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異世界飛ぶこと例の如し

日本、真夏の猛暑日


「うーん、やっぱりこの棘の位置が悪いのかなぁ いやでもこれを動かすと他が繋がらなくなるし 」


エアコンを付けた部屋でブツブツと独り言を呟く比較的幼い顔立ちの少年

その少年の手には現在プレイ中の携帯ゲーム機が握られている


周りには床を埋め尽くす程に広がり、幾重にも積み重なるゲームソフトの箱。

しかし異様なのはそこではなく、

どのソフトの名前にも「罠」や「トラップ」、「ダンジョン」といった単語が入っていることだ。


この少年、プレイヤー名 マイン

は昔から人を罠に嵌めるのが得意だった。

そしてマインはその罠に掛かった人の反応を見るのが大好きだった

最初は公園に落とし穴を掘って人を落とす程度だったのだが、やがてその行為はエスカレート、ありとあらゆる人を自らが作った罠に掛け傷つけた。

その結果当然マインの周りには1人も友達はできなかった

これには流石に親も頭を抱えたのだが…ある日、マイン宛にと親戚より届いた物。それは携帯ゲーム機とゲームソフトだった。

ゲームソフトの内容は自らが魔王となり、ダンジョンに侵入した勇者を罠に嵌めるといったシンプルな内容だったのだが、マインはこれに大いにハマり。

親はゲームソフトを買う代わりに周りの人にイタズラをしないという条件を彼に言い渡し事なきを得たのだが…


「よっし!掛かった!これで上手くいったかな?」

マインは現在新たなトラップのコンボ(トラップを当てた相手をその効果で更に別のトラップの場所へ誘導し、引っ掛ける)の実践中。


ゲーム内の勇者がトラップに嵌って吹っ飛ぶ様を見て笑顔を浮かべている


「さて、じゃあ次の勇者にはこれだ!」


またも勇者がトラップに引っ掛かり滅多打ちにされている。

勇者の体力はジワジワと削られていき、やがて0になった


「うーん!このトラップは今後も応用できそうだな」


呟いたところで喉が渇いたのかゲーム機を置き、ペットボトルに手を伸ばす。しかし中身は空だった。

仕方なく飲み物を取りに行くために立ち上がり部屋を出る。


次の瞬間…!

足元が光輝き、忽然とマインの姿が消える。

先ほどまで彼が立っていた場所には空のペットボトルが転がっていた






【何処かの世界】


目の前に少年が現れたのを確認し


「マヴォヴ様!召喚成功です!ニホン人の召喚に成功しました!」

万歳のポーズを取りながら玉座へ振り返る召喚士モンサ(推定22歳)と


「おお…!これで我がデビルスカルキャッスルも安泰だな!」


玉座に座りながら万歳のポーズを取る魔王マヴォヴ(20歳)


一方で(当然だが)状況が掴めずキョロキョロと周りを見回す少年(14歳)


「ここ、何処ですか?」

それが彼、マインが異世界にて発した第一声となった




10分後



「 さて、何処まで話したっけか」


「マヴォヴ様、まだこの場所の名前と王様の愚痴しか言ってません」


「うん…ここが良くある異世界みたいな感じの場所ってのはわかったけど他は王様の愚痴しか聞いてないよ」


元より人とズレた感覚を持つ少年はこの状況に全く怯えを感じていないようだ


「あー…マジ?でもさ、アイツやる事なす事ほんとウザくてさぁ!昨日なんか「魔王様、本題に入りましょう?」


また新たに始まった王様への愚痴を遮るモンサ

ニッコリと柔和な笑顔を浮かべてはいるが何故か非常に怖いものがある


「え、あー そのだな。端的に言うとな…ガキ、お前には俺のこの城の護りを固める手伝いをして欲しいんだ」


「報酬とかあるの?」


「目ざといガキだなぁ…他に聞く事あるだろ、んでもって俺は魔王だぞ?その辺は心配すんな」


「じゃあやるよ。といっても何をすれば良いの?」


「危険かどうかとか聞かないのか?」


「んー じゃあそれも聞いとこうかな」


「ついでかよ…えっとだな。まず何をするかだがな、ニホン人ってのは罠を仕掛ける事に非常に精通してると聞いた。だからお前にはこの城の内部に好きに罠を仕掛ける権利を与えようと思ってる。危険度は…お前の腕次第で変わるな。最悪死ぬ」


「ちょっと待って、言ってる事がよくわからないんだけど、日本人は別に罠を仕掛けるのとか全く得意じゃないよ?」


「は?」


少年の言葉に一瞬凍りつくマヴォヴ

すぐに玉座の上に立ち部下を睨みつける

「おいモンサ…どういうことだ?」


「実はですね。私も先ほど気づいたのですが読んでいた文献に載っていたのはかなり昔のニホンだったらしく…」


「マジかよ…じゃあ今は罠とか仕掛ける技術は失われてるってことか?俺たちはこいつを無駄に召喚しちまったのか!?」


頭を抱えるマヴォヴ

しかしそれを見たマインが玉座に歩みより


「おじさん、待ってよ。僕は何も日本人全員が全員得意じゃないと言っただけだよ?」


と言った


「あ?ということは…?あとおじさんじゃねぇおにいさんで魔王様だ」


「僕は得意って事だよ。適当に日本人を呼んだのなら運が良かったね おじ、おじいさん」


ゾクッとする程可愛らしい笑顔を浮かべてニッコリと笑う少年


「んだよ…なら最初からそう言えよ!骨折り損のくたびれ儲けかと思ったぜ。あと言い直せてないぞ、寧ろ老化してるからな」


玉座から指摘しつつ胸を撫で下ろすマヴォヴ


「…骨折り損も何も、マヴォヴ様は何もしてないですよね…?」


それを見たモンサは同じように胸を撫で下ろしつつ呟くのであった


「ところでシトゥージ何処行った?これより召喚の儀式を始める!ってカッコ良く決めた次の瞬間から居なくなってた気がするんだけど」


「シトゥージ様なら…村の人達と筍掘りの約束があったとかで飛び出して行きましたよ」


「あいつもう少し魔王様を敬ったほうが良いと思うんだよな…執事ポジだろ?もっと忠誠とか誓えよなー」


「忠誠を誓うのにもっとは無いと思いますが…」


モンサのツッコミをスルーしつつマヴォヴはマインの方を向いて言う


「このデビルスカルキャッスルの俺の部下達にお前を紹介したいと思う」


そしてそのまま玉座にあるウォシュレットボタンを押す


「おぅ!?また間違った!こっちだこっち」


慌てて緊急呼び出しボタン(緊急時用)を押す


「そちらも本来の用途的に考えると間違いでは無いのですか…」


それを見て呆れるモンサ


「とりあえず俺から自己紹介しといてやるか。魔王マヴォヴ20歳だ。魔王様だからな?敬えよ? 好きな食べ物は筍ご飯、嫌いな食べ物は魚全般だ。はい次モンサ」


適当に流しつつモンサへと振る


「モンサです。このデビルスカルキャッスル(笑)では召喚系の罠を担当しています。獲物が引っかかったらガォーってやつですね。好きな食べ物は…」


そこで急に君目付きが変わった


「君くらいの可愛い男の子!嫌いな食べ物は…オッサンですね」


言いながらジワジワとマインに近づこうとするモンサ


「モンサさん!?それ食べ物じゃないですよね?ガキが引いてますよー!」


マヴォヴがモンサの本性を始めて見て慌てると同時に

大きな音が近づいて来た


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