混浴 その① (創作、現実)
※今回は、創作世界の最新話の、少しだけ前のお話です。
邪鬼王により、新たな敵が、現代日本から建物ごと複数召喚されてしまったという。
これにより、また戦いと冒険の旅が再開されることとなった。
みんなそれに不満を持っていたのか、本来であれば情報を集めるために入った酒場でヤケ酒を飲むハメになってしまった。
特に愚痴が多かったのが、意外にも普段は大人しいユウだった。
「……絶対、邪鬼王さんって-、悪い人ですぅー。せっかくもうすぐ帰れると思ってたのにー」
半分眠ったような感じで、なぜか俺にもたれかかって、甘えるように抱きついている状態だ。
「ヒロさーん、私と結婚、してくださーい……」
と、何度も繰り返している。
俺も酔っていて、この状況、嬉しいことは嬉しいのだが、戸惑いの方が大きい。
ミキはそんな俺のことを、ジト目で見てくる。
「ユウちゃんはちょっと飲み過ぎじゃないですか? っていうか、お酒飲んでいい歳でしたっけ?」
シュンが心配そうにそう口にした。
「ああ、二十歳は過ぎていたはずだよ。でも、まだちょっと子供っぽいところあるよな……」
俺にずっと抱きついているユウ、まだ女子高生……下手をすれば女子中学生に見えかねない。
しかも、髪の長い超美少女だ。
意外に胸も大きくて、さっきから俺の腕に柔らかい感触が当たっており、それだけで鼓動が高まっているのがわかる……これって、彼女に伝わったりしないよな?
「ユウちゃん、結婚すると、子供作らないといけないよ?」
俺達のことをうらやましそうに見ていたフトシ課長代理が、余計な一言を言ってくる。
おそらく、セクハラ的な意味はなくて、彼女の身を案じてのことだとは思うが……要するに、俺なんかに彼女を取られたくないと思っているんだ。
「はい、平気ですよー。子供。作りましょー」
過激な一言に、俺の鼓動はさらに1.5倍になった。
「日曜日のたびに、二人で教会に行って、お祈りするんですぅー、すぐに神様、授けてくださいますよぉー」
……そうだった、彼女、子供は、お祈りするだけで神様が授けてくださる、と信じ込んでいるんだった。
俺を含むユウ以外の全員、苦笑いだ。
「でもユウちゃん、結婚して夫婦になったら、一緒にお風呂に入らないといけないんだぞ?」
今度はシュンが余計な一言を言ってきた。
こっちは普通に俺や彼女の反応を楽しんでいるようだ。
「はい、いいですよー。私のお父さんとお母さんも、いまだにしょっちゅー一緒に入ってますよぉー」
いいんだ……。
さすがに顔が熱くなる……うっ、なぜかミキの視線がますますきつくなった。
「……け、けど、それは結婚した後の話だろう? 今は邪鬼王を倒す事を最優先に考えないと……」
「……フラれちゃいました……」
ユウはさめざめと泣き出した。
泣いている顔は、それはそれで可愛い……っていうか、こんな子を泣かせてしまった自分に後悔してしまっている。
まだ付き合ってもいないのに、いきなり結婚……。
あり得ないと思いながらも、いわゆる『異世界』に来てからは、わりと何でもありなので、少しだけ期待してしまっている自分がいた。
「……そういえば、サポセンの街から割と近いところにある『アリーマ温泉』では、入るだけでいくつか能力が上がるお湯が沸いているって聞いた事があります。中には、男女で混浴すると耐性がアップするものもあるとか」
未成年のため酒が飲めず、酔っていないレイが、冒険に有益な情報と思わせて、この状況ではかなりの爆弾発言を放り込んできた……本人はそんなつもりはなかっただろうが。
「男女で混浴すると耐性が上がる、だと? なんだ、そのすばらしい仕組みは!」
フトシが食いついてきた……セクハラギリギリだ。
レイは若干引きつつ、
「……たしか、『魅惑』に対する耐性、だったと思いますが……」
「……なるほど、慣れておけば耐性がつく、というわけか……あり得ない話ではないな……」
一応、納得した俺に対して、
「すごーい、ぜひ行きましょー! 私、ヒロさんと入りますぅー!」
と、ユウはさらに抱きついて来た。
「……だったら、私もヒロと入る。勇者が魔物に誘惑されたらおしまいだからね……」
ミキが拗ねたように、けれど赤くなりながらそうつぶやいた。
「そうですねー、ミキさんも一緒に入っちゃいましょー! あ、他の男の人はダメですよ!」
ユウは、別に俺と二人っきりで混浴したいわけではないらしい……このあたりが無邪気というか、ちょっと残念というか……。
「……でしたら、私も一緒に入ります。確か、女性が複数の『はーれむ』という状況になると、耐性が付きやすいという情報を聞いた事があります」
知的でクールなイメージがある美少女、レイ。彼女まで混浴に参加してくれるという。
……マジで?
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(現実世界)
この投稿を実行したわずか五分後、なぜか俺のスマホに、美香からメールが届いた。
『ツッチーって、ひょっとして、ちょっと変態さんだったりする?』
※次回は、この投稿を読んだ読者の、現実世界での反応です。
※土屋は鈍感であり、『カワウソ』『ゆうみん』の正体に気付いていません。




