3話 経路
ここリヨーシ高原は、やたらとモンスター、魔獣の類が多い。平均してレベルは低いが数が多いため危険な状態に陥る冒険者も多々出ている。
もちろん、ある程度先頭になれている冒険者にとってはどうということはないが、ここで依頼を受ける冒険者は基本的に戦闘熟練度が低いものが多いためそういった冒険者が出てしまう。
「ここは、敵が多いな。」
転移についてきた彼女がスライムにとどめを刺しているのを見ながらそんなことをつぶやく。
「この辺一帯は、集団で動く魔獣が多いから仕方ない。戦闘は私がするから勇者様は下がっていてほしい。」
ステータスが弱いということにしているため、先頭には参加させてくれない。まぁ、もともと戦闘する気もなかったのでむしろ都合がいいのだが、何だか暇だ。
そういえば、こっちに来てからの自分の本当のステータスはまだ見ていないので、もしかすると本当にものすごく弱いのかもしれないが、向こうで使っていた魔法さえ使えれば生活する分に差支えはない。
勇者リョウガが元の世界に戻る方法を探すまでの辛抱だ。その時は焦らずおとなしくどこかでゆっくり暮らしていよう。
「どうしたの。」
ぼーっと眺めていたのが気になったのかこっちを見て訪ねてきた。
「いや、少し考え事をしてただけだよ。」
「そう、あなたは最弱だから、不安なのもわかる。」
うっ、なんかそういわれるとちょっと悲しくなる。嘘とはいえ弱いとか最弱とか言われると傷つくな。
話しながらも先に進み、その間もゴブリンやスライムなどが襲い掛かってくる。話半分戦闘半分で片手間にやっているが疲れた様子は彼女からは見受けられない。
いくら敵がゴブリンやスライムといった低級魔獣だとしても、片手間で容易に倒すにはそれなりの強さがいる。人族もまた弱い種族の一つと考えられている。
人族は魔族と同じように知識を蓄え、鍛錬や訓練でスキルや魔術が使えるようになる。しかしそれは容易に得ることができるものではない通常の人族であればそれなりの鍛錬が必要なはず。
「おまえ、結構強いほうなのか?」
「む...おまえじゃない。ちゃんとした名前がある。」
「あぁ、そういえば名前を聞いてなかったな。」
「聞いてこなかったから」
「それもそうだが。」
そもそも興味ないし、町についたら別かれるつもりだから聞く意味もないから...
「レイ...」
「?」
「私の名前。」
「あぁ、なるほど。私は知っていると思うがハムレットだ。」
「知っている、ステータスで見た。...ステータスみる?」
「ん?君のかい?」
「うん。ちょっと待って。」
そう言って彼女、レイは担いでいたバックに手を入れる。
中からは自分たちが使ったのと似ている石板が出てきた。
「自分用を持ってたのか。」
「違う。これはあなたの。」
「私の?それこそ違うぞ。そもそもそのかばんは私のではない。」
「これは君の。このかばんもサルファスが君のために渡したもの。」
「サルファスが?あの王様が?」
「そう、これはあそこにいた全員の勇者に渡されている。冒険のために必要なものが一通り入っている。」
なるほど。てっきりこの子のかと思っていたが、あの王様も用意がいいな。いつでもステータスが見れるのはいい。
例が石板に力を籠める。それは光だし文字を浮かび上がらせる。
「はい。」
文字が完全に浮かび上がりそれを私に渡してくる。
ステータス
名前:レイ
人種:人族
職業:影忍、冒険者
LV:87
HP:230
STR:129
DEF:170
AGI:113
INT:58
MP:70
称号:氏族の末柄、復讐者、呪印者
パッシブスキル:存在の低迷化、身体強化Lv4、呪印、遠視、影踏み
スキル:本人のみ可視化
これまたレベルが高い。にしては、ステータスは普通だな。
いや、リョウガたちが別格なだけか。
「なるほど。レイか。まぁ、短い間だけどよろしくたのむ。」
「それだけなの?称号とかスキルとかに興味とか...ないの?」
「あぁ。」
「そう...」
複雑な顔してるな。自分のステータスに自信があったとかかな?普通の人族が見れば驚いてくれたのかもしれないけどそれを私に求めないでほしい。
それとも、自分のステータスと比べて低い相手に無反応というのが気になったとか?考えすぎか?
