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風の鳴る頃  作者: フィング
7/9

7 幻想のまにまに

 なんというか、この作品意味深に書きがちな自分。

 咲山家に赴いてから数日ほど経ったであろう。

 もとより物は少なかったが、ホコリを被った部屋を隅々まで掃除し、大家には十分誠意を見せれたであろう。

 立つ鳥跡を濁さずとはまさにこのことであろう。


「きれいなものだねぇ。引越し業者は来なかったが、荷物の方は大丈夫なのかい?」


「そもそも家具とやらは置いてなかったからな。それに、質素という部屋が好きだからな」


「おいおい質素は部屋の名じゃないよ。状態を示す言葉さね」


「これは失礼した」


「いや、何でも完璧そうなアンタがたまに見せるま抜けたところを見ると、やっぱりあんたも人間なんだって実感できる。そういうところ、結構大事なんだからねぇ」


「そう言われると、ちょっと複雑な気分だな」


 感が鋭く、結局最後まで気が抜けない相手だった。とはいえ、人柄としては面倒見がよく、もし同じ惑星で生まれた人間同士であったならば良い友となっていたかもしれない。


 だからこそ別れの挨拶ぐらい、微笑んでもらえるように。


「では大家……いや彩織(さおり)よ。今までお世話になった。また顔を合わせる機会があるかもしれないが、その時にも元気な姿を見せてくれ」


「当たり前さね。逃げたうちの旦那を懲らしめるまでは体調を崩してなんていられんさ」


「はは、やはり彩織はお強い方だ」


 今まで様々な調査をしてきたが、これほどお人の良い者は宇宙規模で見てもそう多くはないだろう。

 いつか、何の警戒心を持つこともなく共に話せる日を夢見て、また会う約束を残して去るのだ。


「さて向かうか。風璃の元に」


 引っ越し先とは即ち、咲山家の屋敷だ。協力関係を持ったからという理由もあるが、あの広い土地を使えることに越したことは無い。そう、あそこは今後大事な拠点となるのだから。


 ちなみに暑いこの季節を、快適に過ごせるあの場所が恋しかったからというのは内緒だ。


 =☆☆=☆☆=☆☆=


 ガラスの風鈴はと風と共に揺れ、次に人の心をも揺さぶる。以前来たときは気づきもしなかったが、この家の至るところに風鈴がぶら下げられているようだった。

 それを見ていると、ふと風璃の姿を連想させられる。


「やはり、あの影の薄さはあの風鈴とやらの能力なのか。いささか理解しかねるが」


 今の所、その特性に対して科学的根拠を見つけるれていない。だからこそ興味を懐き、ともに同居し観察するべきという結論に至ったのだ。


「しかし、見れば見るほど理解がかけ離れていく気がする。早くこのもやもやする気分を晴らしたいものだ」


 独り言は奥へ奥へと進む廊下で木霊する。たどり着いた先は薄暗く簡素な和の一室だった。

 もともと使われておらず物置であった部屋を片付けてもらい、今や様々な機械が畳に居座る異様な場所となり果てていた。


「少し雑だが必要最低限の道具は揃ったか。質素な空間を

押しつぶすようで悪いが、あいにく内装に力を入れる暇がないからな」


「………それ、誰に向けて話してるの?」


「おおっと、いたのか風璃(ふうり)


「そりゃいますよ、僕の家なんですから。ところで、引っ越しの方は一段落しましたか?」


「まあ、大体は。少し散らかっているがな」


 宇宙から持ち込んだ見知らぬ機械の数々に興味を示す風璃は、それらをまじまじと見ていた。興味の向くまま動くさまは彼らしいが、同時に危うくも思える。


 初めて声を交わした時だって、まるで危機感を持ってるようには思えなかった。


「とりあえず下手に触ったり場所を動かさないでくれよ。壊されることはないと思うが、念の為な」


「わかりました。シーナさんって結構()()()なんですね」


「………そうだな」


 その心配が誰に向けたものなのか、彼なら簡単に気づくのだろうか。その真意はわからない。理解できるぐらいの親交を深めたわけでもないのだから当たり前だろうが。


 しかし、考え込むのは悪い癖だとここ最近に何度言われただろうか。


「ところでシーナさん。もし一段落ついたのでしたら、少しお話しませんか」


「お話って、なんだ?」


「まあ、いわゆる()()の話ですね」


「なるほど、であれば聞こうか」


 特殊な能力や技術を持つ存在の調査を、二人は称して仕事と呼ぶことにしていた。いわゆる隠語というやつだ。


「初仕事になるけど、少し突拍子もない話になるのだけどね。魂とか、幽霊とかの存在をシーナは信じる?」


「魂………そして幽霊ね」


 一般的にオカルトと呼ばれている非科学的な存在であり、純粋でない限りは到底信じはしないだろう。それでもシーナは真剣に考えた後に答えを出した。


「正直なんとも言えない。もちろんこの答えに至ったのにもわけがある」


「じゃあ、それについて聞こうか」


「単純に霊的存在についての概念が私や宇宙系(スターシード)ない。昔の日本は病気や災害などを厄と呼び、厄は悪霊が引き起こしてたと信じられていた時期があると聞く。今や廃れた思想と思っていたのだが違うのか?」


「確かにそのとおりだね。でも霊や魂といえる存在は実際にあるんだよ。少し難しい話になるけどね」


「問題ない。今の所は風璃のことを信用している。突拍子もないだとしても信じるさ。事実それがあり得ることを私は知っているからな」


「なるほど、そうでしたか」


 純粋すぎると思われそうだが、これはこれで彼女にも考えがあっての言葉。


 この言葉にどういった反応をするのか、観察している。


「まあ、百聞は一見にしかずと言いますし。まずはそれを視てみることにしましょうか」


 観察するなら、その行いに免じて見せてあげようか。


 お互い腹の内を探り合い、それを楽しむのもまた一興。


 ゲームの序章を始めるため、風璃は一枚の札を手に取った。

 気が向いたら投稿。

 最近シナリオ製作にあたってメンタルが折れることがあったので、進む足は挫かぬよう頑張りたいです。

(最近寝不足です)

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