夏の夜のお話ですわ
ワタクシの名はサマンサ、スコティッシュフォールドのメスよ。
今ワタクシは、ブックとゴンタの三匹で真夜中に、廃墟になった教会に来ていますわ。
「あ、姉さん‥‥‥やっぱりここを新しい拠点にすんの辞めません?」
ゴンタがかなり弱腰ですわね、どうしたのかしら?
「ゴンタは幽霊が出ないか怖がっているのですよ、レディ」
仕方ないですわね、幽霊が怖かったんですのね。
確かに良く見ますとゴンタの足が生まれたての子鹿みたいにプルプルしていますわ。
「ゴンタ、怖ければ外で待っていて良いのですよ?」
ワタクシがそう言いますと、ゴンタは震える足を押さえつけひきつった笑みを浮かべましたの。
「あ、ああああ姉さん、オイラが怖がってると? 幽霊? ははは、そんな馬鹿らし‥‥‥」
その時、祭壇の上に上がっていたロウソク立てが倒れて大きな音が響き渡りましたの。
「ひっ! ひぃぃいっ!」
隣にいたブックにしがみついたゴンタが歯を鳴らしながらブツブツ呟いていますわね。
「ええい、放しなされゴンタ! 我が輩男に抱きつかれる趣味はありませんぞ!」
仲が良いですわね、二匹共。
ワタクシは二匹を尻目に先程倒れたロウソク立てへと向かいますわ。
そのままロウソク立てが乗っていたテーブルに飛び乗りますと、テーブルの上にスコティッシュフォールドを型どったホコリ一つ無いレリーフが置いてありましたの。
未だに騒いでいるブックとゴンタを呼び寄せましたわ。
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「不思議な話ですな、ここは教会が去った後使われて居なかった筈です」
ブックが首をかしげて居ますわね。
「まあ構わねぇって、てか、この絵姉さんに似てませんかい?」
ゴンタがそう言いますので良く見てみましたの。
そんなに似ていますでしょうか?
「‥‥‥そう言えばブック、ここは何の神様を奉じてらしたのですか?」
ブックへと目を向けて聞きましたわ。
「確か、慈悲と友愛を司る女神、ネイメス様でしたかと‥‥‥ああ、あそこにある石像の方ですぞ」
ブックが指し示した先には、ワタクシを転生させて下さいました女神様の姿をした石像が傷一つ見当たらない状態でありましたの。
恐らくですがこのレリーフといい石像といい、女神様がプレゼントしてくれたのかも知れませんわね。
こうして、ワタクシ達もっふもっふ団は新しい拠点を手に入れたのですわ。




