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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
一月 雪は降る
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 《翌日 高塚屋 オカンと訪問》


 私とオカンは、高塚屋本店のテーブルスペースにいるんや。

 高塚屋は本店、支店、どちらにもお菓子を食べれるスペースがあるんや。

 美味しいお茶も出てきて、私らは女将さんを待っとるんや。

 私らは最後の羊羹を持って来たんや。

 最後の羊羹……それは私らが普通に食べとる羊羹なんや。

 これで揃ったんや。

 私は期待を顔に出して待っていたざ。

 「早苗、あんたは流石にや」

 珍しくオカンが褒めたわ。

 明日は大雪かも。

 

 「お待たせしました」

 女将さん登場や。

 ……一人だけかあ?

 出来たら旦那さんとか、長男さんとか、絵理ちゃんとかおたらなあ。

 高塚ファミリーの紹介はないみたいや。

 女将さんが椅子に座る。

 相変わらずの、和服姿にそそられるざ。

 「早苗ちゃんは、和服着んのか? 似合いそうやけど」

 ありがとうや。

 着てみたいななあ。

 「ところで、女将さん、あの羊羹どうでした?」

 「祥子ちゃん、あのバナナ羊羹な好評やざ。始めは目ひん剥いてたんやけど、創らせて食べたらおいしかったのオンパレードやざ。ヨモギ羊羹はコレは美味しいってなんで気づかんかったんやろなぁ」

 女将さん上機嫌やって。

 ようやくここまで、来たって。

 「女将さん、最後の羊羹やけど、最後はこれや」

 私が羊羹を開けようとしたんや。

 けど……

 「早苗ちゃん、それは?」

 「羊羹です」

 言うたのは、オカンや。

 そう私らは、家の羊羹を持ってきたんや。

 「……祥子ちゃん、この羊羹を出すんか?」

 女将さんが、言うた。

 「そうやざ、この羊羹は私らの羊羹や。この羊羹を合わすんやざ」

 オカンが返事を、返したんや。

 返したんやけど……女将さんの様子が可笑しいって

 「祥子ちゃん、これは戴けんざ」

 「え?」

 私とオカンは、顔を見合わせたざ。

 そして女将さんを見たんや。 

 「早苗ちゃん、ヨモギ羊羹とバナナ羊羹、最後に普通の羊羹を合わせて三種類の羊羹、その発想はええざ。けど、普通の羊羹がなんで さくらい の羊羹なんや?」

 「え?」

 「最後の羊羹は、高塚屋の水羊羹やざ」

 女将さんが、パチンとテーブルを叩いたって。

 私はびっくりした。

 けど女将さんの言うてることが、わかったって。

 この前、「その店の個性」と言ったことを、今気づいたって。

 独自の甘さがあると言いながら、独自の甘さをおろそかにした私がおったんや。

 その店の個性……つまり、私は さくらい その物を女将さんに差し出しとることになるんやって

 「由美子ちゃん、最後はコレで私は行くざ!」

 オカンが強く言ったざ。

 私は困惑しとるのに……

 「祥子ちゃん、なんでや?」

 「由美子ちゃん、あんたな早苗に知恵借りすぎや。早苗かて、大変なんや」

 「そこは任せとけ、言うたんは祥子ちゃんやろ!」

 「そや、だから、ここも私らに任せてや」

 オカンの声が大きくなった。

 けど女将さんは……

 「アカンざ、ここは高塚屋の羊羹でいくで」

 折れる気配がないんやって。

 「なんやってか!」

 オカンがテーブルを、パチンと叩いた。

 店の中が慌ただしいくなった。

 アルバイトさんとかが、青ざめて見とるわ。

 お客さんも困惑しとる。

 「オカン! それに女将さん、今日はここまでやざ。この続きは……」

 「早苗、帰っざ! こうなったら、さくらい だけでも戦うざ」

 えー! オカン!

 声に出さんかった。

 けど凄い顔で、私に言うたざ。

 「祥子! あんたなあ」

 「うるさいわ、アホ由美!」

 ……私はこの険悪な二人を、ただ見ているだけやった

 こんな結末は、予想つかんかった。

 

 最悪や!


 ここまで、来て……仲間割れなんて!

 

 

 

 

 




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