8話 君が、好きだ(本番)
彼女はしばらく固まっていた。お互いの時が止まったようだった。
「ありがとう」少しして、彼女は告げる。琴音と同じ台詞だった。
「そう言われて嬉しい」語尾に「っス」がつかない事以外はまだ一緒だった。
しかし、真っ赤だった琴音とは反対に、彼女の表情は凍っているように変化しなかった。まっすぐ僕を見つめ返してはいたけれど、いつもと同じ氷の瞳を佇ませていた。
それは困惑のようでもあったし、告白を跳ね返すようでもあった。
――僕は、初詣に好きだった同級生、藍に告白をした。琴音のアドバイス通りに、「君が好きだ」と。
練習の時、琴音はここから先は言わなかった。真っ赤な顔で「私も……」と言いかけ、慌てて「返答はできないッス、相手がどう答えるかはわからないッスから」と付け加えていた。
真っ赤な顔で「思わず惚れそうになりました……告白は完璧っスね。本番も頑張りましょ!」と応援してくれた。
告白は練習の通りに言えた、はずだ。
僕が握った彼女の手は氷と思わせるような冷たさだった。まるでこちらの身体……いや心までも凍てつかせようとするようだった。
沈黙。僕は藍の瞳を見つめたまま動かなかった。いや、動かせなかった。
彼女が口を開きかける。しかし、一度閉じて目線を下に伏せる。なんて切り出すべきか迷っているのだろうか。
藍は息を大きく吸い、ゆっくりと吐き出す。そして再度ゆっくりと口を開け、言葉を紡ぎ――