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4話 後輩の家はくそデカハウス

「ついたっス!」琴音は立ち止まる。


「え、ここなの?」僕は驚く。その家は豪邸、と言って差し支えない大きさだった。まず門が自分の倍程もある。


「はい。ほんのちょっとデカイっスけど。どぞどぞ」彼女は門を開ける。


「ちょっとどころじゃなくない?」そう返しながら僕は門をくぐる。


「いやでかいな!?」ゆうに自分の家の倍はある。敷地としては学校の体育館ぐらいひろい。なんか入った途端目の前に大きな池あるし。どうやら池にかかった橋を渡って家に行くみたいだ。


「まー細かいこと気にせずに。はよケーキ食べましょ」


「だから押すなって! 池に落ちるって!!」僕は慌てる。


「いらっしゃっせ〜」と玄関のドアを開けて彼女は手招きをする。……コンビニかな?


「さて、どの部屋使うッスかね〜」そう言いつつ廊下のドアをどんどん開けて覗き始めた。


 廊下も長く、ここで50m競走ぐらいならできそうだ。いや50mもないだろうけど。部屋も相当な数ある。


「あ、ここがいいっすね!」そう言って僕を手招きする。


 案内された部屋は和室だった。真ん中にはこたつが一つおいてある。


「ほら、おこたでぬくぬくしながらケーキ突っつくの最高じゃないッスか?」


「わかる」速攻で同意した。


「じゃケーキおいて待っててくださいっス。着替えたり色々してくるんで。上着はそこらへんのハンガーかけといてください。こたつ入ってテレビ点けていいっスよ〜」そう告げて琴音は出ていった。


 僕は言われたとおりにする。テレビでは当たり前のようにクリスマス特集をしていた。テロップには「おすすめのデートスポット!」と表示されている。僕はまたしてもため息をついてしまう。


 やっぱり、早めに告白すればよかったかな。そうしたら今日一緒に過ごせたかもしれない。……OKされればの話だけど。


 ……いや、後輩とはいえ女の子と一緒に過ごせるだけ幸せか。本来なら一人で寂しくクリぼっちだったのだから。


「おまたせっス!」もどってきた琴音は部屋着に着替えていた。


「かわいいね、それ」


「え? 急に褒めても何も出ないっスよ? あ、お茶は出ますけど」ちょっと照れたように彼女は言う。


「いやその猫の服」琴音の部屋着は黒猫をモチーフとしたもののようだ。フードには猫耳がついていてとても良い。被っているのでよく似合っている。


「えっ、ああ勘違いしたッス……。でもそれはそれで恥ずいっス……」フードを深めに被り表情を隠そうとする。その動作がまたかわいい。


「部屋着だし何着ても別にいいんじゃない?」


「いやセンパイに見られるとか何も考えてなかったッスから……」


「似合ってるから大丈夫だって」


「うう……それならこのまま着るッス」


 遠くの方で、ピーと音が聞こえた。


「お湯湧いたんでお茶入れてくるッス。センパイミルクティーとか好きです?」


「お茶………? ティーだからお茶か。うん好きだよ」


「じゃそれ入れてくるっス……あ、猫舌っスか?」琴音はちょっと自分の舌を出して指差し尋ねてくる。


「えっなんで知ってるの。温めのほうが好きだけども」


「いや私が猫舌だから聞いたんす。それなら同じぬるめにしますね」そういってまた出ていった。


 そうして、なし崩し的なミニクリスマス会の準備が整った。

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