確信 (現実)
(現実)
さらにここまで一気に書き上げた俺は、本日二度目の追加更新として投稿サイトにアップした。
時刻は既に四時前となっており、さすがに睡魔が襲ってきたので、そのままサイトのチェックをすることもなく、ベッドで少しだけ眠る事にした。
「――ツッチー、生きてる?」
誰かに揺すられ、俺は目を覚ました。
すぐ目の前にあったのは、心配そうな表情の美香の顔だった。
「……よかった、いくら声をかけてもなかなか起きないから、心配したのよ」
「……えっと、ここは……そうか、コテージだったな……もう朝?」
「もうすぐ9時よ。寝坊すぎ。ノックしても、電話かけても出てくれないし……それで鍵かかってなかったから、入ってきて耳元で名前呼んだけど起きないし……寝言は言ってたけど」
「……寝言? 何て言ってた?」
「それは秘密……それより、もう朝食の支度、できてるよ」
「へ? もう? ……そうか、9時って言ってたな……誰が用意してくれたんだ?」
「私達、三人よ」
「……そうか、優美と、瞳さんも手伝ってくれたんだな……」
「そう。だから早く来て」
「ああ、分かったよ……そっか、Tシャツとジーンズのまま寝たんだったな……すぐ行くよ」
「うん……そうだ、挨拶、忘れてたね。おはよう、変態さん」
イタズラっぽくそう言う彼女に、少しドキッとした。
「……変態? 俺が?」
「そう。他にいる?」
「……ひょっとして、昨日瞳さんに露天風呂で抱きつかれたことなら、あれは不可抗力だ。瞳さん、酔ってたし、あんな場所で無防備だったし、抵抗のしようがなかったんだ」
「でも、嬉しかったんでしょう?」
「そ、そんな、別に喜んでたってわけじゃないよ。困惑してたっていうか……」
やや言い訳じみた説明をする俺を、美香はジト目で見ていたが、
「ま、いいけどね……ツッチーが本音では何人もと混浴できて喜んでるの、ちゃんと分かってるから」
と、呆れたように話した。
そいてさらに顔を近づけて、小声で俺にこう切り出した。
「……あと、それと……昨日の夜、外で優美ちゃんと何話してたの?」
ドクン、と心臓が音を立てるように激しく動いたのが分かった。
「……気付いてたのか?」
「うん……寝たふりしてたから、優美ちゃんは私が気付いてること、知らないと思うけど……先に忠告しておくけど、二股とかは絶対ダメだからね」
「ああ、それはもちろん」
「そうでないと……私はともかく、優美ちゃんが可哀想だから……もし優美ちゃんの方が好きなら、正直にそう言ってね……」
先程とは異なり、不安そうに、心配そうに言葉にする美香。
「それは大丈夫だよ。俺の気持ちが美香にあることは、ちゃんと優美にも打ち明けているから」
俺が真剣にそういったものだから、美香はちょっと驚いていた。
「そ、そうなの? だったら、その……嬉しいけど……でも、本当に、ツッチーが一人で何人もお嫁さんをもらえるなら、優美ちゃんは絶対にその一人にするんでしょうね……」
「……いや、そんな架空の話したって、現実は一人だけだから、美香しか考えられないよ」
「……ありがと」
美香はそう言って、ベッドに座ったままの俺の方に、額をくっつけた。
ひょっとしたら、涙ぐんでいたかもしれない。
と、その時……。
「ちょっと、いつまで待たせるつもり……」
と、いきなり瞳が入ってきて、俺達の様子を見て目が点になっていた。
「……あら、ごめんね。あの……ごゆっくり、って言いたいところだけど、優美ちゃんも待ってるから、ほどほどにしてこっちに来てね」
瞳はそう言って戻って行った。
「……どうしよう、誤解されたかも」
「……誤解、なのか?」
「……えっと、まあ……ともかく、先に行ってるから、ツッチーも早く来てね!」
美香はそう言い残して、顔を赤らめながら出て行った。
やれやれ、機嫌は直ったか……。
と、ここである疑念が浮かんだ。
なぜ、
『本当に今の日本で、一人の男の人がお嫁さんを二人以上もらう事ができるなら、どんなに良いことかなって思っちゃいました』
と言っていた優美に続いて、美香まで、
『一人で何人もお嫁さんをもらえるなら、優美ちゃんは絶対にその一人にするんでしょうね』
などという言葉が出てきたのか。
美香と優美が、そんな話をしていた、という可能性もあるが……。
そしてふと、さっき『変態さん』と呼ばれたことを思い出した。
確かに、創作の中で、全裸の美女四人と混浴し、裸を見て、最後はアイに弄ばれる、というハーレム展開を書いて、アップしたが……。
ぞくん、と、また鳥肌がたつような寒気を感じた。
そして俺は確信した。
――少なくとも、美香には俺の小説が読まれている。そして、おそらく優美にも――。




