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会社の上司を悪役にした異世界ファンタジーを書いていたら、読者が社長だった  作者: エール


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気づき (現実)

 女性達が用意してくれていた朝食は、想像していたよりはるかに豪華だった。


 コテージに電磁調理器などの設備が充実していたというのもあるが、前日の買い出しで、食材を豊富に揃えていたらしい。


 ちなみに、料理はコテージの中、木製のおしゃれなダイニングテーブルに並んでいる。


 色とりどりのホットサンド、前日のポトフの残りを使ったリゾット、こんがり焼き色の付いたフレンチトースト、新鮮なトマトとレタスをたっぷり使ったサラダ、塩胡椒を振りかけた厚切りベーコンエッグ、それに白飯と味噌汁まで。


 若干炭水化物が多い気がしたが、まあ今日ぐらいは、ダイエットを忘れて朝から栄養をつけるのも良いかな、と思ってしまった。


 ちなみに、女性陣は俺がダイエットに挑戦していることは知らず、男だからがっつり食べるだろうと考えているらしい。


 女性三人に対して俺は一人、女子会のおまけみたいなアウェイ感がある。


「……私、あんまりよく覚えていないけど、貸し切り露天風呂で、ツッチー君に変なことされていなかったかしら?」


 瞳がとんでもない濡れ衣を着せてきた。


「ま、まさか!? 実際はその逆で……」


 と、そこまで言って、しまったと思った。


「……その逆で、何があったの?」


 隣の美香から鋭いツッコミが入る。


「……いや、なんでもない……」


「えっ……ちょっと待ってよ……私、ひょっとして言えないような事、しちゃったの?」


 瞳はやや顔を赤らめている……どこまで本音なんだか。


「いや、ちょっと抱きつかれただけですよ」


 安心させるつもりでそう言った。


「ひどい……ほっぺにキスしたこと、言わないなんて!」


「バッチリ覚えてるじゃないですかっ!」


 焦った俺の叫びに、笑いが起きる。


「でも、まあ、良かったね、ツッチー。虹山さんも含めて四人と混浴なんて……否定しているけど、本当は嬉しかったんでしょう?」


「だから、あれはなぜかそういう流れになって……っていうか、後ろを見るなって言うから、ずっと風呂に入ってたら、面白半分に一人ずつ来ただけだろう?」


「まあ、そうだけど、律儀にずっと後ろ見ずに入り続けていたツッチー、イメージ通りっていうか、人畜無害というか……そういえば、虹山さんとも一緒になったんだよね? あのとき、何の話してたの?」


 美香が鋭い質問をしてきた。


「ああ、えっと……詳しくは言えない、かな?」


「ええっ、それってまさか……虹山さんも、愛の告白とかだったんですか!?」


 不用意に『言えない』と言ってしまった俺の一言に、優美が反応した。


「ちょっと、『虹山さんも』って……優美ちゃん、まさか告白したの?」


 瞳が驚いたように、優美に問いただす……なんかカオスな状況になってきた。


「えっ、あの……そういうんじゃなくて……その、別の世界だったら良かったのにっていう話で……あ、これは言っちゃダメだったんですね……」


「大丈夫よ、優美ちゃん。ツッチーは鈍感だから気付いていないよ」


 美香が、『秘密にしている何か』に対して、優美をフォローする。


「鈍感も何も、そこまで話したら気付くでしょ? ツッチー君、優美ちゃんにも好かれているなんて、贅沢過ぎよ!」


 瞳が、からかうようにそう言った。


「……いえ、私のは『憧れ』です。美香さんの思いの強さには全然及びませんよ」


 赤くなりながら、優美はやんわりと否定した。


「憧れ、か……じゃあ、私もちょっとツッチー君に憧れようかな……っていうか、私もちょっといいかなって思ってたけど、鈍感なツッチー君、気付いてなかった?」


「気付いてないも何も、今思いつきで言ったでしょう!」


 俺の必死な言葉に、また笑いが起こった。


 ――この時点で、俺は気付いていた。


 優美と美香の『鈍感』というのは、瞳の解釈とは異なり、『俺の創作を二人が読んでいることに、俺が気付いていない』と言う意味だ。


 そして俺は、これまでずっと、その事を秘密にされていたのだ。

 だから、今度は、何か上手くやり返してやろうと思った。


 二人は、『俺が気付いたことに、気付いていない』のだから。

※土屋は、『ダンディー』の正体には気付いていません。

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