襲撃 (創作)
ヒステリックを倒した俺達は、ユウの回復魔法でダメージを消した後、そのまま砦の攻略にかかった。
指揮官を失った砦など、脆いものだった。
ミキの火炎系、爆破系魔法で追い立てて、慌てて飛び出して来た妖魔に、シュンが『レクサシズ・アロー』にて、遠距離攻撃にて倒す。
大型のトロールのような妖魔が何体か、ヤケになって突っ込んでくるが、それは俺が愛剣『インプレッシブ・ターボブースト』で殲滅させた。
このような掃討作戦は、軍の兵士に任せても良かったのだが、妖魔を倒すと魔石が手に入るし、経験を積むことにより攻撃力や生命力などのパラメータが上昇する。
レベル上げだと思って、危険でない範囲で、ザコ妖魔達を倒していった。
なお、フトシは目を覚したものの、戦いには参加せず、ひたすら魔石拾いや、妖魔達が残した金目のものの収拾に没頭していた。
やがて、日も大分傾いてきた頃。
この時点まで残っていた妖魔達は全て逃げ出し、フトシによる戦利品回収もあらかた済ませた。
もう用はない、と砦を出て、街道を歩いて行こうとした、まさにその時だった。
すぐ前方に、魔力の異常な集中地帯が出現し、空間が歪んだ。
「……転移魔法だ! 何か来る!」
俺はそう叫んで、皆に警戒態勢を取るよう指示した。
――そしてそこに現れたのは、まるで竜だった。
巨大な体躯、鋭い眼光。
驚愕のあまり身動き一つできなくなっている俺達を、値踏みするかのように視線を上下に動かしている。
胸を張り、頭を持ち上げたその体高は、俺の倍近くある。
体を支える四本の足には、それそれ四本ずつの指、そしてその先に伸びる鍵爪は、サバイバルナイフほどもの大きさだ。
全身、緑がかった鱗に覆われ、胸部から腹部にかけてやや白みを帯びている。
全体的には細身だが、日本や中国の竜のイメージよりは、西洋のそれに近い。
頭頂部に二本の大きな角が生え、背には鬣が揃っている。
その立ち姿の凛々しさは、まさに邪神の使いと呼ぶにふさわしい。
そしてその顔は、なぜか人間の面影が垣間見えた。
それも、何処かで見たことがある――。
「……この精悍な顔付き……もしや……財前専務!?」
フトシが、驚愕の表情を浮かべながら声に出した。
それを聞いて、俺も、この竜の顔つきが財前専務そっくりであることに戦慄を覚えた。
「ふっ……専務、か……懐かしい響きだな。しかし、そんなものはもう必要ない。今や、我は邪鬼王様より、竜の化身としてこの無敵の肉体を頂いた……ちなみに、普通の人間の姿に変身することもできるぞ」
「……では、どうかその人間の姿、見せてください」
こいつが、四天王の三人目にして最後の一人、最強の力を持つと言われる『パワハーラ・ザイゼン』だと直感した俺は、誘いに乗って人間に変身したところを攻撃しようと考えたのだ。
「ふっ……そんな安易な誘いに乗ると思うか?」
あっさり見破られたらしい。
「セクハーラ・トウゴウに続いてヒステリック・ヤマモトが勇者に討ち取られたとの情報を聞いてわざわざ足を運んだものの、キサマ等のようなザコ共とはな……よほど油断したのか。まあいい、あんな役立たず共、死んだところでいくらでも代わりはいる。だが、お前達に関しては、これもけじめだ。このザイゼンが直々に相手をしてやろう!」
パワハーラ・ザイゼンは、巨大な右腕を掲げ、その上に銀色に光る何かを凝縮し始めた。
「むっ! 何か強力な魔法が来る! 皆、自分の身は自分で守るんだ。私にはこれがある! 奥義、ヘ・リクツ!」
フトシが唯一修得している特殊能力を実行すると、どす黒い障壁のようなものが現れた。
「ふ、そんなもの役に立つものか。食らうがいい、強制左遷命令!」
巨大な竜の右腕から放たれた銀色の光球は、ヘリクツの障壁をいとも簡単に打ち破り、フトシを直撃した!
「うわあああぁぁぁぁーーーー……」
フトシは勢いよく吹っ飛び、そのままはるか彼方へと、一瞬の煌めきだけを残して消えていった。
「な……ばかなっ! たった一撃で……フトシ課長代理が、地方へ飛ばされたっ!」
残された俺達は全員、パワハーラ・ザイゼンの圧倒的な攻撃力に、絶望した。
※次回以降、この絶望的な戦いの続きが、そして現実世界でも強烈なパワハラの嵐が吹き荒れることになりそうです。




