最初の題名として選択されたプロローグ
冷たい風が吹きつきその風によりなびく禍々しい蝋燭につく青い炎。
その光より照らされるは広く陰湿な硬いレンガに囲まれた広間。
広間の中央を走る真っ赤なカーペット。
その先には建物の主であろうものが座るため作られた椅子。
椅子に座る黒き影。
人族が聞けばその名に怯え、魔族が聞けば感嘆の声を上げる。
すべてを飲み込むその影を消して追ってはならぬ。
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「・・・・か。」
座りなれた椅子に不満を覚えた下半身を満足する位置に変えながら、誰にも届かないであろうつぶやきを漏らす。
「魔王様?いかがなされましたか?」
女性の声にすっと目をそちらにやる。真っ黒な角と紫色の羽をもつその女性は種族で言うところの悪魔族、自分の側近の存在を忘れていたわけではないが少し独り言を聞かれたことが恥ずかしくなる。
「い、いや、なんだ。人族の書物に私のことが書かれていたもので少し興味をもってだな」
少し焦っているのか口調が早くなる。
「魔王様のことを?どれほど美しく書かれているのか気になります・・・!」
魔族の女性は、目を輝かせながら書物を見る。
「ナアマ、少し落ち着け。これは人族が書いたものだと言っておろう?美しくではなく悍ましくがが正しい。」
ナアマは少し不満そうな顔をしながらも、『なるほど。』とつぶやいた。
自分で言うのもなんだが恐ろしい存在であるのは間違いない。
いろいろな書物を見てきたが自分ほど長く生きた魔王はいないらしい。
魔族には寿命という寿命はそもそも存在しないが(種族によるが)大抵の魔王が300年周期に別の魔族に殺されて新しい魔王が誕生するか人族の中でも数百年に一度生まれるとされている特別な力を持った人族に殺されるかされている。
それが普通。普通はそうなのだが。
まあよくわかんないけど、知らないうちに3780年も魔王として生きてしまったわけで、もちろんいろんな魔族が挑んできたし今でもまだ挑戦するものはいる。
人族も何十人もやってきた。光の加護を持ったもの、神に特殊な力を授かったもの、魔族に圧倒的な力を持つ剣や鎧を持ったもの。人族はみなそういったものを勇者と呼び、挑んできたはいいものの一度も私に勝ててはいない。
そろそろ自分も引退時期なのでは?と思う毎日である。
そんなこんなを悶々と考えているとナアマ声をかけけてくる。
「魔王様。そろそろお時間です。 」
「あぁ、もうそんな時間だったか。」
そう。そろそろ定期的に行われる魔族集会の時間だ。魔族集会といってもまあ魔族の中でも階級の上の方のやつらが集まっておしゃべりするだけなんだけど。
「じゃあ行くか。」
そういってナアマの方へと目をやるとナアマがとことことこっちにやってくる。自分の体につかまると少しおなかに力を入れる。すると自分たちの足元に魔法陣が現れる。これが転移魔法だ。
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目的地に着くとすでに自分たち以外ほとんどが集まっていた。丸く縦に長い机を囲みながら彼らは座っていた。右から魔人族のスクリロ、吸血鬼のエマ、ガイスト族のレヴナント、サキュバスのモストロ、鬼妖族のリメント、ってところだろう。
「パピロウはどうした?」
いつもいるメンバーの一人がおらず心配になり訪ねてみる。
「先ほど、っといても数時間前ですが新しい勇者に相打ちでやられてましたよ。勇者と相打ちなんですからあいつもいい最期だったかもしれませんね。」
スクリロは少し冷たい声で淡々と報告した。
「勇者と…そうか、まぁ仕方ないのかもしれないな」
パピロウとは少し仲が良かったので悲しい気持ちになる。でも、勇者と相打ちか...いいのか悪いのか少しわからないな。
魔王にしては甘い考えなのかもしれないが個人的にはもう少し生きてほしかった。
「まぁ、その件は後にして始めしょう。」
エマが話を進めてくれという表情になる
「そうだな、とはいうものの特にこっちから話す内容ないのだが」
エマがすっと立つ。
「そろそろ、この定例会もやめにしませんか?毎回話す内容も薄いですし、私としてはこの時間が無駄なものに感じます。」
思わず、え!?っと声に出そうになる。急にこれもうやめましょって言われたら少し焦る。そもそもこの定例会自体みんなともっと交流したいっていう私の願望から来てるわけで、どうしたものか少し気持ちに余裕がなくなる。そわそわしているのが体に表れ始める。
「エマさん、あなたそれ本気で行ってらっしゃるのかしら?魔王様が考案したこの定例会あなた愚弄する気?」
すると自分が焦っているのがわかったのかナアマが少し声荒げた。
「そんなつもりはない、ただこの時間はいつもただちょっとしゃべっているだけで終わっている。それが無意味と判断しただけだ。」
「無意味?!それ以上この定例会を馬鹿にするのでしたら私も魔王様の毎夜にかけてあなたにお灸をすえる必要が出てきますが?」
今度はかなり声を荒げている。ってかこわ...!どっちも表情こわい。ほら、ほかのやつらも顔ひきつってんぞ。どうしよう。とりあえず二人を落ち着かせないと。
「二人ともそれ以上はやめないか?というかやめろ。少し不快だ...」
はい、声震えた――!しまったな少し怖くて声震えちゃったよ?!
「「す、すみません。」」
お、素直でよかった。こんな献花見たの初めてだよ。
「う、うむ、では少し話したら今日は早めに終わろうか」
そうしよう。なんか今日はだめな気がする。
その後数時間話した後終わったのだが今日はやけに疲れた。さっさと寝るに限る。3000年も生きてるとすることもないし、暇ではあるから一日のほとんどが睡眠になる。どうしても暇だから寝ようになってしまうのは致し方ないのかもしれない。
こつんこつんと愛用の杖を気分的にならしながら心中で少し愚痴を漏らす。
すると足元が光りだす。
「?」
定例会で少し疲れた脳みそがセレガ何かを判断しようとする。
転移の一種か?それにしては見たことがない。反魔法があるから大丈夫だと...
そんなことを考えていると光は強くなり魔王城から自分だけを違う場所へと違う世界へといざなう。これがこの3000年暇をつぶしながら生きてきた魔王が迎えた人生初の転換期であった。
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出会いも事件も人生の転換期も急なもので
それは時敏取り返しのつかないようなものになる
だけで、この転換期だけは逃さなくてよかったと自分は思う
小説事態アマチュアです。誤字脱字、また分かりずらい表現ございましたらお伝えください。
続きを書くかはまだ未定です。