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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
一月 新年の始まり
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 《近所のスーパーにて 午後》


 私は今、スーパーに来とる。

 別に買い物しに来た訳ではないざ。

 少しアイデアがないか? と、ぶらぶらしとる。

 おそらく大名閣は、チョコとのコラボや。

 さて……私はどうする

 

 近くのスーパーは、比較的大きいんや。

 最初の最初で、桜井の道案内したあこなんや。

 人は疎らや。

 朝から降る、激しい雪の影響がある。

 近くのスーパーやから、ブーツ履いて歩いて来たけど、クルマはアウトやわ。

 私の家にも今年始めて、除雪車が走った。

 除雪車言うても、小さい道やから、ブルやけどな。

 ブルは、ブルトーザのことやざ。

 両脇に雪の塊をたくさん作っていくから、迷惑なんやけど……

 じいさんと、オトン、沙織、私の四人で何とかしたわ。

 それにしても、こんな大雪久しぶりやなぁ。

 

 ほぼ貸し切り状態のスーパーに、私は歩いとる。

 正直寒!

 食いもん扱っとるから、寒いって。

 色々、物色しとる。

 買う宛はない。

 買い物カゴは、一応持つ。

 ダミーみたいなもんやけど。

 「あら、早苗ちゃん!」

 私の斜め後ろから、声がしたざ。

 誰や?

 あっ、藤田のおばちゃんや。

 前歯のない笑顔が、どこか愛くるしいなあ。

 このおばちゃん、細身なんやけど……

 雪だるまみたいになっとるって。

 着込み過ぎやろ。

 おもとないんか?

 重たくないんかのことな。

 方言やでの。

 あっ、それはそうと大事なことを言わな。

 このおばちゃんから、キンカン瓜もらたんや。

 覚えとるか?

 夏の菓子フェアのこと、店で咲裕美が接客しとったあの人やよ。

 「今日は何買いに来たんや」

 おばちゃんが言うたわ。

 「まあ……いろいろかな?」

 曖昧な答えで、私は苦笑いやって。

 だって予定がないんやで。

 アイデアの為の見回りなんて、言えんやろ。

 「ほかほか、聞いたざ。水羊羹対決」

 おばちゃんがいきなり切り出したざ。

 え!

 私、驚いたざ。

 「昨日、家のジジイが大名閣通ったらしいんやけどな、なんか派手なのぼりがあったんやて、羊羹対決やって」

 ……大名閣

 ため息しかでんわ。

 「まあ、今の大名閣はアホやでの」

 おばちゃんが、ゲラゲラ笑てるわ。

 あはははは……私も笑うしかないざ

 「なあ早苗ちゃん、水羊羹は福井の心や。進化も大事やし、基本も大事やざ。けど私らがいつも口にする羊羹は、私らの誇りやざ。それを忘れたらあかんざ」

 おばちゃんが、言うた。

 誇り、かあ。


 《和田さんのビル》


 藤田のおばちゃんと、話してた時にスマホが鳴ったんや。

 相手はオカンやって。

 「和田さんのビルに、水羊羹を配達してほしい」って、かかって来たんや。

 そんでもって、和田さんとこい行ったわ。

 いつものドアをノックすると、中に入り込んだわ。

 いつもは何人かの従業員は、外回りしとるのに今日は、中で待機しとるわ。

 やっぱり雪がひどいからや。

 正直、私も配達したくなかったんやけど……

 お金儲けやでなあ。

 「こんにちは、桜井です。はい丁稚羊羹です!」

 私は笑顔や。

 みんなが笑てるわあ。

 「お疲れ様です」

 和田さんが笑てる。

 和田さん、かなり溶け込んだみたいやな。

 春先とはどっか雰囲気が違うざ。

 福井人の付き合い方がわかったんか?

 「はい丁稚羊羹、和田さんありがとうございます」

 「いやいや、これはここの所長からですよ」

 硬い和田さんが、言うたわ。

 やはり少し表情がちゃうざ。

 慣れたみたいや。

 「なあ!」

 いきなり肩を叩かれたわ。

 どっかのおばちゃんや。

 初めての人やわ。

 「桜井さん言うたら、大名閣と対決するとこやろ」

 おばちゃん、言うたざ。

 これは大名閣からココが近いから、やはり……やな

 やれやれ……

 「桜井の水羊羹、美味しいざあ。頑張ってな」

 え! ホント!

 「ありがとうや」

 私は笑たわ。

 なんか活力、貰たわ。

 ……ん?

 和田さんが、少し表情がちゃう。

 なんやろ?

 「どうしました、和田さん」

 私は小声で、聞いたわ。 

 他のみんなは、羊羹に舌鼓うっとる。  

 ある意味二人やざ。

 「じつは、大きな声では言えませんが、福井の水羊羹は味が薄いです」

 小声で言ったって。

 なるほどな。

 私はあまり、驚かんかったわ。

 「わかりますざ、実は……」

 私は正月の話をしたって。

 県外の人には、福井の水羊羹は水臭いことをや。

 「なるほど、これは対決のアドバイスです。平日の場所が駅前ですよね。ターゲットを絞ってみてはどうでしょうか」

 「ターゲット?」

 私は聞いたわ。

 「ここてば話辛いですね。明日、私は松浦商事に行きます。松浦課長に逢います。因みにお二人の仲も知ってます」

 あはははは……

 「そこに来て下さい。私なりのシュミレートを教えます。私は桜井さんの味方です。ここまで、事務の人たちと親しくなれたのは、桜井さんのおかげだと思ってます。福井の人の耳の痛い話もするのでここでは言えませんから」

 なるほどやな。

 「わかりました。明日、幸隆の許可を得ますから、そこでお願いしますざ」

 私は言うたざ。

 和田さんは、頷いてくれたわ。


 《帰り道 クルマの中》


 相変わらずの、ひどい雪やわ。

 ワイパーが、効かんざ。

 福井の道は、車幅に余裕がある。

 これは雪対策なんや。

 両脇に雪ゆ避けても、クルマが走れるようにつくられとるんや。

 行き交うクルマは少ないわ。

 あまりの雪は、人を引きこもらせるって。

 私も今から、引きこもりや。

 明日は回復する。

 天気予報が言っとったから。

 さてと、明日は幸隆のとこや。

 和田さんのシュミレートってのを、聞いてみるわ。

 これは対決に、クスリかどうかは……

 とにかく明日や。


 

 


 

 

 


 

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