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風の鳴る頃  作者: フィング
8/9

8 一枚の札

 某ワクチンを打って撃沈し、復活後まもなく…いや復活する間もなく風邪を引き、まともな作品投稿ができなかった。体調管理を意識する世の中が続き、実質無菌で健康に過ごせていた半面、今こうして体調を崩すと、反動の様につらく感じる。

 あと五月病もウンタラカンタラ( ^ω^)・・・

 その手にした紙には不可思議な模様が描かれている。文字のようにみの絵にようにも見えるそれは、規則性はあれど何を示すか見当がつかなかった。

 しかし、似たような模様なら見た覚えがある。


「もしやあの風鈴についてた紙と同じ物だろうか」


「用途としては別物だけど、素材とかは同じだね」


「どっちにしろ、特別なものであるのには変わりないのだろう」


 あまりにも食いつきのいい反応を見せるシーナを見て、風璃はクスリと笑った。

 その様子を見てハッとした彼女は一度咳き込みをし冷静に戻ってしまう。


「シーナさんって結構顔に出ますよね。コロコロ変わるから見てて面白いな」


「あ、えっと……そうなのか?まあいいや、説明を続けてくれ」


「それなんですが、ここからはその目で()()もらったほうが説明しやすいと思いますよ」


()()?その紙がメガネにでも変身するのか」


「それはそれで面白そうですけど、違いますね。別に目だけに作用するものではありませんので」


「あ、そうなのか。日本語というものの難しさが身にしみるよ」


「まあ、というわけで早速使ってもらいましょう。立った状態で全身の力を抜いておいてください」


「わかった」


 よそに目をやれば、部屋の外からパロンが観察している。身を任せると言っても、彼ら機械にとって主人の安全が一番な事に違いはない。

 信頼しているかどうかとは別に、いつでも警戒を怠らない様子はさすがと言えよう。


 とは言えど、その主人自体が余りにも無防備すぎる気もする。言われるがままに動く姿は、むしろこっち方が機械的だと思えるほどに。


 なぜそう立ち回るのか審議はわからない。ただ、今は知るべきではないのだろう。知らぬが仏に風は囁かない。


「では、いきます」


 シーナのへそに札を貼り付け、手のひらでそれを打ち付けた。


「ぐっ……!?」


 咄嗟に声が出てしまったが痛みはない。変わりに謎の浮遊感と目眩がその身に襲う。そして目の前には、淡く輝く視界の中に自身の頭部が映し出されていた。


「これは……」


 そう声に出す間もなく、目の前の肉体に引き戻されていった。

 気がつけば膝を付き、無数の汗がその手に滲んでいるのが伝わってくる。


「……今のは?」


「シーナ様!?」


 その様子から心配を覚えたのか、隠れていたパロンが飛び出し駆け寄ってくる。ソレに表情が増えたおかげか、心配していることが容易にわかる。


「大丈夫でしょうか、シーナ様」


「ああ、健康状態に異常は無い。ただ少し疲れたな。水を持ってきてくれるか」


「承知いたしました」


 去り行くその背後を見送った後に、視線は風璃の方へと向けられる。その鋭い視線は軽蔑でもなんでもなく、ただまじまじと、何か見慣れぬモノを見たような目をしていた。


「いま、風璃の体から光の様な……オーラのような物が見える。これが見せたかったものなのか?」


「そうですね。そのオーラというのは言わば生命力であり、少々普通の次元から逸脱した物体だよ」


「次元ときたか。確かにそれなら我々でも観測し難いな」


「生命力即ち魂。あらゆる形でそれは外に排出し、形を作り出す。或いは空虚に或いは物にもね。その存在を無事認知できたみたいだし、本格的に勉強していこうか」


「ホント、君は期待を裏切らないな」


 傍から見れば謎の、抽象的な会話が連なるばかりで理解ができないだろう。それでもお互い、何かしらを察し合い理解しているようだった。なんの隔てなく会話できる以上にこうも清々しいことなんてあるのだろうか。


 ただ今は少し、疲れを癒やす冷たい水が恋しい。

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