1 苦労人な宇宙人
えーこちら、なんか思いついた作品です。
他の作品同様、ぼちぼち投稿する予定です。
まあ、評価が良ければ本気出すかも?
『君は、今まですれ違った人物を覚えているか』
何も超人的な記憶力を求めているのではない。でも、疑問に思ったことはないか。
『見ず知らずの人間が、どんな人物なのか』
無論、見た人全員の素性を知ることなどできやしない。平凡な僕からしたら、誰もが平凡な人間としか思えない。事実そうなのであろう。
『見る人全て、背景に溶け込むモブにしか思えない』
かと言って、自身が主人公だなんて思うこともない。みんなと同じモブ。
いくら崇められようとも、いくら蔑まれようとも、何も特別になれるわけではない。
それでも、期待してしまう。
『いつか主人公みたいに、輝ける日が来るのだと』
=☆☆=☆☆=☆☆=
地球のはるか上空。大気圏を過ぎ、場所は宇宙。そこに人知れず巨大な宇宙船が浮遊していた。
眼下に映るは青き美しき惑星。彼女は目を凝らしながらそれを見ていた。
紫の瞳に金髪の女性。背も高く、アイドルの顔と比にもならないほど美しい容姿であった。
しかし、彼女はいわゆる地球外生命体『宇宙人』である。
「あれが、惑星アース。ここに私達と同じ知的生命体がいるのよね?」
彼女の問に答えたのは、宙を浮遊する球体。どこか機械的で、無機質なものであった。
『ソノ通リデス。監視対象デアルコノ星カラ、謎ノエネルギー反応ガ確認サレマシタ。モシ、我々ト同ジ外部生命ニヨルモノデアレバ排除シ、在来生物ニヨルモノデアレバ、保護スルヨウニ……トノ、ゴ命令デス』
「任務の復習ありがとう。で、調査する地域はどこ?事前知識を一切知らされてないんだけど」
『今回向カウ地域ハ日本。ナオ事前知識ハ、文明ニナレルコトヲ目的トシテ、現地デ使用サレテイル器具ヲ使イ調ベテモライマス』
「うわ、メンドイな」
『ソレデハマイリマショウ、シーナ様。サポートハ引キ続キパロンガ引受マス』
「よろしくパロン」
こうしてシーナとパロンは小型宇宙船に乗り換え、地球へと降り立つのであった。
=☆☆=☆☆=☆☆=
個体名アレフ・シーナ。
地球に降り立ちはや三年。調査に来たものの、これまで一切まともな情報を得られていなかった。
現在、最も進んだ技術を有する医療施設の研究員となっていた。
謎のエネルギー反応はこの施設に関わる者の仕業と仮定し、潜入しているのだがあまり成果は出ていない。
「パロン……はエネルギー補充中か。今日は休みもらってるし、職場から呼び出しがない限り暇だと言うことね」
否、調査に休みなどありはしない。
とはいえ、正直飽き飽きとして来てるのも事実。調査という名の散歩もたまにはいいのかもしれない。
借りてるアパートを出て、普段出歩かない方面に足を運ぶ。
どうやらこの先には学校があるらしく、制服姿の中学生らがちらほら確認できる。
「案外、この子供の中にヒントを持つ者がいたりするのだろうか」
向こうの学生らも、珍しい髪色と目を持つシーナに興味を抱いている様子であった。
「ねえねえ、あの人の髪って地毛かな?だとしたら私、金髪の人初めて見るよ」
「それなら、あの紫の目。カッコよくねーか」
「それよりも、あの立ち姿。女性の魅力もさることながら、男性じみた凛々しい感じも良い」
やはり彼ら地球人にとって、この身姿は素晴らしく見えるのであろう。そう思われるのも慣れたものだ。
こうして、学生一人一人に目を凝らす中、不思議な子を見つけた。
「なあなあ風璃、あの人スッゲー美人じゃん。ここら辺に住んでるのかな」
「……僕は見たことある。確か家が近いから」
風璃と言う名の少年。近くに住んでいるといった事実も驚きだが、そんな彼の姿を一瞬見つけることができなかった。
彼がまるでガラスのように透明である錯覚を覚えた。そんなことあるわけないはずなのに。だが今ははっきりと見える。
見た目は普通の黒髪黒目の一般人。ただ、彼の見せる笑みはどこか優しく透き通ってるイメージだ。彼のその雰囲気があの錯覚を産んだのだろうか。
「不思議な人間もいたものだ」
誰の耳に入るはずのないこの一言。だが……
「風の知らせ。聞こえてるよ、お姉さん」
これが、道路を挟んだ初めての出合い。
本来なら、すれ違うだけの関係だが、お互いに深い印象を抱くのだった。
次回、まだ未定