4 歓喜を鳴らす
やっぱこの作品は個人的に書きやすい。逆に、未熟な中で始めた別作品の方を書きき続けるのが面倒に思えてしまう今日この頃。
謎の高エネルギー反応を調査するためこの地球に降り立ったが、何の成果を得られずに三年もの月日が経過してしまった。それは無意識にでも焦りを促し、子供相手に後れを取るミスをしてしまった。挙句の果てには兄に邪魔をされる始末。まあ、長期に渡って顔を合わせていない故、余計に心配を促進させてしまったのもある。巡り巡って結局自分の落ち度になってくるのだ。
そんな後悔をかみしめながらも、日が落ちゆく帰路を歩んでいた。
そうして自身が住まうアパートに着きドアに手を掛けたところを見計らったかのように、ここの大家が声をかけてきた。外国人であり有名な研究所で働くシーナが珍しいようなので普段からよく話しかけてくるのだが、日が暮れたこの時間帯に声をかけてくるのは珍しかった。
「遅い帰りじゃないかシーナ。さては変な男どもに絡まれただろ」
「えっと、何で知ってるんですか?」
「女の勘……って言いたいところだが、本当はついさっき来た少年に教えてもらったのさ。それと、その時にアンタが落としていった物も届けてくれたのさ。まさかアンタに子供の知り合いがいたとはねぇ」
「そう…でしたか。わざわざ伝えていただきありがとうございます。いつか会った時にお礼を言っておきます」
「いい心がけだ。そういう礼儀正しい所を見ると外国人には思えないさね」
いつも彼女と会話するたび精神をすり減らしている気がする。たびたび女の勘という根拠のない発言をしてくるが、その度に的確なところを突いてくることもあり正直苦手だ。
「では、もう遅いのでこれで。おやすみなさい、大家さん」
「気軽に彩織って呼べって言ってるのに頑なだね。まあ、体に気を付けてしっかり休むんだよ」
「はい」
こうして過ごす日々の中で主に疲れる要因が大家との会話であるものだから皮肉なものだ。だが、それ以上に疲れを装う出来事があった。
「咲山風璃と言ったかあの少年。ここを訪ねて来たというのも彼だろうか」
ほんと行動理念がいまいちつかめない相手だ。だが、向こうからコンタクトを求めてくるのは好都合だった。その手に握る一枚の紙に感謝しながらも家に上がる。
「お帰りなさいシーナ様。遅くなると思い事前にお湯沸かしておきましたので、すぐにカップ麺は食べれますよ」
「ありがとうパロン。お前にしては気が利く……パロン?ホントにどうしたお前」
手元の紙から目線を動かせば、変わり果てた状態のパロン…らしき何かが浮かんでいた。
小柄ながらも人の姿を模した物体。しかし、関節にあたる部位から見える金属特有の光沢を見るからに明らかな機械であることが分かる。それから発する音はまさしくパロンのものであるが、あまりにも流暢に話すものだから度肝を抜かれた。
「ホントにパロンなんだな?」
「はい。気絶したシーナ様に変わり風璃様にこちらへ輸送していただきました。なおこの姿は、故障した私ことパロンをかの風璃様が修理してくれた結果となります」
「いやいやそうはならんだろ。声以外の原型が一切留められていないじゃないか!」
「驚かれる気持ちは良く分かります。何せ、自己修理プログラムにインプットされていた設計図を新たに書き換えることにより、経過でこの姿になるように仕込んだのですから。また、今回のような外部からの操作によってシーナ様の命令に背くことが無いよう新たなプログラムを構築していただきました」
「スターシードの技術の結晶がこうもたやすく理解された挙句改良されるなんて、私を含む宇宙人のメンツが丸つぶれじゃないか」
こうも規格外だと頭を抱えずにはいられない。だが前向きに考えれば、それほどの逸材と面識を持てたことは評価されるべきことではないのだろうか。
「これほどの実力者ともなれば、明日彼と会うのが俄然楽しみになってくるな」
今この時、らしくもなく笑みを浮かべていたと思う。こんな歓喜極まる気持ちは憂鬱な三年間を忘れてしまえる程のものであった。ただ今は期待通りの逸材であることを願うばかりだ。
=☆☆=☆☆=☆☆=
一刻、また一刻と時間が流れる中、晴れやかな夜に優しい光を放つ月を風鈴の音と共に堪能する。本来であれば幼きこの身に夜更かしは厳禁であるが、幼少の頃からずっと床に伏せてた身としては寝飽きたというもの。
かの咲山風璃は刺激に飢えている。それも強欲なほどに。だから今回の様にこの身の危険にさらしたとしても、その歩みを止めることは無ないだろう。今までも、これからだって。
「来てくれるかなシーナさん。もうすぐ長い長い夏休みが始まるんだし、それまでに来てくれなかったらきっと飽きで飢えて死んじゃうかもしれないから」
きっと、宇宙人のいる生活は刺激的で毎日が楽しくなるだろう。そう、本で見た物語の主人公の様に。
「……今から話すのは風の言葉。多分遅くてもアレフ・シーナは明日の内にここを訪ねてくるだろうから、みんな粗相のないようにお願いね」
リンと風鈴が鳴る。それは風璃の言葉に返事をするかのように。
暇を持て余したら続きを書くでしょう。なので気長にお待ちください。
もし続きを投稿するよう促進する感想が来た場合は、期待に応えれるよう頑張るかもしれませんがね(若干の上から目線)。