異世界混浴 その③ ユウの告白(創作)
「……もう、いいかな……」
ミキが、恥ずかしそうにそう言うのを聞いて、俺は我に返った。
「……ああ、ごめん、あんまり綺麗だから見とれてた……」
俺がそう言うと、彼女は胸を両手で隠して肩まで湯に浸かった。
「……今日だけ、特別だからね……」
少し拗ねたような表情で、ぷいっと後ろを向くと、そのまま洗い場の方に戻って言ってしまった。
小学校高学年以降は、一度も見たことのなかった幼馴染みの裸体。
小柄な体つきだからあまり意識していなかったが、思ったよりも胸も大きく、まるで芸術品のような、美しい大人の体になっていた。
不思議と、あまりいやらしい気分になることはなく……表現はおかしいかもしれないが、
「内心憧れていた美しいものを見ることができた」
という、達成感のようなものを感じていた。
それにしても、結婚……それをミキの方から口にして、俺も素直にそれを受け入れる事ができた……これも、パワースポットであるこの温泉の効力なのだろうか。
そんな風に考えていると、また人影が近づいてきた。
濃い霧の影響で、ぼんやりとしか見えないが、今度は肩まで湯に浸かった状態で、先程とはなんとなく雰囲気が異なる。
すぐ側まで来て、驚いた。
その女性の正体は、元の職場では後輩で新人、現在は聖治癒術師のユウだった。
彼女も頬を赤らめ、目が少し潤んでいるように見える。
俺やミキより二歳年下、二十歳だが童顔と言うこともあって、高校生と言っても差し支えないぐらいの美少女だ。
そんな彼女が、乳白色の湯に浸かっているとはいえ、全裸で、たった一人で俺の側に来たのだ。
また鼓動がバクバク高鳴っているのを感じた。
「ヒロさん、えっと……来ちゃいました」
さっきのミキと同じような事を言っている。
「あの……なんでユウまで……」
俺が驚きで目を見開いていると、彼女は構わず話し始めた。
「えっと……私だって勇者のパーティーに参加している仲間なんですよ。少しでもお役に立ちたいと思って……」
「役に立つって……えっ、あの、ひょっとして『魅惑耐性』!?」
「はい、あの……少し裸を見てもらうだけで、耐性がアップするんですよね?」
「ま、まあ、そういう話だけど、本当に効果があるのかどうか分からないし、それにさっき、ミキの裸を見たから、もう目標は達成したっていうか……」
つい本当の事を言ってしまい、「しまった」と思った。
「だったら、なおさらです……ミキさんが協力しているのに、私は何にもしないのはダメだと思います……私なんかで効果があるかどうかは分かりませんが……」
と、恥ずかしそうに話す。
いまだ肩から下は、乳白色の湯の中だが、すぐにも立ち上がりそうな様子で、俺は慌てて止めた。
「いや、その、効果があるか、ないかの問題じゃなくて……その……社内のコンプライアンス的に……」
そんな事を口走ってしまった俺に対して、ユウは、悲しそうな表情になった。
「今って、非常事態ですし……そんなに、私の事、嫌いですか?」
「いや、好きだよ」
思わすそう口走ってしまうと、彼女の表情がパッと明るくなった。
「そうなんですか!? 嬉しいです!」
「いや、その、好きって言っても、後輩としてっていうか……」
「分かっています。ミキさんに逆プロポーズされて、それをOKしたんでしょう?」
「えっ……」
「私が、お勧めしたんです……私、今日、ヒロさんに結婚を申し込みますから、ミキさん、先に申し込んでみてはどうでしょうかって……」
「……」
何か話が急展開過ぎて、ついていけないが……ようは、ユウがミキの背中を押した、ということなのか。
「そうしたら、ミキさん、赤くなりながらも、すごく幸せそうな表情で帰って来て……ああ、上手くいったんだなって分かりました。それで、私まで嬉しくなっちゃいました」
そう言われて、やっと理解した。
ああ、ユウは……俺とミキを繋ぐ、キューピットの役割をしてくれたんだな……。
「……その嬉しそうなミキさんを見て、私も勇気をもらいました……すごく怖いですけど、私も告白します……ヒロさん、好きです。私の事も、お嫁さんにもらってください……」
「……ちょ、ちょっと待った! 私もって、どういう……」
また頭の中が混乱して、変なトーンで質問してしまった。
「……ミキさんから聞いていませんか? この世界、この国では、男性は、複数のお嫁さんを娶ることができるんですよ」
「嫁を……複数?」
――それが本当ならば、確かにミキも、ユウも、二人まとめて結婚できる。
そしてそれが事実であると、なぜか直感的に理解することができた。
ユウから教えられたその衝撃の告白に、頭の中が真っ白になった。




