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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
一月 新年の始まり
73/120

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 《三日 夕方》


 私は、少しショックやった。

 出所はおばちゃん二人と、咲裕美なんや。

 ショックを受けたのは、私だけやない。

 オカン、ばあちゃん、沙織もや。

 「おい、ウラは?」

 「お父さん、僕らは居ないとしましょう」

 じいちゃん、オトンがなんか言っとる。

 さて、本題やざ。

 何にショックを受けたんか?

 それは家の水羊羹を食べた時やったんや。

 

 《夕方 これより少し前 ご飯中》


 この日の晩ご飯は、すき焼きやったわ。

 スーパーは今日から、営業しとる。

 そのスーパーから、外国の安い肉をたくさん買うたんやって。

 国産は?

 そうオカンに聞いたら……

 「安くたくさん買えんやろ!」

 そう答えたわ。

 まあ、確かにやわ。

 「お姉さんのすき焼き美味しいわあ」

 言うたのは、加奈子おばちゃんや。

 明子おばちゃんも、頷いてるわ。

 因みに今年は、両方のおばあちゃんはおじさんと、子供らを連れてきとらんのやわ。

 両方のおじさんらは、正月明けすぐに仕事らしいし、子供らはもうええ歳やから、田舎に来たくないらしいわ。

 福井は田舎かあ。

 ……田舎やな

 それにしても……おばちゃんの食欲ときたら凄いわ。

 遠慮なしやざ。

 これは外国の肉で、正解やって。

 さすがは、オカンやわ。

 やっぱりポンポコの姉やわ。

 ……説明しとる場合やないわ、肉や肉!


 食後、みんながお腹おさえて、ニンマリしとる。

 よう食べた……

 顔見りゃ、わかるやろな。

 「さて、うちらの羊羹やざ」

 ばあちゃんが、たくさんの羊羹を持ってきたわ。

 作り置きのやつやざ。

 まあ大名閣とのこともあり、みんなで味見となったんや。 

 「お母さん、ありがとうや」

 「ありがとうごさいます」

 「わあ、羊羹や」

 加奈子、明子、差裕美が感動しとるわ。

 まあ県外の三人や。

 咲裕美はまた福井に戻ったとしてもや。

 みんなに羊羹を分けると、みんなで甘いモンを食べたわ。

 水羊羹と言っても、結構しっかり作られて、スプーンに少しの抵抗があった。

 近頃の水羊羹は、しっかりと作られているんや。

 それでも、口にいれたら柔らかい小豆の甘味と、黒砂糖の後味が程よく合っているって。

 口当たりがよく、たくさんいつの間にか食べていたわ。

 やはり水羊羹は、最高やわ。

 「美味しいですわ」

 加奈子おばちゃんが言うたわ。

 加奈子おばちゃんがまた羊羹に、手が伸びるわ。

 「本当やが、この味の甘さの薄い羊羹は、最高やな」

 明子おばちゃんが、笑顔や……ざ

 ん?

 「ホンマやなあ、福井の薄味羊羹、ええわあ」

 加奈子おばちゃんの屈託のない笑顔……

 それを私は驚いて見てるんや。

 「なあ、加奈子おばちゃん、明子おばちゃん、薄いってなんなんや?」

 私は聞いたわ。 

 すると、思いもよらない相手から、言われたんや。

 「早苗姉ちゃん、福井の水羊羹な他から見たら味が薄くて、甘さが足らないんや。これは私が県外出てわかったんや」

 咲裕美や。

 咲裕美に言われたわ。

 あんた、私かて一応、県外の菓子学校に行ったんやぞ。

 けどそんなことは思わんかったぞ!

 とは言え、ばあちゃんも、オカンも、沙織も驚いているわ。

 ……ん?

 なんやろ?

 じいちゃんとオカンは、平々凡々しとるざあ。

 私がオトンと目があう。

 すると、オトンが言うたんや。

 「早苗、水羊羹は、丁稚奉公の手土産で貰った羊羹から来ているのは知っとるやろ」

 「うん、それが?」

 「お前、和田さんにも説明したやろ! 羊羹に水でのばして寒天いれて冷やし固めたのが、福井の羊羹の始まりやって!」

 あっ……なるほどや

 そや、だからなんや。

 水羊羹は、甘さ控えめなんは。

 つまりそれが、福井の始まりでそれを私らが潜在的に、守っているんや。

 けど福井の土地を離れることで、違う場所の刺激が入ってくるから、客観的に物事を見ることが出来るようになったんや。

 そうなった時の答えが、福井の水羊羹は、甘さ控えめで薄い味になったんやと私なりに解釈したって。

 「祥子姉ちゃん、福井の水羊羹はな福井でしか流行らんのや。羊羹対決はどこで対決するかはわからん。わからんけど、周りから受けるためには、福井の伝統を護りつつ、新しい羊羹を作ることが必要かもしれへんで!」

 加奈子おばちゃんが、結論を言うたわ。

 ……新しい

 そして、残すモノ!

 これが私の創る羊羹なんかあ?

 なんやろ?

 とてつもなく、大変やざ。

 「早苗、お前に任すざ」

 言うたのは、ばあちゃんや。

 私がやな顔しとると、オカンまで……

 「早苗のやこい頭の出番やな」

 笑とるわ。

 ……やっぱり、私が考えるんかあ?

 はあ……気が思いざあ

 

 外は晴れやかな、空やわ。

 冬の空とちゃうって。

 清々しい、寒さや。

 それに対して、私は顔は笑ってるけど、心は真っ青やざ。

 またまた、私が考えるんやなあ。

 ……はあ

 

 《寝床にて》


 私は眠れんかったわ。

 明日からは、またお菓子やのに……

 まあ、頼られるだけマシっと、思うしかないなあ。

 ……寝よう

 無理に目を瞑り、明日を迎えるざ。

 けど……なんか……ショックやった

 福井の水羊羹は、味が薄いんかあ。


 

 

 

 



 

 

 

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