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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
とうとう二月 雪から雨に
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 《茶の間 副議長 早苗 時々じいちゃん》


 「副議長さん、こちらの羊羹の一つ切ってきました」

 そう言うと、一切れだけ羊羹を置いたんや。

 ヨモギ羊羹や。

 これは私らの情報提供やな。

 「へえー、お嬢ちゃん、この緑の濁ったやつか」

 「お嬢ちゃん……」

 あんたなあ、私はええ歳いっとるざ。

 「なんて呼べばええんや?」

 副議長さん、聞いてきたって。

 いきなりやなあ。

 「……お任せします」

 そう言うたざ。

 変なんは付けんや……

 「絶世の美人でええか?」

 「ダメや!」

 このじいちゃん、アホやろ。

 こんな恥ずかしいの承諾するか!

 「絶世で、ええんやな」

 「ちょっと」

 「ええやろ、ええやろ」

 なんや? 

 私、押されとるって。

 「助けてじいちゃん」

 助け舟をじいちゃんに言うた。

 するとじいちゃん、「巻き込むなや、早苗あきらめや」そう言われたざ。

 「えー!」

 「はい決まり、絶世ちゃん」

 「……」

 私は頭痛くなったざ。

 あー、話が反れる。

 本題に戻すでの。 

 「と、とにかく、食べてみてください」

 「うむ」

 副議長さんが、口に運ぶ。

 それも一口でや。

 おいおい……

 「これは美味いなぁ、かなり手強いって」

 顔がいきなり、引き締まったわ。

 結構ええ顔やん。

 じいちゃんやけどな。

 「ヨモギ羊羹です。三種類羊羹の一つやざ」

 「なるほどや、三つの羊羹の食べ比べやからな。因みに貴史坊主の三種類の一つはサツマイモや。持ってきてはないけどな」

 副議長さんが言うたざ。

 サツマイモ……

 「地産地消、やの」

 「そやあこらは、サツマイモ穫れる場所があるでな」

 副議長さん、言うたざ。

 確かにや、三国の近くにサツマイモ畑の場所がある。

 なかなか甘いサツマイモや。

 それに目を付けたんか。

 「実は食ってない。儂にも食わしてくれんのや」

 「秘密ですか?」

 「さあ、だけど間違いなく使うやろ。貴史坊主は頑固者やでな。使う言うたら使うで」

 副議長さん、言うたわ。 

 サツマイモかあ。

 私の考えとは、違うって。

 少し前にサツマイモは羊羹とは相性悪いと言うたけど、秘策があるんやろうか?

 とは言えや……

 「大名閣は二月十四日に、こだわってます。実は三国の篠原からも少し教えて貰いました。チョコがメインやろ」

 「ほう、貴史坊主いつのまにや。探る必要ないやろが! 確かにや、アホ社長はこの日や言うて周りの反対聞かんと走ってもたんや」

 やっぱりや、どうやらあこの社長は、ワンマン経営なんやな。

 「実力主義とか、コスト削減とか、改革と言ってオヤジのやってきたやり方を全部変えたんや。結果的に売上は伸びたんやけど、大名閣に軋轢が出来たんやなあ。嫁に愛想尽かされ、子供の半分に愛想尽かされた」

 ん?

 子供の半分?

 お嫁さん?

 「嫁は旧姓に戻して、中村になったんや」

 中村……ん!

 「下の名前、愛子さんですか」

 「絶世ちゃん、何でしっとるんや」

 ええー

 やっぱりや。

 お母さん、私のためにまさか!

 「なんや? ウラが思う程、桜井と高塚は鈍くないみたいや」

 「どうしてや? 大名閣の名前が付いてる店やったざ」

 「あこ、いったんか! あの店は慰謝料や。元嫁の願いでもあった。おそらく別れたけど、まだ未練あるんやろな」

 少しわかってきたざ。

 大名閣のことじゃないざ、私らのことや。

 お母さんが、動いてる。

 ひょっとしたら幸隆もや。

 それに……連クン、宮本さん、ひょっとしたら沙織あたりもなんかしとるかもや

 「絶世ちゃん、大名閣は手強い! けど、絶世ちゃんが一番手強いかもや」

 へ?

 私が手強いんか。

 「わかるわあ、あんたは絶世やしぃ」

 「絶世は、本当にやめてください」

 「やめんでの」

 満面の笑みやざ。

 くしゃくしゃの顔、じいちゃんそっくりや

 「遠い従兄弟やぞ!」

 じいちゃんのツッコミはいるざ。


 《夕方 晩ご飯》


 今日のオカズは、鯖の塩焼き、赤味のお刺身、油揚げの煮付けにたくわん漬け、味噌汁、ご飯やざ。

 因みに、ご飯と味噌汁以外は全てスーパーのお総菜やって。

 「そんなん来たんか!」

 オカンがたくわん、ボリボリ食べながら言ったざ。

 首を触りながらやけどぉ……

 なんか、はしたないなあ。

 「うん、情報を入れるために少しだけ漏らしたざ」

 私は、言うた。

 「祥子、幸次郎は信用出来る。もっと言うと、今は桜井寄りやぞ」

 じいちゃんが助け舟出してくれたって。

 「そうなんか?」

 オカンがお刺身食べながら、言うた。

 ん? さっきから、やたら首を気にしとるざ。

 「どうしたんや?」

 私がオカンに言うたんや。

 首のことや。

 「わからんけど、さっきから違和感あるんやって」

 オカンがご飯お代わりしながら、答えとるざ。

 食欲あるやから、大丈夫やろな。

 「とにかくや、後で報告や。今はご飯やぞ!」

 はいはい……

 全くやって。

 沙織は先に上がって勉強しとる。

 そろそろテストらしいざ。

 沙織、本当に勉強しとるかとうか?

 仕方ない、ご飯食べたら報告やな。

 報告、なんやけど……

 この後、大変なことになること私はまだわからんかったんやって。

 


 

 


 


 

 

 

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