4話 策略
花々で満ちる幻想的な風景。白を基調としたそれらの中に人工的と言える白の絨毯がまっすぐ伸びる。それは、硬くなおもきれいにまっすぐ伸びる。石畳と呼ばれるそれは花々の中央へと道を作り上げその先には花が円を描くように避けるようにして咲いている。石畳と鼻の境目はないに限りなく近く、それがさらに幻想感を高めている。
円状の石畳には、丸く白いテーブルが一つ、テーブルに隣接する人影が二つ座っており、その近くに白銀の鎧が二つ立っている。
影が一つ、カップを置き口を開く。
「王よ。本当にあれでよろしかったのですか?」
「あれ、とは?」
「...。勇者の件ですよ。」
「あぁ。何か問題でもあったか?」
「ありますとも!王、我々の国は、今魔王との戦争よりも重要視することがあるでしょう!そのために勇者召還をしたのではないのですか?」
「わかっておる。隣国のことであろう?」
「分かっておられるなら、なぜ魔王の話をなさられたのですか?!確かに、数十年前より急に魔王軍が領地を広げているのは承知しております。しかし、ここ数年は全く魔王軍に動きは見られておりません。むしろ、魔王軍の侵略に乗じて隣国が動いているのですよ。早めに手を打たなくては隣国と魔王軍との間に板挟みにされてしまいます。そうならないための勇者だと聞き及びましたが...」
「カーフェンリ公爵、少し落ち着かれよ。私とて何も考えてないわけではない。」
カーフェンリと呼ばれた男は王の言葉で「っは!」っとしたのち自らの慌てっぷりに少し羞恥心を覚える。
「こ、これは失礼しました。お恥ずかしい限りです...」
「よい。別に今はかしこまらなくともよい。...それより先の話だが、私が魔王討伐をお願いしたのは、今はあの男にとってそちらのほうがいいと判断したからだ。」
「あの男と言いますと...リョウガとかいう?」
「うむ。...我が国は先祖代々、戦争の際には勇者の力を借りて勝利を収めてきた。私もそうするつもりだ。しかし、どうにもアの勇者は正義感が強い印象を受けてのう。あそこで「君たちには隣国の民と戦争をしてほしい。」などと言っては、逆鱗に触れるやもしれん。今はあの勇者よりも、あの勇者がいないところでほかの勇者を説得するほうがたやすいし、あのものに感化され「帰りたい。」だの「人殺しはいやダダの。」言い始められては困る。......先代によると勇者召還で来る者たちは頭はそれなりに良いが知性はそこまでのものだと聞いていたんだがな...現に少し前までいた勇者など自分の新しい力に酔いしれていて扱いやすかったのだが。...まぁ、例外はあるよのう。」
「そ、そこまでお考えでしたか...なるほど。では、帰る方法を教えなかったのもそのためですね!」
「うむ。あ奴はすぐに帰りたがっていたからな。条件があるにせよ、儀式の塔から帰れるからのう。まあ、その条件は勇者それぞれ。魔王を倒せば帰れるものもいれば、少し人助けをすれば帰れたものもいる。その条件がわからない以上、「帰らせる方法がわからない」というのはあながち間違えでもないからのう。」
「なりほど。さすが歴代の中でも秀でて賢いと謳われているお方は違うというものですな。」
公爵は「ハハハ」と大きな声で笑う。
その言葉に、王は肩をすくめた。
「それに、別れて国を探索させているのも、民たちと触れ合い、少しでも情が移れば言うものもあるからな。すべては計画にすぎんから、一応もしものことも考えなくてはな。」
「王なら大丈夫でしょう。私、カーフェンリ信頼しておりますゆえ。」
「そうか、それはありがたい。......そろそろ紅茶が冷えてしまう。このような話ばかりでなく景気のよう話としましょう。」
「それもそうですな。」
白い花々に囲まれながら、彼らの密談は続く。
――――――――――――――――――――――――――――――
ギルドという看板を見つけ、ハムレットはようやく息を落とす。町が少し入り組んでいるのもあり、少し迷ったため時間がかかってしまった。いつもならナビゲート魔法を使用するのだが、背中の荷物のせいで、それもできなかった。重くはないが、少し邪魔だと思いつつも一向に離れる気配のない荷物に目をやる。