「いや、なんだ。...ほら!リョウガたちとか見た後だとな。多少は...」
少し取り繕うとするが、余計訳が分からなくなる
「ついた。」
「だから、多少は驚いたけど...ん?」
レイが指さしたほうを見る。
灰色の壁に囲まれたその中から屋根が顔を出している。
「街か。」
「うん。あの町はそこまで栄えているわけではないけれど人口は多い。」
「ようやくついたのか。」
「ようやくといっても数時間しか歩いてない。」
「数時間しか」は言うが数時間もただ歩き続けるなんてしたことがないからな。
「まぁ、とにかく入るか。」
「ん。ちょっと待って。」
「なんだ?」
「これ。」
またバックから何かを取り出す。
白い球?のようだが。
「勇者様の身分証明書...みたいなもの。勇者様は冒険者登録を済ませていないからこれがないと入れない。」
「なるほど。登録までの証明書代わりか。」
「それは少し違う。これを持っていたら大抵の場所は入れる。例えば、世界の禁止区域の人族が管理している場所とか。」
「その仰々しい名前の場所のことはよくわからんし、あまり興味ないがつまりは、人族が影響している場所ならどこでも入れるわけか。」
「そう。」
「盗まれたらまずいのか。」
「それはない。その球は勇者にしか反応しないから。」
「盗難対策も大丈夫なわけか。」
となるとこれは割と役に立ちそうだな。
街に近づくと門らしき場所が見えてきた。
「あそこから入るんだな。」
「そう。」
門の近くにいた鎧の人族に話しかける。
「ここはリヨーシ。旅人さん、通行許可書を見せていただけますか?」
「ん。これだろ?」
「...!勇者様でしたか!失礼いたしました。ということは後ろの方は勇者様の付き人かお仲間ということですね。」
「そう。」
「了解いたしました。一応規則ですのでお連れ様の身分所も出していただけますか。」
「ん。」
「...オリハルコンのま、マスターランク...!さすがは勇者様のお連れ様ですね...。」
「それすごいのか?」
「ふつう。」
「そうか。」
「ふ、普通なわけありませんよ!最上位冒険者ですよ!」
「まぁ、すごいのは分かりましたから通していただけますか。」
「し、失礼いたしました!どうぞお通りください!」
驚いたり焦ったりと忙しい人族だな。
やっと町だよ。この体で歩くの結構疲れたな。
「じゃあ、レイ。」
「?」
「ここでお別れだな。案内役お疲れ様。さて、先ずはギルドだな。あとは宿を決めて...」
「え?っちょっとま...」
「あ!そうそうその王様バック、ありがたくいただくよ。ほかにもいろいろ入ってるみたいだし。」
「まって!まってまってまって!」
「どうした?」
「ど、どうしたじゃない...」
レイの動向がどんどん開いていく。
「なんで?なんでそこまで...」
「ん?だから、もともと仲間はなしでって思ってて。」
「それは道中聴いた。思ってたって話は聞いた。」
「だったら...」
「違う!私は!あなたに気があるようにも見せた。たいていの男の人はそれで良かった。私の過去も見せるようにステータスを見せた。関心も持たれなかった。だったらと、役に立つようにふるまった。私はもともと話すことが得意じゃない。だけど、色々な話をした。私の重要性必要性それを見出してもらうために。君は...ハムレット、あなたはすべて興味なさそうに返してきた。...私にはあなたが!あなたが持つその球が必要なのに!」
「うん、知ってた。」
「え?」
「君には勇者と一緒に行動しその力を利用しようとしてたのは目に見えてわかった。でも、力といっても魔力や筋力といった力じゃない。でなきゃ、私を選ばない。でも私を選んだ。勇者につく最も効率の言い渡しを。だったら想像は簡単、同中にもそれらしいことは言っていたし気づいていた。」
「だったら、どうして?」
「だからだよ。面倒ごとはごめんだから。」
人族の喜びそうな笑顔で、満面の笑みで。
「だから、ここでお別れ。」
3話かけました。