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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
一月 新年の始まり
74/120

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 《土曜日 明け方》


 製造室に私とオカン、ばあちゃんが菓子を創っているざ。

 正月気分はもうないわ。

 餡造さんは、今日も絶好調やざ。

 え? 誰やって?

 ずーっと前に、説明したやろ?

 ……機械や

 なんか素っ気ない言い方やわ。

 「機械やざ! 早苗は機械と結婚する気なんか?」

 ばあちゃんのが言うた。

 「するわけないやろ!」

 私はムキになる。

 「早苗、私語は慎めや、お母さんも早苗ほっといてや」

 オカンが冷めた目で、私を見とるざ。

 怒られた……見事なくらいにや

 ところで、私等はいま水羊羹を創っとるんや。

 他のお菓子は、まだ残っとるし消費期限もあるからそのままらしいざ。

 冬は寒いから、更に福井ほ雪まで降るから、今の時期は日が持つらしいって、ばあちゃんが言っとったなあ。

 ただ羊羹は、別やざ。

 さてと創り方やけど…

 小豆を煮て、餡造さんに潰して貰って、型に流す。

 大雑把な工程や。

 えっ? 大雑把過ぎるて!

 まあ許してや。

 私なあ細かい言ったら、きりがないから止めとくんやざ。

 私の説明、正直下手くそらしいから……

 「早苗、黒砂糖とってくれんか?」

 オカンが言うたざ。

 私は黒砂糖の入った容器を、渡したわ。

 黒砂糖のコクと、独特な甘さが水羊羹には必要なモンやわあ。

 「なあオカン、大名閣に小豆じゃなく、黒砂糖を止められたら大変やったやろうなあ」

 私はオカンに言ったわ。

 因みに私等は、完全武装しとる。

 顔にはもち、調理用マスクを付けとるでな。

 「確かにや、それに気づかんのは、大名閣の主の知識不足かもしれんなあ」

 オカンが鼻笑いしとるわ。

 大名閣……なんか勝てるかも

 


 《昼 幸隆とデート クルマの中 休息中》


 私は幸隆と、三国に来とるんや。

 三国は三国町言うて、坂井市にある港町なんやざ。

 ポートハウスはここにあっての、越前ガニも有名やなあ。

 つまり、お決まりのデートコースなんや。

 今日もカニは……

 「今日はカニ食わんぞ! カネがいくらあっても足らんでな。それにポートハウスも行かんでな」

 やっぱりか……ん?

 「ポートハウス、定休日ちゃうやろ」

 「あこは一月は営業せんのや。海が荒れるがカフェには絵にならん、冬は客入り悪い、そんな理由でや」

 なるほど、あの店なりの考え方なんやな。

 けど儲からん店やなあ。  

 売り上げ、ど返ししとる。

 「オーナーは、金儲けより、生きがい重視らしい。昔は死ぬほど働いたから、好きなことをやりたいらしいわ」

 幸隆が言うた。

 なんか、ええ生き方や。

 一月の上旬、天候は晴れ。

 師走の雪が嘘みたいに、雪が降っとらんのや。

 「早苗、今からある店に行くざ」

 幸隆が言うた。

 「ある店? もったいぶるなや」

 「……わかった、篠原の次男が経営する洋菓子屋や」

 へえー……え!

 私は幸隆を見たわ。

 「篠原 貴史の店や」

 私は声が出んかったわ。

 「アイツの家な、複雑なんや。混迷しとるんや。俺も早苗と大名閣の今を知ってはいるけど……少しアイツの話も聞いたってや」

 「いつから知り合いなんや」

 私は聞いたわ。

 「大名閣と俺の家は、元々付き合いが長い。だから小さい時からよく顔も会わせてた。篠原の家は、兄弟がいっぱいおるが、アイツは少し距離を置いているんや」

 「……で?」

 「少し話してやってくれんか、アイツから情報を聞けるかもや、そのかわり桜井の情報も漏れるかもしれんけどな」

 幸隆が言うたわ。

 これ、デートちゃうやろ!

 ……とは言ってもや

 「今度、ええとこ連れて行ってくれるなら、会ってあげるざ。正直、これデートちゃうやろ!」

 心の声が、口に出たわ。

 「決まりやな! 今度も大丈夫! さて行こうか……一応俺はずっと寄り添ってるでな。早苗はモテるから捕られんように!」

 ウザ!

 声に出ず、顔に出したわ。

 「ほな、いくざ」

 幸隆がクルマを走らたわ。

 さて会ってやるか!




 






 

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