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動かざること魔王の如し

ここはとある世界のある地方に存在する、オバカ村と言う村。

この村は一見すると平和な村であり、名産品やこの地特有の資源を活かした温泉宿など旅人が休むにはもってこいの場所である。

が、この村は他の村と大きく違う点がある。

この村、勇者がやってくる頻度がとてつもなく高いのだ

それもそのはず、この村の外れにあるやたらデカく、外壁に骸骨の外装を散りばめた物凄く自己主張の激しいお城。

その最深部には史上最悪最凶と呼ばれる魔王がいるからである。


この世界では勇者と呼ばれる存在が魔王を倒すと世界に平和が訪れると言われており、勇者は王より命を受けこれまで500年以上もの間、魔王と戦い続けてきた。

そのうち勇者の力は、早い話がインフレを起こし、魔王を城の外から一撃で葬るレベルに到達してしまっていた。

一方で魔王は全く強くならず、最早勇者相手になす術もなく…土下座し始めた魔王の写真が残っている程である


しかし、20年前誕生した新たな魔王。この魔王の城に入った勇者で帰ってきた者は居なかった

これには王様も大慌てで即座に大量の勇者 (バイト)をこの城に送り込み、何が何でもこの新魔王を討伐しようとしたのだが…

やはり帰ってくる者は居なかった


このお話は最凶である新魔王とその部下達による、勇者撲滅ファンタジー



ではなく



「はぁー…腹減ったー…おえっ」


無駄に良い声の後に汚いげっぷ。

玉座に着いてやたら大仰に構えているイケメンがいる。

ぱっと見では残念な人にしか見えないが…頭からは角が生えており、背中には大きな羽。

なんとこの男…魔王なのである


「マヴォヴ様、先程お食べになったばかりでございます」


と魔王を諌めるのは初老の男。しかしこの男にも悪魔の牙が生えている


「あ?俺はマオウじゃねぇよ!マヴォヴだよ!」


「ですからマヴォヴ様と申しましたぞ…」


「あ、そうか?最近聞き間違い多くてさぁ」


マヴォヴと呼ばれた魔王が耳の中に人差し指を突っ込み、穿っては出してを繰り返す


「耳垢が溜まっておられるのでは?爺がお掃除して差し上げましょう。まずは横になってくだされ」


「いやいや、この広間俺の玉座しか無いし。どうやって横になるんだよ」


「でしたら床にお寝転びください」


「あんたナチュラルに鬼畜だなオイ!誰がこの汚い床に寝るか!」


マヴォヴは目を見開き反発する


「そうですか…では横におなりください」


「おーい?シトゥージさん?聞こえてますかー」


シトゥージと呼ばれた初老の男はその言葉を聞きにっこり笑いながら


「最近耳が聞こえづらいのですよ、ふぉっふぉっふぉっ」


と言い放つ。


その言葉にマヴォヴが重ねて反論しようとしたその時!



「うぉりゃぁぁぁぁ!魔王、覚悟ォォォ!」


やたら広い広間の6つもある扉のうち、マヴォヴから見て一番左奥の扉が開き如何にも勇者といった格好の男が広間の中へ飛び込んできた。


マヴォヴはこの状況に顔色1つ変えない。どころか勇者へ向かっておもむろに左人差し指を向け、そこから紫色の光線を放った。


勇者はこの光線を剣で反射し、マヴォヴへと返す。


「爺、下がっていろ。俺がやる」


その言葉に後ろへ引きつつも何故かニヤリと笑うシトゥージ


マヴォヴは剣を構えながら玉座へと走ってくる勇者に正面から両手を広げ歓迎のポーズを取る。あくまで動く気はない。


それを見た勇者は

逃げないのなら追い詰めるまでとばかりにマヴォヴとの距離を縮めてくる。

そして、勇者がマヴォヴに近づき、あと5m程の距離になったところで勇者の身体が光り輝き始めた。

そう、この光を纏った状態での必殺の一撃こそが勇者のインフレの賜物であり付近一帯の魔王を自動的に感知し一撃で死に至らしめる事ができる力である。

元来の魔王ならこの力により城の外から感知されて倒されていたのだが、何故かマヴォヴにはその力が効かなかった。だからこそマヴォヴは20年もの間を生きながらえているのだ

しかし今たしかに勇者の身体は光輝いている。即ち、必殺の範囲内ということだ。


しかしマヴォヴは顔色1つ変えない。それどころか必殺の構えを取っている勇者に背を向け、シトゥージに手を振る。


「魔王!部下に最後のお別れというわけか!ふはははは!」


勇者は勝ちを確信し、剣から必殺の光を放とうとしたその時


勇者の体が消えた。否、落ちたのだ。

ごくごく単純な、落とし穴に


さて、勇者が消えたあとのマヴォヴとシトゥージだが…爆笑である


「最後のお別れというわけか! (キリッ) かーらーの!?しょーもないただの落とし穴で落下とかヤバイって うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!うひ、うへへへへ!」


