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容疑者 (現実、創作)

「えっと……風見君、誰に話しちゃったの?」


美香が、少し困惑した表情で、責めるようにでもなく風見に聞いた。


「す、すみません……その、佐藤主任にだけ……」


「佐藤主任? システム部のか?」


 意外な名前が出てきたので、俺は確認のためにそう聞き返した。

 以前、自分がシステム部に所属していた時に世話になった人だ。歳は、30代前半だと思う。

 真面目で面倒見がいい人で、部下からは慕われており、俺としても信用のおける人だという印象はある。

 そんなに他人の色恋沙汰に興味がある人のようには思えないが……。


 俺が意外に思ったことを悟ったのか、彼は、


「えっと……ツッチーさんがシステム部に移るっていう話が出たとき、佐藤主任から、『彼ってその後、結婚とかしているのか? 前に部署移動してから全然情報が入ってきてないから、知っておきたいんだ』って言われて……また同じ班になるかもしれないし、本人にはなんとなく聞きづらいからって」


 うーん……まあ、真面目なあの人なら、俺の同僚である風見に、そういう聞き方、するかもしれない。


「それで、どう答えたんだ?」


「普通に、まだ独身ですよって。そしたら、『そうか……相変わらず、そういう浮いた話の一つもないのかな……』って言ってたから、『ひょっとしたら美香さんと結婚するかも』って、言っちゃいました……でも、ちゃんと、他の人には言わないでくださいって念を押したっすよ」


「そうなのか……そしたら、佐藤主任は何て言ったんだ?」


「なんか苦笑いしながら、『分かってるさ』とだけ言って……本当に、それだけっす」


 うーん……それだけ聞くと普通の会話だ。

 俺も美香とのことを秘密にしておくようには言っていなかったので、これぐらいなら風見を責めることはできない。


 今のところ、佐藤主任とシステムエンジニアになった俺とは、同じシステム部ではあるが、彼はパッケージソフト開発課なので直接話す機会はあまりない。


「……でも、佐藤主任が私とツッチーの関係を知ったとして、ツッチーのPCのパスワードとかを試して、それで踏み台にしてデータを盗んだりするかな?」


 美香が、核心をついた疑問を呈する。


「うーん……確かに、あんな真面目な人が、そんなことするかな……別にお金に困っているようなこともないだろうし……あの人、独身だろう?」


「そうっすね……でも、同じ課の渡辺さんと結婚するかも……あ、これ、ここだけの秘密っすよ!」


 慌ててそう念押しする風見に、一同、


(懲りてないな……)


 という非難のジト目を向けたのだった――。

--------------

(創作)


 俺たちのことを、軍の裏切りものだと疑って攻撃を仕掛けてくるサイトウ遊撃隊長。

 勇者としてかなりレベルアップしている俺にとっても、気を抜けばやられかねない実力者だ。


「ご、誤解だ! 現に俺のステータスは『勇者』になっている!」


「そうらしいな……だが、お前たちはそもそも、『異世界』から邪鬼王の召喚によってこの地に呼び出されたっていう話じゃねえか。そんな奴らの言うことを、なぜ信用できる?」


「な……なぜそれを知っている!」


「あの弓使いが、さっき休憩中に『勇者のことについて教えてほしい』って言ったら、ベラベラしゃべってくれたぜ」


 ちらりとシュンの方を見やると、彼は俺の方を向いて両手を合わせ、擦って、頭を下げ、謝罪のポーズを取っていた。


 お前はちょっと口が軽い……。


 その様子を見たサイトウ遊撃隊長は、にやりと怪しげな笑みを浮かべた。


「ふっ……やはり図星のようだな……ならば容赦はしねえ。遠慮なく行くぞ!『水の呼……』」


 いや、その技、いろんな意味で今最もヤバいって!

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