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混浴 その⑥ 失言(現実)

「ちょ……ちょっと待ってください! いくらなんでも、貸し切り露天風呂で俺が混浴するなんて、それはまずい!」


 大慌てで否定して、それがおかしかったのか、みんな笑った。


「大丈夫よ。私も一度、ここで貸し切りの露天風呂を借りたことがありますけど、湯浴み着の着用可能でしたから」


 虹山秘書は微笑みながらそう教えてくれた。

 ここで、一体誰と混浴したのだろう、などという野暮な質問はしない。


「……先に言っておきますけど、社長と一緒に入った訳じゃないですからね」


 言われてしまった……すると、他の三人の女子も同じ事を考えていたのか、苦笑いになっていた。


 その後、予定通りコテージの裏でバーベキュー。


 炭やトング、着火剤など、一通りの道具はコテージに付属していて、使い方の説明書も書いていてくれたので問題無く楽しむ事ができた。


 あまりアウトドアのこういうイベントをしたことがなかったので、とても楽しく、充実している。しかも、美女ばかり三人も揃っているのだ。


 惜しむらくは、虹山さんが宿の料理を食べていてバーベキューに参加できなかったことだが、まあ、彼女は浴衣を着て高級な料理を食べているイメージの方がよく似合っている。


「……今、虹山さんの事、考えてたでしょう?」


 ふと見ると、美香がジト目で俺の方を見ていた……恐ろしくカンが鋭い。


「あ、ああ……単にこのバーベキューに参加できれば良かったのにな、と思っただけだよ」


「……そうね、虹山さん、社長秘書だからちょっと話しにくいイメージがあったけど、案外気さくで話しやすかったわね……仲良くなれて良かった」


 サポートセンターの瞳が、嬉しそうにそう話した。


「そうですね……私もお話できて良かったです。でもちょっと気になって……本当に今回、この温泉で一緒になったの、偶然でしょうか……」


「そうね……何かタイミングが良すぎる気がするね。ひょっとしたら、社長がツッチーのこと、こっそり注視しているのかもしれないね……」


 優美の疑問に、美香がそう答えた。


「……ツッチーさん、備前専務との対決の場に、虹山さんもいたんでしょう? そのとき、どんな様子だったんですか?」


「なっ……優美ちゃん、シィッ!」


 優美の不用意な質問に、美香が人差し指を口に当てて止めたが、時既に遅し。


「えっ……ちょっと、専務と対決って、ツッチー君が? どういうこと?」


 俺は頭を抱え、そして優美も同じように頭を抱えてうずくまり、


「ごめんなさい……」


 と謝った。


「瞳さん、すみません、今の、聞かなかったことにしてください。絶対に関係者以外に知られてはいけないことなんです!」


 備前専務の不倫、発注費の間接的な横流し……俺達がその不正を暴き出し、社長が探偵を使ってそれらの悪事の確証を得て、直接対決にて辞職に追い込んだこと。


 到底、温泉旅行のガールズトークで気軽に話していいことではない。

 しかも、今回、偶然にもそれに深く関わっている虹山秘書が、なぜか同行しているのだ。


「……ひょっとしたら虹山さん、こういう風にポロリと情報が漏れるのを警戒して、俺達の様子を監視しているのかもしれないな……」


「だとしたら……今の、致命傷だから気を付けてね、優美ちゃん」


 珍しく美香が先輩らしく優美に注意して、彼女はしょげていた。


「……まあ、何か分からないけど、私は何にも覚えてないから。さ、バーベキュー続けよっ!」


 聞かれたのが瞳で本当に良かった……。


 その後、五分で気まずい雰囲気は消えて、何事も無かったように食事は続いた。

 やっぱり、炭火で食べる肉は旨い。


 今書いているラノベでは、魔獣を倒してその肉を食べるような描写はなかったが、ちょっと入れてみても良いかもしれない……あれ? 魔獣は魔石になるんだっけか。

 まあ、細かい事はどうでもいいや。両方ドロップすることにしよう。


 それからしばらくして、夜七時半を回った頃、虹山さんがコテージを訪ねてきた。


「皆さん、先程言ってた貸し切りの露天風呂、予約取れましたよ。このあと八時半からで、一時間。湯浴み着も貸してくれるらしいから、土屋さんも安心して入れますよ」


 当日の露天風呂貸し切りなんて、いくら何でも難しいだろうと思っていたのだが、


「私がなんとか調査・交渉してみますから」


 と自信ありげに語っていた虹山さん、さすがの行動力、交渉力だ。


 特にすることもなくなって、例のクレーマーの話ぐらいしかしていなかったので(それはそれでちょっと盛り上がったのだが)、貸し切り露天温泉という甘美な響きに、女性陣の目は輝きを増していた。


 俺はまあ、それほどでもなかったのだが、女性陣が湯浴み着を付けてくれるなら、せっかく温泉郷に来たんだから、入ったほうが良いかな、と思った。


「もちろん、湯浴み着を着る、着ないは自由ですが」


 虹山さんが、さらっと気になる一言を放った。

※次回もこの続きです。

※ちょっと現実世界が続いていますが、創作世界にも近々戻ります。


※引き続き、評価やブクマ登録、感想などを頂けますと、ヒロインや同僚社員一同と共に大喜びいたします。

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