表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
一月 雪は降る
87/120

87

 《翌日 運転中 》


 今、私は北倉のおばちゃんの店に、クルマを走らせてる。

 オカンを連れてやって。

 「北倉さん、店辞めるんやろ?」

 オカンが言うたざ。

 「そや、そのおばちゃんが閉める前に、挨拶したいんやって」

 「挨拶ならこの前、来たざ」

 「オカン、若いころよう焼きうどん食べたんやろ? おばちゃん店辞める前に、常連やったオカンにご馳走したいんやって」

 私は言うたわ。

 出所は、ばあちゃんなんや。

 ばあちゃんが、なんか企んどる。

 それに北倉のおばちゃんが、乗っかっとるんやろうな。    

 ひょっとしたら昨日のあの時、二人は結託したんやろか?

 ……とにかく、今はおばちゃんを目指そう

 

 北倉のおばちゃんが店を構える場所は、大きな幹線道路がある場所やった。

 人通りはなかなかある場所で、近くに大きな市民会館がある。

 その市民会館の裏側に、ひっそりした町があり住宅地になっとるんや。

 住宅地の市民会館の一番近い場所に、「北倉屋」と看板のある菓子屋があった。

 古臭い建物で、すこし住宅地からは浮いてはいた店やざ。

 「変わらんなあ」

 「ん?」

 「ここな、私が小さい時は、こんな家が密集しとらんかったんや。いつしか住宅地みたいになっとるけど、北倉屋さんはその頃からの雰囲気そのまんまやざ」

 オカンが懐かしむように、言うたんや。

 私が聞いた話やけど、ここは便利になるやろうからって不動産屋がたくさん土地を、購入したらしいんや。

 それまでは空き地が多かったんやて。

 その空き地で、みんなが遊んどった。

 オカンもその一人やろか?

 「北倉屋さんに行くよ」

 私がオカンに言うた。

 オカンは頷いたざ。


 《北倉屋駄菓子店前》


 クルマを北倉屋さんに停めると、北倉のおばちゃんが出てきたざ。

 「北倉のおばちゃん、久々やって」

 オカンがニコニコしながら、クルマを降りたんや。

 私もクルマから降りて、おばちゃんに頭を下げる。

 すると私の来た道の反対側から、ワゴンタイプのクルマが北倉菓子店に横付けしたって。

 大きいクルマやなあ。

 誰や?

 私は運転席を見た。

 ……あっ!!!

 亮さん! ん、隣に誰か居るって。

 ……え? 

 ……えぇ!!!

 お、女将さんや。

 「なんでアホが」

 オカンが言うたざ。

 「ワテが呼んだんやぁ」

 おばちゃんが、ケラケラ笑てるわ。

 私とオカンが、おばちゃんを見た。

 亮さんのクルマ、中でもなんか揉めとる。

 おそらく女将さんが、クルマを動かせ言うとるんやろな。

 「あらあら、全く! 祥子ちゃん待っててや、逃げるほど弱くはないやろ」

 おばちゃんが挑発的に言うたざ。

 オカンが、ムッとしとる。

 「ええ子やな……さてと」

 おばちゃんがゆっくりと、亮さんのクルマに近づく。

 歳が歳やで仕方ないけど、足取りはしっかりしてるって。

 クルマの女将さんに近い場所から、おばちゃんが何か言うとる。

 フロントの窓ガラスが開いとる……ううん、亮さんが開けたんやろな。

 運転席から強制的にや。

 おばちゃんと女将さんが、少し話しとる。

 話しとったんやけど……女将さんがクルマから降りて来たんや

 おばちゃんはニコニコしとる。

 おばちゃんが女将さんを連れて来ると、私に話かけたざ。

 「はい、早苗ちゃん、さいなら!」

 ……へ?

 「早苗ちゃん、お迎の電話あるまで、さいなら」

 えー!

 「亮ちゃんも、快くさいならするで」

 「おばちゃん」

 女将さんがなんか言いかけて……止めたざ

 オカンもどこか、しどろもどろしとる。

 なんやろ?

 私はおらんのがええんか?

 ……うん、ここは

 「おばちゃん、お願いしますざ」

 「はいはい」

 おばちゃんは相変わらず、ニコニコやって。

 「さて、お二人さん! 中へや。ここが息子らに壊される前に、密やかな三人だけのパーティーやでの」

 「……」

 「……」

 おばちゃんの言葉に、オカンと女将さんは少し顔をしかめとるざ。

 けど……ここは任してみっざ

 おばちゃんが店中に、二人を入れたわ。 

 もしかしたら……

 

 《店外 私 亮さん》


 「亮さんお疲れ様やの」

 「いえ、北倉さんから電話で、『お別れの挨拶したいんやけど体が悪いから、連れてきてや』言われたんです」

 「……亮さん、知っとるやろ。高塚屋と さくらい が揉めとるのをな。もしかしたら、おばちゃんは……」

 「そうやろな」

 「はい、亮さん、ここはおばちゃんに任せようの」

 「……そうやね、俺はいったん、店に戻りますわ」

 「じゃあ、私もや。おばちゃん、まかいたざ」

 

 


 


 


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