なるほど、と思った。
運命というものならば、理屈ではなく心で恋を理解できるかもしれない。そう結論づけて、試しにめぼしい人を片っ端から探してみた。
……。
………………。
この学校には、私の運命はなかったようだ。
無駄な時間を過ごした。
そもそも私はどんな相手なら好きになれるのだろう。
それをよく考えてみれば、自ずと当てはまる相手が見つかるかもしれない。
まずは容姿。
……正直どうでもいい。
あまりに良すぎると浮気をしないか不安になるだろうし、
あまりに悪いのは同じ人間として見ることができない。
ほどほどの相手ならば別にどうでもいい。
次に性格。
……まあ、そこまで理想はない。
真面目だったり、お調子者だったり冷静だったりその程度ならそれぞれの個性の範囲だ。それを選り好みような趣味はない。極端に性格が悪いのは少し困るけども。
後は家柄。
……現代の日本で、気にすることでは無い。
母が聞いたらそんなことはないと言いそうだが、所詮は生まれた家の話だ。変えようもないものをわざわざ厳しく精査するのは馬鹿らしい。
外国の人とは少し考えるが。
つまるところ、私にとって相手に求めるものは特に無いということになる。
ほどほどの容姿
嫌いにならない程度の人格
特に問題の無い家
たぶん、このぐらいなら、探せばすぐ見つかるんじゃないか?
……。
………………。
私は存外に、理想が高めだったようだ。