「見事なタイミングだったでしょうマヴォヴ様!さっきの落ちる瞬間の勇者の顔だけで茶碗3杯はいけますぞ ヌハハハハハ!」




落ちていった勇者だが…死んではいない。

だがこの後死ぬ程恥ずかしい気分に陥ることになる。


マヴォヴの取る方法は非常に簡単。

この魔王城 《デビルスカルキャッスル》:マヴォヴ命名

に入った勇者の行動を常に魔法で記録しておき、映像化する。これだけである。


あとは落とし穴の先にある小部屋の壁にこの映像を投影すると…

勇者はこれまで仲間に掛けてきた気取ったセリフやかっこいい(と思っている)ポーズを客観的に自ら見直すことになり、あまりの恥ずかしさに自分から死にたくなるという。

勇者が勇者たる所以であり勇者である以上気取るのが性であることを逆手に取ったマヴォヴのいやらしい作戦である。


そしてこの作戦、2日間の間朝昼晩食事付きの部屋で映像を繰り返し何回も見せたあと最後に必ずこう聞くのだ


「勇者続ける? やめたら良いことあるよ?」


と。


当然だが勇者は勇者を続けようと最初は考える。だが2日間の間じっくり見させられた自分の恥ずかしい言動+恥ずかしい穴への落ちっぷり。更にはやめたら良いことがあるというものすっごい大雑把だが魅力的ではあるメッセージ。


「くそぉ!勇者、辞める!」


結局は勇者を続けたらこの場で殺されるかもしれない可能性も考慮して、辞める物が後を絶たないのだ


このあとの良いことと言うのは隣のオバカ村の村人として穏やかに暮らせるといったものだがそれはまた後々語るとしよう。



落下した勇者が勇者辞める宣言をしたのを確認したはずのマヴォヴの顔は険しかった。

何故なら、そもそも今まで広間に勇者が辿り着いたことが無かったからである。


「これは由々しき事態だよなぁ…」


マヴォヴは頭をポリポリと掻きつつ呟く


「どうされましたか?」


少し大人びた感じの女の人が玉座に座るマヴォヴの方を向いている。


「ん?あんたか。えーっと召喚系の罠担当のモンサ」


「何か悩んでらしたように見えましたが…」


(とにかくアイデアが欲しいからな、彼女にも聞いておこう)


「こないだ広間に勇者が入ってきたのは見てるよな?んで今までそんなことなかっただろ?正直ここまで侵入されるのは結構マズイからそれを防ぐためのアイデア、あれば聞きたいんだけどさ」


このマヴォヴの言葉にモンサは色っぽい仕草で首を傾げつつ考え始める。


(そんな簡単には出ない、か…)



モンサは5分ほど広間を歩き回ったがその後急に早足で帰ってきた。


「何か思いついたか?」


マヴォヴが期待を込めて聞く


「えぇ!私の知識によれば、この罠が取り柄のこのお城、じゃなかったデビルスカルキャッスル…を強化するのにぴったりの人材がこの国にいます!」


どこから取り出したのか旅行ガイドブックのような書物のある1ページを指差すモンサ


「えー… 二、ニヒ?違うなニホ…ン…ニホン?聞いたことない場所だな?どの辺の国なんだ?」


この質問にモンサは何故かドヤ顔で


「この世界とは違う世界です」


と答えた。


「モンサはその違う世界から人を召喚する事はできるのか?」

ニヤリと笑いつつ聞くマヴォヴに


「この世界でそれが出来るのは私だけですよ」


とウインクしながら答えるモンサ



マヴォヴはその言葉に満足げに頷き、玉座に付いてる”ウォシュレット”ボタンを押す


「おぅふ!違った、こっちのボタンだ!」


再び、玉座に付いてる今度はシトゥージ呼出ボタンを押した。

すると天井が開いてシトゥージが降ってくる


「ご命令を」


マヴォヴは玉座に膝立ちしながら叫ぶ


「これより!罠に詳しい”ニホンの民とかいうの”の召喚に掛かる!急ぎ、準備をせよ!」


「「はっ!」」


シトゥージとモンサの返事を聞いたマヴォヴはまた玉座に座った。

結局、動く気はなかった



一方その頃

ニホンという国


「これで勇者7人目撃退ー!魔王も攫われるだけじゃなくて戦ってくれたら良いのになぁ…さて、次はバケツトラップとスパイクウォールでコンボしよっと!」


ある少年がゲームに興じていた















玉座に座っている魔王が罠を駆使して城にくる勇者をやんわりと追い返すストーリーを書くつもりにございます

なるべく緩い世界観で描いていければなと考えております

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