ゾディアック
「はぁ、はぁ、はぁ」
「どうする?まだやる?」
「頼む。はぁ…」
「ま、気が済むまでやってあげるわ」
特訓は想像以上に厳しかった。内容は赤城のもつコインを奪うこと、武器は何でもありで、無制限。
簡単なように思える内容だが、俺は1度も赤城に触れることすら出来なかった。
「今日は終わり」
「そう、だな。ありがとう」
「れ、礼なんかいらないわよ」
赤城は自販機でポカリを買い手渡してくれる。
「にしても驚いたわ。あんたの成長スピードには目を見張るわね」
「霞には及ばないがな」
俺は呼吸を整えやっとまともに話すことが出来た。
「年数が違うもの。まぁ、あなたはこれからも成長するから安心しなさい」
「そうか……」
「こんなとこで特訓ですか?」
パンっ!
見知らぬ声と発砲音。肩に痛みが走る。俺は手を抑える。ドロっとした感触、血だ。
「拓也!」
そこまで深くはない、だが、誰だ?
霞は慌てて俺に駆けつけてくる。瞬間、霞の背後に影が見えた。
「危ない!」
俺は急いで、霞を庇う。発砲音と共に、今度は腹に痛みが走った。急所は外れたが、血が溢れ出てくる。
「ぐっ、」
目の前には、メガネをかけナイフと銃器を持ち、丸に十字架の入った服をきた男がたっていた。
霞は急いで俺を担ぎ、相手から距離を取り隠れた。
「最悪ね。まさかこんな時に出くわすなんて…」
「し、知ってるのか?」
「えぇ。アメリカで発生した連続殺人鬼。名前は不明、だけど、ゾディアックって名乗ってるわ。未解決事件として取り上げられ、犯人はまだ捕まっていなかった、それがこんなところに…」
霞は爪をかみ、苛立ちを露わにする。
「た、倒せるか?」
「正直キツいわね、あいつには銃がある。それに比べ私たちは、武器なし。勝ち目はゼロに近いわ」
「ゼロとは言わないんだな」
「あんた、その体でまた無茶するつもり?」
「仕方ないだろ、じゃなきゃ死ぬぞ」
任務からは除外された俺たちだが、これは命に関わる問題。逃げれば、助かるかもしれないが、大勢の人を危険に晒すことになる。
「もう仕方ないわね。ミーシャさんには私が話すわ」
「そのかわり!」と付け足す。
「あんたは無茶しないこと、いい?」
「おーけー。作戦は?」
「そうね。じゃあ……」
「おい、ゾディアック!」
「ん?1人?はははははは〜!」
ゾディアックは笑い転げたあと、俺に銃を発砲してくる。
俺はそれを避け、ゾディアックに近づく。
霞によればあいつの使う銃器は「1911ガバメント」装弾数は約7発。
俺は2回打たれ、こいつは今2発うった。残り1発。
俺は1発を避けきれず、腹に少しかする。
「ぐっ、」
弾をうち尽したゾディアックは銃を捨て、ナイフで切りかかる。近接戦、だが、これでも俺には勝ち目はない。だから…
霞はゾディアックの後ろをとる。
だが、ゾディアックはそれに気づき、ターゲットを俺から霞に変えた。
「予想通り!」
霞はゾディアックの銃を拾い、投げつける。
するとゾディアックは難なく交わし、霞に近づいていく。
「外したね〜」
「どこ見てんのよ、間抜け」
俺は霞の投げた銃を受け取り、ゾディアックに向けて投げつける。不意をついたのか、ゾディアックの頭におもいきり、当たった。
「ぐわぁぁぁっ!!」
なぜこうも、見事に命中させれてたといえば、糸を使ったのだ。
霞は銃のトリガー部分に糸を、絡ませ、俺の投げるタイミングで糸をおもいきり引いたのだ。
霞は流れるようにゾディアックの腕を締め。
「アブレーション!」
ゾディアックの身体が静かになっていく。
「ふぅ〜。危なかった」
「さすがIQ140の天才だな」
「やめなさい!そんなことより、あなた…」
「また美由紀先生に怒られるな」
「私も一緒よ」
俺は霞に肩を貸してもらう。
「まだだよ?」
耳元で何が囁いた。瞬間、霞の服から血が滲みだした。
見ると起き上がったゾディアックが霞にナイフを突き刺していた。
「油断したね?」
霞はゆっくりとその場に倒れていく。
「霞!」
俺はゾディアックに殴りかかる、が、交わされ逆に1発貰ってしまう。
やっぱり俺じゃあこいつには勝てない、だが、そんなことしてる間に霞は……
心臓の鼓動がはやい。落ち着け俺。
「俺を使え」
何かが俺に喋りかけてくる。
「誰だ?」
「いいからちょっと身体を寄越せ」
「お前は?」
「力を貸してあげるよ、そうすれば彼女も助けられる」
俺は段々と内側の狂気に自分を支配されていく。
「さぁ、食人の時間だ」