神技 ラ・ピュセル
ワタクシ達が城でブラッディキャット団を待ち構えていますと、奴等がゆっくりとやって参りましたわ。
「‥‥‥良く逃げなかったな、サマンサ」
レイダーが群れの先頭に立ち、ワタクシを見ながら落ち着き払って言ってきましたの。
「負けない戦いを逃げる猫は馬鹿ですわ、レイダー」
ワタクシは土管の上からレイダーを見下ろします。
「‥‥‥お前達、奴等を殲滅しろ!」
レイダーの号令と共に、配下の野良猫達が一斉に矢印の形に並びましたわ。
「猫矢の陣! レディ、奴等ただの野良猫じゃありません、訓練を積んだ兵猫達です!」
軍師のブックが慌てていますわね。
「ブック、このワタクシは誰ですか?」
「は? え、レディ・サマンサです‥‥‥」
ワタクシは頷き今度はゴンタに聞きますの。
「ゴンタ、ワタクシのもっふもっふ団は何ですか?」
「へい姉さん! もっふもっふ団は最強無敵だ!」
宜しい、二人共解っているではありませんか。
「そう! ワタクシはサマンサ! 最強無敵のもっふもっふ団を率いる最強無敵のサマンサですわ!」
百匹が千匹だったとしても、ワタクシは二度と負けませんわよ!
「もっふもっふ団! ワタクシ達の精強をブラッディキャット団に見せつけなさい!」
ワタクシはそう言って敵リーダーのレイダーに飛び掛かりましたの。
ワタクシの勇姿を見たもっふもっふ団は気炎万丈、溢れでんばかりの気迫で突撃を開始しましたのよ。
天の時、地の理、猫の和、そしてこの街を守るという思いは倍の敵を圧倒していきますわ。
「くっ! 馬鹿な! 我が猫勢は正規猫軍だぞ! 何故こうなる!」
「レイダー、貴方達には足りないものがあるのですわよ」
慌てるレイダーに向けてワタクシは言いますの。
「貴方達には、ワタクシ【勝利の女神】がついていなかったのですわ!」
ワタクシが空高く舞い上がります。
レイダーは呆気に取られていますわね。
「喰らいなさいレイダー! 神技・乙女の一撃!」
ワタクシの姿が銀色に光輝きます。
その姿を見た敵も味方もワタクシに見惚れていますわ。
「‥‥‥美しい‥‥‥」
レイダーが呟いた瞬間、空中から飛来するワタクシの猫パンチをマトモに受けたレイダーが吹き飛びました。
これで大勢は決しましたわね、どうやら晩御飯には間に合いそうですわ。
カイル君が言っておりました、今日の猫フードはプレミアムフードらしいので楽しみですの。