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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
十二月 雪の予感
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 《朝、製造室の外》


 「どう言うことや?」

 オカンがスマホから、大声を上げているんや。

 何でか?

 実は羊羹用の小豆が、こないんや。

 今年は生産者が、不作であまり供給出来ないって昨日、言うてきたんやざ。

 それも夜遅くや。

 「羊羹の小豆は、あそこと決めてるんやざ。聞いてないざ……え? カネは返す? そんな……コラ切るなや」

 オカンの大声が、家中に響くって。

 「オカン、高塚屋さんに電話してや。まさか!」

 オカンが思い出したように、コクンと頷いたんや。



 《午後 高塚屋支店にて》


 高塚屋の支店にお邪魔しとる。

 今回はオカン付きやって。

 高塚屋では、店でお菓子と抹茶が飲めるスペースがあるんや。

 店の中から見る窓の外は、晴れや。

 今まで冴えない天気やったから、本当ならすがすがしいはず……なんやけど

 「やはりかあ、そっちの小豆もか」

 オカンが言うた。

 「ほやって、理由は契約農家の事情らしいけど」

 女将があきれながら、言うたわ。

 決まりやな。

 とうとう圧力がかかったな……

 桜井の小豆と、飯塚屋の小豆は、同じ業者で確か北海道産らしいんや。

 いやほとんどは、北海道産やろな。

 だって全国生産の八割は、北海道なんやから。

 つまり契約農家の事情って理由は、可笑しいんや。それやったら、違う農家に頼めばええんやで。

 悔しいざ。

 これは間違いない。

 「大名閣やな」

 意見が一致したざ。

 「汚い手やな!」

 オカンが饅頭頬張りながら、言うた。

 「高塚屋さんの小豆は、羊羹用で取ってるんか?」

 私は聞いたんや。

 「そやざ、桜井もやろ。まあ、ほかの小豆を止めんかったのはやさしくなんやろか」

 「由美子ちゃん、ちゃうと思うわ。もしこれで勝ち目がないと感じたら、他も止めるかもや」

 「大名閣め、やりすぎやざ。訴えたろか!」

 女将がキレかかっとる。

 私はこの前の、幸隆の言葉が耳に蘇ってきたんや。


 大名閣は何でもするざ!


 そんな言葉やったはずや。

 あん時は笑ってたけど、笑い事ですまん用になったわ。

 とは言っても、幸隆には迷惑かけられん。

 ここは私でなんとかせな。

 「とにかく、他の業者を辺りましょう」

 私は言うたんや。

 「簡単に言うなって!」

 オカンが怒るわ。

 「そやざ、他の業者って言うても、いい小豆が手には入るかわからんのやざ。それな、他もやられているかもや」

 女将も言うたわ。

 「こんなん、不公平やざ。法律で違反になるやろ」

 「早苗、そんな証拠はないんやざ」

 オカンが言うた。

 そんなぁ……

 「とにかくや、まずは私のお父さんをあたってみるわ由美子ちゃん! これでも市役所では顔効くし、市議会副議長の大名閣のアレとも遠いけど、従兄弟らしいでな」

 オカンが席を立つんや。

 そして……

 「早苗、帰るざ」

 オカンが言うたわ。

 女将さんも、「今日の所はここまでや」って言うたからこのままお開きになったんや。

 なったんやけど……

 凄い悔しいざ!

 正々堂々を知らんのか!

 アホたれがあ



 《帰宅後 オカンと沙織》


 「オカン、お帰り」

 「沙織、大変やわ」

 「聞いたって、大名閣め!」

 「まあ、なんとかするわ。だから……」

 「だから?」

 「明日の連くんのデートは楽しまなあかんざ、惚れた男は手にいれな」

 「えーもう、オカンたら! さて、期末試験の勉強や。明日が最終日やで、はよ試験終わらせて連クンとデートや」

 「沙織、がんばれや」

 「わかったって!」

 

 《沙織が部屋に行く》


 「さてと……沙織の口の軽さに期待しよ。早苗は嫌がるはずやから」

 



 


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