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即死魔法 (創作、現実)

 パワハーラ・ザイゼンは、フトシが吹っ飛んで行った方向を見やり、


「ふむ……私としたことが、殺さずに飛ばしてしまっただけだったか……まあいい、あんな雑魚はどうでもいい。勇者と、それに準ずる能力を持つお前達には、確実に死んでもらおう!」


 パワハーラはまたもや、巨大な右腕を掲げた。

 するとその上に、赤銅色に鈍く光る、先程よりも明らかに禍々しいエネルギーを凝縮し始めた。


「……これって、ものすごくヤバイよ! ユウちゃん、あの最終防御結界をっ!」


「はい、ミキさん!」


 女性陣二人が、それぞれ『スタッフ・オブ・スイフト・ハイブリッド』と『スタッフ・オブ・アクア・ハイブリッド』を掲げ、集中して祈りを捧げる。


「……ふん、こざかしい……食らうがいい、強制首切命令(リストーラ)!」


 巨大な竜の右腕から放たれた、高速回転する赤銅色の禍々しい波動が迫る!


「「労働組合結束防御壁ロード・クミアーイ!」」


 すんでの所で女性陣二人の最強防御呪文詠唱が終わり、虹色に輝くバリアが出現した!


 パワハーラの放った波動はそのバリアに食い止められてはいるが、消えることなく圧力をかけ続けていた。


強制首切命令(リストーラ)、だと!? 即死魔法じゃないか……二人とも、耐えられるか?」


 俺は、杖を掲げ、必死に耐えている二人にそう確認した。


「……私達の労働組合、弱すぎる……それに対して、強制首切命令(リストーラ)の圧力が強すぎる……長時間は持たない……」


 ミキは苦しそうに、(うめ)くようにそう言った。

 見ると、強制首切命令(リストーラ)の直撃を受けているバリアのその部分に、少しずつ、亀裂のようなものが入っているのが見えた。


「やばい……このままだと、俺達全員、1分とかからずに全滅するぞ……シュン、何かいい案は浮かばないか?」


「……いえ……結界が張られている以上、こちらからも攻撃ができません。パワハーラの攻撃が止んでくれるのを待つしか……」


 彼も、悔しげに首を横に振った。

 そうしている間にも、どんどんバリアのひび割れが大きくなっていく。


「……もう持たないっ!」


 ミキが、悲痛な叫び声を上げた、そのときだった。


 ―― キーン、コーン、カーン、コーン ――


 どこからともなく、事務所のチャイムのような音色が聞こえて来た……と同時に、パワハーラは突然攻撃を止めた。


「もう5時か……大幹部ともなると、残業などしてはならない。心残りだが、帰るとするか」


 竜の化身は、残念そうにそう言うと、俺達を一瞥して言葉を続けた。


「ジュウヤ・クシーツの城にて待っていてやろう。もっと力を付けたら、挑んでくるがいい。私は退屈しているのだ……せめてその時は、もっと楽しませてくれよ」


 パワハーラは不敵な笑みを浮かべながらそれだけ言い残すと、転移魔法ルーララを唱えて、その姿をかき消した。


 ――数秒後、周囲からおぞましい邪気か消え去ったのを確認して、全魔力を使い果たしたミキとユウが、崩れるように、並んでその場に座り込んだ。


 俺は駆け寄り、屈んで、


「大丈夫か、怪我は?」


 と声をかけたが、二人ともけなげにも笑顔を見せて、首を横に振った。


「よく頑張った……おかげで助かった。パワハーラ・ザイゼン……恐ろしい奴だ……とにかく、今は生き延びたことを感謝して……」


 と、そこまで言ったとき、突然ミキが抱きついてきた。


「……怖かった……ヒロ、怖かったよ……みんな、死んじゃうかと思った……」


 あまりに唐突のことだったので戸惑ったが、普段気丈なミキがこれだけ声を震わせているのだ、よほど恐ろしかったのだろうと思って、右手でその肩を抱き締めた。


 すると、もう一人……ユウも、泣きながら俺の側に来て座ったので、左手でその肩を抱いた。


「ユウもよく頑張った……二人のおかげだ……」


 彼女も、俺にすがりつくようにして抱きつき、嗚咽を漏らしていた。


 シュンは、大の字になって、天を見上げるようにして荒い呼吸をしていた。

 俺もそうしたかったが……美女二人に頼りにされている以上、しっかりしなければならない。


 二人に同時に抱きつかれて、生きている事を実感、神に感謝し、そしてこのシチュエーションに、少しだけ満足していたのだった――。


*****

(現実世界)

 

 今回の投稿の後も、最初の感想は常連の彼女から送られてきた。


『投稿者:カワウソ 20歳~25歳 女性

 パワハーラ・ザイゼンさん、今までの敵とはケタが違う強さのようですね。みんな助かって良かったです(フトシさんも生きていますよね?)。あと、美女二人に抱きつかれた主人公がうらやましいです。私も、ミキちゃんやユウちゃんみたいな積極性があればいいのにな、と思いました(笑)。それと、リストラ、怖いですね。実は私の務めている会社も、そんな噂があるので、本当に現実味がありそうで恐ろしいです。たぶんそれなりの歳の人が対象だと思うのですが、そうは言っても、私もいつクビになるか分からないので、戦々恐々です(笑)。では、今後も楽しみにしていますので、大変だとは思いますが、更新、頑張ってくださいね!』


 それに対して、土屋はこう返事を返した。


『カワウソ様 いつも感想、ありがとうございます! 主人公、初めていい思い? をしました。でも、喜んでばかりではいられません。今度の敵は、今までとは比べものにならないです。リストラ、怖いですね。僕も自分の会社で、そんな噂が出ているのを聞いた事があります。僕はダメ社員なので、いつリストラされても不思議では無く、カワウソさん同様、戦々恐々としています(笑)。これからも更新、頑張ります!』


 このように返事を書いたものの、土屋は、まさが自分が本当にリストラされることなど無いだろうと、たかをくくってしまっていた。

※次回は、現実世界の同僚である、美香と優美のガールズトークの予定です。

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