祝福のメッセージ (現実)
「第2回 集談社小説コンテスト 大賞受賞のお知らせ」
……その内容を読んだ俺は、すっとんきょうな声を上げてしまった。
「どうしたの、妙な大声を出して……」
風呂上がりの美香が、あくびしながら俺の部屋にやってくる。
時刻は夜の22時過ぎ。
彼女とは既に半同棲状態で、この日も泊まっていく予定だった。
その美香に、パソコンの画面を見せる。
「えっ、これって……入賞? マジ? 凄いじゃない! 書籍化って……小説家になるってこと!? 賞金も2百万って……」
「いや、れ、冷静になろう……何かの詐欺かも知れない。そういうの、よくあるらしいから」
「でも、サイト運営からの連絡よ。その証拠に、普通のメッセージの色じゃないし……」
「いや、けど……あ、そうだ! 『集談社小説コンテスト』のサイトに正式に載れば確実だ、それを待とう!」
「そ、そうよね、まだ事前連絡の段階……」
と、そのとき、俺のスマホにメッセージが入った。
「あ、優美からだ……えっ、『大賞、おめでとうございますっ! 凄いです、尊敬しますっ!』って……まさかっ!」
俺は大慌てで『集談社小説コンテスト』のサイトを確認してみる。
美香も、隣で食い入るようにその画面を見つめている。
「あ、発表されてる……『第2回 集談社小説コンテスト 大賞……会社まるごと異世界召喚』……」
そこには、受賞作の最上段、金色の文字で一際大きく、俺の作品名が掲載されていた。
そして次々と、祝福のメッセージが届き始めた。
「大賞受賞、おめでとうございます! ついに書籍化ですねっ!」
「連載当初から追いかけていた甲斐がありましたっ!」
「二百万円、羨ましいです。何に使うのでしょうか?」
「ついに小説家デビューですね! 専業になるのでしょうか?」
「パワハーラ・ザイゼンを完全撃破したタイミングでこの受賞! まさか、狙っていたのですか? もしくは事前に内定していた? どちらにせよ、おめでとうございます!」
……こういうのは、事前に受賞や書籍化に関する最終確認の連絡が先にあると思っていたのだが……俺と美香は顔を見合わす。
「……そういえば、聞いたことある気がする。事前に情報を漏らしてしまう人がいるから、発表と連絡を同時にすることがあるって……小説の話じゃなくて、音楽コンテストか何かだったと思うけど、一緒なんでしょうね……」
俺の疑問を察したのか、美香がそう口にする……といっても、彼女もまだ半信半疑のようだが。
そして久しぶりに、あの人から感想が届いた。
『投稿者:ダンディ 50歳~59歳 男性
小説大賞受賞、おめでとうございます! この作品ならば、必ず何かしらの大きな賞を受賞し、書籍化することになると考えていました。むしろ、遅いぐらいだったように思います。勇者の作品内における正義感溢れる行動に、感服したしておりました。きっと、実生活でも、貴殿は勇気ある行動を実践できる勇者様なのでしょうね。私としても、できるかぎり協力させていただこうと思っています』
「あ……ダンディさんだ。この人も、ずっと前から感想を書いてくれてたんだ。ありがたいな……でも、協力って言っても、お互いに顔も知らないんだけどな……」
「……う、嘘……」
なぜか、美香は俺の隣で、引きつった笑みを浮かべていた。