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激戦、対パワハーラ・ザイゼン! (後編:現実、創作)

(現実世界)


 社長の指示に従い、備前専務は三日後に辞表を提出した。

 理由はもちろん、一身上の都合、というお決まりの文句だ。


 そして提出がこの日だったからといって、すぐ退職となるわけではない。辞表が承諾されるまで、それなりに期間が必要となる。


 備前専務の場合、表向きは自己都合、ということになっており、業務の引き継ぎなど、後始末に追われることとなった。


 当然、残された部下達は、大騒ぎだった。

 特に、専務はいわゆる『備前派』の長でもあったので、突然派閥の大将を失うことになった彼等の動揺は相当なものだった。


 社内でのもっぱらの噂は、


「なぜは分からないが、備前専務に対して二階堂社長が激怒した。そして専務はそれを受け流すだけの力量を持ち合わせていなかった」


 という、抽象的なものでしかなかった。

 これはもちろん、社長から事情を知るものに対して、厳重な口止め指示があったからだ。


 備前専務の不正は、下手に株主に知れ渡れば、それをずっと見抜けなかった社長自身の責任問題にも発展しかねない。そればかりか、顧客に対して自社のイメージを失墜させかねない、との判断らしかった。


 備前専務は、その後、わずか三週間で正式に辞職した。

 社内からは「早すぎる」との嘆きもあったのだが、それだけ社長の怒りが大きかった、ということなのだろう。


 しかし、備前専務は、ただでは転んでいなかった。

 このわずかな期間で、自分で新しく、ソフトウエア開発を実践する新会社の立ち上げを企画していたのだ。


 さらに備前は、『シーマウントソフトウエア』社内での自分の派閥を中心として、引き抜き工作を実践していたようなのだが……。


 *********

(創作世界)


 マ○ー空間に引きずり込まれたのは、パワハーラ・ザイゼンと俺の二人だけだった。


 ここは辺り一面、見渡す限りの荒野だ。

 薄暗く、わずかに不気味な霧が漂っている。

 まさに、亜空間という言葉しか浮かばないような景色だ。


 ザイゼンは、相変わらず魔法が使えない様子だった。

 しかし、完全に理性を失っているようで、ムチャクチャに突進してきては、そのドラゴン型の巨躯を活かして、牙や爪、尻尾で攻撃してきた。


 速く、そして凄まじい威力。


 顎の力は大岩を一撃で粉砕し、尻尾で地面を叩けば、クレーターのような穴が空いた。

 まるで、パワーが三倍に膨れあがっているかのようだった。


 俺は俊敏さを活かしてそれらの攻撃を躱し続けるが、スタミナにも限界があった。

 徐々に追い詰められ、逃げ場を失っていく。


 しかも、この亜空間からどうやれば出られるのか、見当もつかない。

 あるいは、パワハーラ・ザイゼンを倒せばその道が開けるのかもしれないが……。


 必死に連続攻撃を躱し、ようやく懐に飛び込んで剣を振るったが、防御力まで上がっているのか、その頑丈なウロコを剣で切り裂くことができない。


 それによく考えてみれば、ここに引きずり込まれる前までに、奴の胴体を分断するほどのダメージを与えていたのに、それがすっかり治ってしまっているではないか。


 ムチャクチャだ。

 これが、ザイゼンすら恐れた『邪鬼王』の真の特殊能力なのか……。


 そしてついに、足元がふらついた俺の体を、奴の尻尾の攻撃がかすめた。


 それだけでダメージを受け、吹っ飛ばされる俺。


「くはっ……」


 巨大な岩に叩きつけられ、体中の骨がきしんだ。


「俺は、こんなところで……パワハーラと共に、永遠に閉じ込められた空間で、朽ち果ててしまうのか……」


 そう独りごちた次の瞬間。


「そんなことないっ! 財前さんは持っていなくて、ヒロは持っているもの……それは、仲間よっ!」


 どこからともなく、そんな声が聞こえてきた。


「……ミキ?」


「そう、私! よかった、つながった……ユウちゃん、お願いっ!」


「はいっ! 集中治療室(アイ・シー・ユー)!」


 もう一度、声が聞こえてきて、俺は長剣から発生した光の空間に包まれた。

 途端に、ふっと体が軽くなるような爽快感を覚え、同時に傷が癒えていることに気付いた。


「……何が、どうなったんだ?」


「以前、シュン君と貴方が、武器を盗まれちゃったでしょう? その反省を元に、アイザックさんは私達の武器に、お互いに通信できる機能と、魔力の転送機能、現在位置把握の能力を付与していたの。でもあまり長時間は使えない……今、ヒロを治癒してくれたの、ユウちゃんよ!」


 ミキが、俺がまだ知らされていなかった情報を教えてくれた。


「……俺達は……武器を通じて、繋がっていたのか……」


「もう、さっきそう言ったでしょう? ……あ、でも、フトシ課長代理は武器を持っていないから対象外だけど」


 なにげに酷い。


 しかし、回復を遂げた俺に、またザイゼンの容赦ない攻撃が迫る……まさにその瞬間、俺の愛剣『インプレッシブ・ターボブースト』から雷が放たれ、奴の動きが止まった。


「……今の、レイか?」


「そう、メイドのレイちゃんが電撃の魔法を使ってくれたの。ヒロ、私達が付いてる! ヒロは一人じゃないよ! 真の仲間をたった一人も集められなかった財前専務とは、根本的に違うわっ!」


 ミキの、武器を通じて必死に語りかけてくれるその意気込みに、俺はまた、戦う決意を思い起こした。

※まだパワハーラ・ザイゼンとの激戦は続きます。

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