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《翌日 午前中 高塚屋支店》
店は休み。
臨時休業なんや。
オカンがアウトで、入院なんて最悪やざ。
私は今、高塚屋に来とるんや。
理由は私がオカンの代替えで、市役所の人と打ち合わせなんやざ。
少し話をして、代役としての挨拶をしたんや。
「テレビ映りええなあ」
市役所の人が、笑てるざ。
嬉しいような、恥ずかしいような。
「怪我の功名やの」
女将さんが言うたんや。
嫌やなあ。
はあー
「さて、今から現場を見に行きましょうか」
市役所の人が言う。
わざわざ、行くんかあ
まあ、あと五日後やけどな。
「大名閣の人らは、昨日見ましたざ。大変やったって、あーだ、こーだ……力入れとるんはわかるけど、ヤレヤレやざ」
市役所の人が、ため息やわ。
そうなんや、大変やの。
なんか可哀想には思わんわ。
じいちゃんから、楽なこと聞いとるから。
昔よりは厳しくなったって、言うとるけど他からみたら甘々やって。
《駅前西口》
寒いなあ。
外は雪降っとるざ。
福井駅前には二つの入口がある。
一つは東口、もう一つは西口や。
ガラスのドアで外と内を、仕切っている駅なんやざ。
それからあんまり大きい駅でないんや、振り向いたらすぐに入口があるみたいなんやよ。
西口近くに駅のショッピングモールみたいな場所があって、確か越前屋横丁って、変な名前でのそこに回転寿司、スーパー、お土産屋、コンビニなんてのもあるんやって。
人は疎らやけどな。
雪の影響か、元々人気ないんかは知らんざ。
「相変わらずの、湿気たとこやの」
女将さんが言うた。
私は苦笑いしとる。
まあ、確かにやけどな。
「越前屋横丁の、入口が今回の会場となります」
市役所の人が、愛想笑いしながら言うた。
へえー、ここなんかあ。
越前屋横丁の駅内入口前が、会場なんやなあ。
「地元商店街の、立体した場所ではないんやな」
女将さんが言うた。
もう少し、越前屋横丁の説明やな。
越前屋横丁は横長な場所でな、結構長いんや。
その横長の中間点辺りに、地元商店街へ抜けることの出来る道があって、そこから行き来が出来るんやざ。
因みに私が秋に、アオウザに行った時はこの道から行ったんやっての。
あん時以来やなあ。
「ここでブースを開いて下さい。因みに大名閣は、このブースの反対側でやります。テレビは福井ニコテレさんの、『夕方ただいま福井』の特別企画です」
そうなんやな。
なんやろ?
少し緊張してきたざ。
私はどうでもええつもりやったけど、周りは着々と用意しとるって。
もうすぐ、始まるやなあ。
「早苗さん、少しワクワクして来たざ」
女将さんが言うたって。
私もコクンと、頷いたんや。
気合入れて、がんばる!
よし!
外は相変わらずの、雪やって。
ただ、積もる感じではないざ。




