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ホラーばなし

80年代のゾンビに、今どきの萌えカップルがこおばしいシチュで襲われる

作者: 山本大介

 シャワーシーンよくやってたな(笑)。

 

 俺の名は結城綾人(ゆうきあやと)18歳の高校生、両親は海外出張でいない。

 家を預かり一人暮らしだ。

 今日は日曜日、俺は溜め込んだバラエティの録画番組を見ようと、二階の部屋からリビングに降りてきた。

 ・・・・・・今、昼間だよな。

 スマホを見てみる時刻は11時を回っていた。

 にしても部屋が暗い、窓にはカーテンがをしているが、曇りや雨にしたって、こんなに暗くはならない・・・それにさっきから聞こえるこの呻き声はなんだ。

 

 俺はカーテンを開けてみた。

 恐怖で身体が硬直した。

 無数の人達が窓の外にいた。

 顔をべたりと窓につけている。


「の・・・のうみそ・・・脳みそ・・・脳味噌っ!おくでっ!」


 俺は、そっとまたカーテンをしめた。

 これは幻だろう、そうに違いない、じゃなきゃ、バイオハザードみたいな目が飛び出た人や、身体が欠損している人、血だらけの人なんているはずない。

 おまけに白骨化している人までいたぞ・・・そんなリビングデッドな世界が、この平和な日本にあるはずない。

 俺は、さっとカーテンを開ける。


「のっ、の、の、の、のうみそ~」


 俺はカーテンを高速の勢いでしめた。

 その時、ピンポーン、ピンポーン、インターホンが鳴る。

 俺はモニターを覗いた。

 一か月前から付き合い始めた俺の彼女リサだ。

 彼女は必死の表情をしている周りには無数のリビングデッド、俺は玄関へと走る。

 玄関を半分開け、リサの右手をしっかり掴むと中に引き寄せた。


「怖かった!アヤト助かったよ~」


 リサは俺に抱きついてきた。

 暖かい体温のぬくもりと激しく高鳴る鼓動。


「これは、一体・・・」


「ゾンビだよ」


「ゾンビって・・・」


「バタリアンって知ってる?」


「なにそれ?」


「80年代のホラー映画でゾンビが脳味噌くれーって襲ってくるの」


「・・・確か・・・のうみそって今も聞こえるな」


「うん」


「それなのか・・・」


「・・・多分・・・」


 俺はリサを見た。

 彼女の服は血まみれだった。



「とにかく、そいつらこの家には入って来れないようだから。とりあえず風呂に入って、落ち着いて、その血を流しなよ」


「へっ、私・・・ヤダ、血まみれじゃん」


「だからさ」


「いいの?お風呂借りて」


「いいよ」


「じゃ、一緒に入る?」


 リサは潤んだ瞳でこっちを見てきた。

 ちょっとまて、俺たちは先日やっとキスをしたばかりだ。

 

「なんて、冗談よ。じゃ、ありがたくお風呂借りるね」


「ったく」



 彼女が風呂に入っている間、俺はスマホでゾンビとバタリアンについて調べてみた。

 バタリアンに噛まれると自分もバタリアン化してしまう。

 やつらの弱点は頭部らしいということ、頭部を破壊すれば二度と蘇ることがない。

 その昔、オバタリアンなる造語も流行ったらしい。

 あと、その映画の最後は本当に救いがないということ。



 また、アヤトにあえて嬉しい。

 私は彼の家のシャワーを浴びている。

 このまま、身体を奪われてもいい、私はそっと左胸に手をあてた。

 小さな胸だ。

 高鳴る胸の鼓動は収まる気配がない。

 さっきから、あいつらに噛まれた左肩が疼く。

 寒い・・・温度を上げ熱いシャワーなのに、身体は火照っているのに、何故か寒い。

 窓を見た。

 あいつらが覗き込んでいた。


「きゃあああああ!」



 リサの叫び声だ。

 俺は浴室へ走る。

 全裸の彼女が腰を抜かして倒れている。

 目のやり場に困る。

 俺は、棚からバスタオルを取り出し、彼女に渡す。


「ありがと」


「・・・立てるか」


「腰抜けちゃって、多分無理」


「分かった」


 俺はバスタオルを巻いた彼女に、しゃがんで背中を見せる。


「おんぶしてやるよ」



 私は顔が真っ赤だった。

 裸を見られた上に、おんぶですって・・・でもこの緊急時、アヤトの好意に甘えるしかない。


「うん」


 私は彼の広い背中に身体を寄せた。


「好き・・・噛みたい・・・愛したい・・・噛みたい」


 葛藤する。

 心が葛藤する私。


 

 俺はリサをおんぶすると立ち上がる。

 薄いバスタオル越しに感じる、彼女の未発達の胸・・・憧れのおっぱい。

 脈打つ鼓動・・・アレが膨張しそうだ。

 俺は出来る限り平静を装う。


「大丈夫か」


「うん」


 俺は二階の自分の部屋にリサを連れて行く。

 決してこの極限の状況下、やましい気持ちなどない・・・多分。



 ここがアヤトの部屋。

 彼は女の子の着替えがないんでと、自分のTシャツと半ズボンを持ってきてくれた。

 ダブダブだけどアヤトの匂いがするっ、最高っ!



 俺たちは身を寄せ合い、ただただ、ゾンビたちの呻き声を聞き、じっと助けが来るのを待つことにした。

 その間、二回目、三回目のキスとどちらからでもなく交わす。



 ああ、アヤトのキス嬉しい。

 アヤトが欲しい・・・。



 一時間、二時間、時間がたつ。

 気のせいだろうか、あんなに熱かったリサの体温が感じなくなっていた。



 アヤト・・・アヤト・・・の、のうみそが・・・。



「リサ・・・」


 俺は彼女に四度目のキスをしようとした。



「のうみそ~!!!」




 どかーん!

 その瞬間、俺の視界が閃光に包まれた。


 B級ホラー映画のノリです。

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