レイダーの忠誠
「ぐっ‥‥‥何て一撃だ、これが噂のサマンサの乙女の一撃か」
ヨロヨロとおぼつかない足取りでレイダーがワタクシに向かって歩いてきますわ。
「‥‥‥俺の負けだ、部下は助けてやってくれ、代わりに俺はどうなっても構わない」
そう言ってレイダーが腹を見せましたの。
「さあ! 気が済むまで踏んでくれ! 抵抗はしない!」
「「「レイダー様ッ!」」」
レイダーの部下達がニャーニャーと涙を流しながらその場で後ろ足が崩れ落ちましたわ。
「レイダー、貴方何か勘違いしてませんこと?」
ワタクシはレイダーの勘違いを正すためにそう伝えましたの。
「‥‥‥敗軍の猫を辱しめるか、サマンサ」
腹見せの状態のままレイダーが言ったのですわ。
「ならばっ!」
レイダーがいきなり起き上がり、屋根へと飛び乗りそのまま落ちてきましたの。
「‥‥‥いけませんわレイダー、それは許しませんですわよ」
ワタクシは女神様から貰った乙女の一撃では無いもう一つの力を使いましたの。
「乙女の翼!」
ワタクシの背中に、半透明で銀色の光を放つ翼が形どられますわ。
そのままレイダーを下から支える様に掴むと、ゆっくりと着地ですのよ。
「何故だ‥‥‥何故情けをかける、サマンサ!」
「貴方はワタクシに負けたのですレイダー、ならばもう貴方の命はワタクシの物、許可無く散らせる事は許しませんわ」
そう言って笑顔でニャーと伝えるワタクシ。
「‥‥‥【戦乙女】、か‥‥‥負けたよ、いや負けましたサマンサ様、このレイダーの命お好きにお使いください」
ワタクシの言葉に器の大きさを知ったレイダーが忠誠の腹見せをしますの。
「踏んでください、今度は先程とは違います、貴女への変わらぬ忠誠の誓いです、どうか」
レイダーの言葉に、配下の猫兵達も続いて腹見せしましたわね。
「‥‥‥騎士レイダー、ワタクシに永遠の忠誠を誓えますか」
ワタクシはレイダーの覚悟を見て腹に前足を乗せて聞きましたの。
「この命尽きるまで貴女の剣となり盾となります、我が主人サマンサ様」
こうしてワタクシのもっふもっふ団は、レイダー達を加えた百五十を越える大猫団となりましたのよ。
‥‥‥さあ早く帰らなくては、晩御飯に遅れてしまいますのよ!
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その頃、ワタクシ達の知らない場所で二匹の猫が話し合っていましたの。
「レイダーが負けたか」
「はっ、恐るべき強さを誇っております、あのサマンサと言うスコティッシュフォールドは」
痩せている影が大きな影に向かい答えましたわ。
大きな影は一度考え込みますと、再び口を開きましたわ。
「四天王を使え」
エルピスを覆う巨悪が動き始めましたのよ。