泣きつかれたのか、目の舌を赤くしながら眠っている。眠っているにもかかわらず、背中はしっかりととらえているあたり、ほんとは起きているのでは?っと思ってします。
町まで歩くのに数時間ギルドを探すのに数時間、気づけばあたりは暗くなっていた。
宿も探したいので、早く入ろうと思い少し急ぎ足になる。
ドアを開き、中に入る。
中に入ると、大広間のようになっており、ところどころに机が置いてある。
だいたいの人族が4~6人くらいのグループに分かれて話している。一人でボードのようなものを眺めているものもいる。2,3人のところもあるが、だいたい4~6人で話し合っている人族が多い。
もっと奥にはカウンターがあり、女性が何人か座っている。どうやらあそこで受付をするらしいな。
近寄り、話しかける。
「ここがギルドであっているか?」
「はい。冒険者の方ですか?それとも登録をされに来た方ですか?」
「後者だ。」
「登録の方ですね。では、身分証明書などはありますか?あると登録はかなり楽になります。もちろん、なくても大丈夫です。」
「これは身分証明書になるか?」
バックから白い球を取り出す。少し光、やがて収まる。
受付嬢は少し驚いた表情になったが、すぐに先ほどまでの表情に戻る。
「勇者の方ですね。それでしたら、ステータスを確認の後、ステータスに応じたランクを付与させていただきます。通常の場合誰であろうとも、ブロンズのアプレンティスからになるのですが。勇者様は例外ですね。」
「なるほど、すぐに始めてもらって構わないか?お金は必要か?」
「承りました。お金も勇者様はお支払いいただかなくても大丈夫です。では、こちらの石板に手を翳してください。」
手を翳すと、石板は光文字が浮かびだす。
受付嬢が、終わりましたといい、手をどける。
「こ、れは...?」
「あぁ、ステータス低いだろう?どうやら私はかなり弱い勇者らしい。運が悪かったのかな?」
「ハハッ」っと乾いた声で笑う。
「そ、そうですか。珍しいですね。勇者様は基本ステータスがずば抜けて高いものです。...どんなことにも例外はあるものですからね。気を落とさずに頑張ってください。」
少し苦笑いがを浮かべているが、本人は笑顔のつもりだろう。あえて何も言うまい...
「あぁ、がんばらせてもらう。この世界も色々見て回りたいからな。それで私は、どこに所属になる?」
「え、えっと...このステータスだと最下そ...でも勇者様だから...一つランクを上げて...ブロンズのアヴァリィヂュでしょうか?」
「ん?えっと、それで大丈夫。」
「了解いたしました。それでは発行いたします。少しお待ちください。」
そういうと、受付嬢が奥へと入っていく。
しばらくして、カードらしきものを手に戻ってきた。
「こちらが、冒険者カードになります。ハムレットさん、色々あるようですが...頑張ってくださいね。」
ステータスの低い勇者への同情が大半だろうが、後ろにへばりついている荷物のことも含んでいるんだろう。
「あぁ、ありがとう。すまないがこの辺でいい宿はあるか?」
「それでしたら、近くに「やすらぎ」という宿屋があります。」
―――――――――――――――――――――――
案内通りのところの宿に入り、部屋を2つ借りた、自分の部屋に入り荷物を降ろす、さすがに寝ている女性を放っておくわけにもいかず、一を宿は借りた。このこのことは明日にしよう。そう思い、はがそうとすると、紙を握りしめていた。はがす前に、紙だけをとりめくる。
......文字を見て、目を見開く...
こ、こいつ...
そこには綺麗に統一された字で、
スキル、心眼および自動書記より
対象:ハムレット・・・偽名
種族・・・人間ではない(判定不能)
隠蔽魔法・・・発動中
と、丁寧に書かれている。
いきなり、問題持ち出してきやがりましたよ...
口から深いため息を出し、少しの苛立ちを覚えた。
「はぁ...早めに別れておくんだった...」
ワレワレハウチュウジンダ・・・