ワタクシの名はサマンサ、元悪役令嬢のスコティッシュフォールド(猫)よ

２章 ワタクシと新たなる刺客と

【軍神】犬信

　ワタクシ達は敵犬達を避けながら犬信さんの下まであと一歩と言う所まで迫りましたの。

「小太郎《コタロウ》、もう一匹を止めておけ」

　犬信さんの言葉と共に、一匹の影がレインさんを強襲しましたのよ！

「くっ！ 誰だ！」

　間一髪影の攻撃を避けたレインさんが叫びましたわ。

　影が地面に着地しますと、そこには一匹の柴犬が立っておりました。

「やりますね、僕の一撃をかわすとは」

「サマンサ様！ この柴犬は私が引き受けます！ 敵のボスを！」

　ワタクシは小さく頷くと犬信さんへと向き直りましたわ。

「サマンサ殿、お主には不可思議な力があると聞いている」

「‥‥‥卑怯だとでも言いたいのですか？」

　ワタクシがそう聞くと、犬信さんは首を横に振って言ったのですわ。

「我にも少々かわった力があるのだ、お見せしようサマンサ殿、我の力を」

　そう言って犬信さんが力を溜め始めましたら、犬信さんの背後の空間に恐ろしい気配を感じましたの。

「我、毘沙門天の化身なり！ 武神変化《メタモルフォーゼ》！」

　犬信さんが光輝きましたの、その光が消えますと中から鎧を着た二足歩行の犬信さんが姿を現しましたわ！

「さあ、サマンサ殿も最初から全力で闘争を楽しむとしようぞ」

　ワタクシ転生後から数えて、初めて足が震える感覚を覚えましたわ。