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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
五月始め 
8/120

8

 《帰宅》


 「遅かったなぁ、何をしてたんや?」

 オカンが眉をひそめてるって。

 「……たまには、ええやん! 鯉のぼり見てたんや」

 半分、本当を言うたわ。

 半分は……めんどくなるから、黙っとこ。

 「全く! 職場放棄やで」

 「ごめんや」

 ここは素直にや。

 「……」

 「どうしたん?」

 「はよ、店番しいや」

 オカン、いきなり静かになったわ。

 まあ、変に詮索されるよりはましやで、ヨシとしとこう。

 

 《夕方 ご飯時》


 いつものように、スーパーの惣菜やって。

 メニューは、筍の煮付け、白身魚のフライ、トンカツや。

 テーブルには、いつもの顔ぶれ。

 一人は県外にいるは、説明済みやな。

 今日はいつもより、言葉数が少ないわ。

 なんやろ?

 牽制しとる感じやって。

 そして沙織は、チラチラと私を見とるし。  

 オカズ狙とる……ことは無さそうやけど。  

 「早苗、男出来たんか?」

 ばあちゃんのいきなりの一言に、飲みかけの味噌汁を吹いてもたって!

 「あー汚いって、ねーちゃん」

 沙織が眉をひそめて、オカズを両手でブロックしてるやん。  

 コイツ、失礼な。

 「早苗、相手の勤め先は?」

 オカンが目を光らせて、聞いてるって。

 「どうしたん? 私、知らんざ」

 みんなに、大きな声を出してもたって。  

 変なこと言うんやから、当たり前やな。

 「早苗、あんたが素直に謝る時は、なんかあるんやって。今日、素直に謝ったやろ」

 オカンが言うたわ。

 なんかある……あるな。

 鯉のぼりの男や。

 確か……松浦 孝典さんやったっけ?

 心臓が、激しく鼓動を打ち始めたわ。

 顔が熱うなって来たって!

 「何にもないわ! 変なこと考えんといてーや」

 私はご飯を胃袋にかき込むと、部屋に戻ったわ。

 もう!

 



 「なんかあったなぁ、香奈や」

 「はい、陽一郎さん」

 「ねーちゃん、嘘つけんなぁ」

 「早苗の良いところや、なあ祥子」

 「相手は……ええとこの男やろうな!」


 《部屋の中》


 私の部屋は、いえの一番隅の日当たりが良くない部屋なんや。

 少し前までは三姉妹がいっしょに、違う部屋やったんやけどオカン達がケジメと言う理由で、隅に追いやらたんやって。

 一人の部屋を最初は喜んだけど、しばらくしたらどこか物足らんのに気付いたんや。

 だから事あることに、沙織の部屋におじゃましているんやけど……今日は大人しく一人でいるわ。

 沙織は結構なスピーカー娘やで、広まるのが怖いんやって。

 「ねーちゃん、入っていいか?」

 沙織の声や。

 断る……止めた。

 変に断ると、ますます変になりそうやわ。

 「なんや、入ってええざ」

 私は了解をしたわ。

 沙織は、すげすげ入ってくる。

 ニヤニヤしいなや!

 しいなや! は、するな! のことやざ。

 「ねーちゃん、居るんやろ?」

 沙織、いきなりの言葉やって。

 タレた目が、ますます下がっるわ。

 「沙織、目がタレてなくなってまうざ」

 私、真顔で言うたわ。

 「あっ、失礼な! ネーチャン、目が大きく見開いてるざ。ネーチャンの目が開く時はいつも隠し事があるんやってのぅ」

 ……あのオカンに、この沙織や。

 よう似とるわ。

 私はこんなんではないざ!

 「はいはい、部屋に帰った帰った!」

 「ちょ、ネーチャン!」

 言いたげな、沙織を追い出したわ。  

 今の沙織は、疲れるんや。

 「早苗、風呂はいらんか?」

 オトンの声や。

 ……ここは素直に、入っておこっと。

 「わかった、入るわ。沙織、先に入るで」

 私、部屋を出たって。

 

 「早苗、風呂入っとるな」

 「陽一郎さん、娘の風呂やで!」

 「わかっとるわ」

 「……沙織や、うまくいったか?」

 「うん! ばあちゃん、早苗ねーちゃんのスマホ」

 「ヨシ、ちょっと貸してな」

 「お母さん、どうするんや」

 「……よし、戻しといて、沙織、はい小遣い」

 「ありがとう、返しとくでの」


 《風呂上がり》


 うーん、いいお風呂やったわ。

 お風呂の実況はないざ!

 疾しいことを考えたらあかんでな。

 さて部屋に入って、髪を乾かすとしますわ。

 ……あれ?

 スマホの位置が、少し違うような…… 

 うーん、違和感があるんやけど……

 まあ、気にせんとこか。

 明日、松浦さんいるかな?

 ……行ってみよ。

 また、変な詮索はイヤやけど、松浦さんが頭から離れられんのや。

 あの優しい笑顔、哀愁感漂うオーラ…… 

 アカンアカン、また顔が熱うなって来たって。

 早よ、髪乾かさな。

 明日が待ち遠しいって。



                  

 

 



 

 

 

 




 

 



 

 

 

 

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