一番弟子 (現実、創作)
※今回は『番外編』的な雰囲気のお話です。
備前専務を断罪することに成功した俺は、社長室を後にし、自分のフロアに戻った。
ドアを開けて室内に入ると、みんなの視線を集めた。
俺が笑顔で親指を立てると、風見も、美香も、優美も、まずは安堵の表情に、その後、満面の笑みで拍手を送ってくれた。
きょとんとしていたのは金田課長代理だったが、まあこの人はもともと蚊帳の外だったので、今更だ。
今回、長時間席を外していたのは、虹山秘書と打ち合わせがあったため、ということになっている。
もちろん、なぜそんなことになったのか課長代理にはしつこく聞かれたのだが、『プライベートなことなので』と、論点をずらしておいた。
すると、何を勘違いしたのか、金田課長代理は
「なんだと……おまえは虹山さんと、一体どういう関係なんだ?」
と、訳の分からないことを聞いてきた。
「どういうって……単に仕事でお世話になっているっていうだけですが」
「そうだろうな……お前と釣り合うわけがないしな……」
と意味の分からない嫌みを言われた。
……ひょっとして、嫉妬しているのだろうか?
金田課長代理は、四十をとっくに過ぎたその歳で、まだ一度も結婚したことがない。
太っているし、顔は脂ぎっているし、まあ、恋愛は無理なような気がする。
それでも、片思いは自由だと思っているのか、結構、見た目がかわいい女の子に優しくしたり、それとなく食事に誘ったりしているという。
それで上手くいった試しはない。
そして今度は虹山秘書を狙っているのかもしれない。
別に恋愛は自由だし、俺がとやかく言うべきものではないだろうが、歳が離れすぎていることもあるし、そうでなくとも、あんな美人とだと、絶対に上手くいかないと思う。
あと、嫌みを言われたことにちょっと腹が立ったので、創作の中で憂さ晴らしをすることにした。
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「ぎぃやああぁぁぁ……」
そんな悲鳴が、アイザックの館の中で響いた。
驚いた俺達は、それぞれ自分の部屋から飛び出して、その声が聞こえてきた方角に急いで、しかし警戒しながら走っていた。
すると、浴室のドアの手前で、半生焼けになってピクピク痙攣しているフトシ課長代理が転がされていた。
すぐ側に立っていたのは、まだ十代後半の、ショートカットで可愛らしいメイド、『レイ』だった。
いつもおいしい料理を作っている彼女、今日はパジャマ姿で、少し怒っているようだ。
「……この人、私が入浴しているところ、覗こうとしていた」
彼女の一言に、さすがに俺達はドン引きだった。
それにしても……生命力が俺達の誰よりも高い、フトシ課長代理を、一撃でこんな状態にしてしまうとは……。
とりあえず、ユウに回復魔法を使ってもらい、その後、しばらく待った。
しかし、気付けを使っても意識は戻らないので、フトシの部屋へと強制的に運搬した。
そしてレイに、どうやってフトシを倒したのが聞いてみると、
「雷撃系の魔法一撃で倒しました」
と、さらりと返ってきたその言葉に、俺達は、背筋にゾクゾクと冷たいものを感じた。
彼女は、彼女こそは、七大英雄の一人で大賢者であるアイザックの一番弟子、レイ・マウンタだったのだ。
※次回は、創作でパワハーラとの最終決戦に突入します。




