表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
十月下旬から十一月
60/120

60

 《オカンが茶の間から消えて……》


 ようやく静かになったざ。

 疲れたって……

 何を考えとんや?

 「スミマセン、お母さん」

 私は謝ったって。

 「アハハハ、気にせんからええざ。あんなタヌキ女の鳶が鷹を産んだようなオバチャンは!」

 ……話がそれるわ、オカンの話は出さないようにせんとこ。

 ヤギも首を振っとるわ。

 アカンざ、アカンざって!

 ……さてと、本題やざ。

 「お母さん、聞かせてもらえんですか?」

 「ん? 何をやの」

 お母さんが笑いながら、言うたわ。

 「幸隆のこと、そして私をどう考えているかです」

 「まず、早苗さんは、美人やなあ。孝典、幸隆を翻弄しただけのことはある。孝典は聞いとるとは思うけど、あんな子やった。あんな子が、一目で好きになったって言うとった。そして、後悔もしたんや」

 お母さんがここまで言うと、お茶を飲んだわ。

 ふーっとため息を吐くと、続きを喋り始めたんや。

 「後悔ってなんやと思う? 孝典が幸隆に代行したことなんやわ」

 「代行!」

 「美術館の時や、孝典なあ、その時は体調が良くなかったんや。ひょっとしたら、この頃から信号が出とったんやろな」

 私は視線が下に向いとった。

 お母さんの、湯のみ茶碗をみていたんや。

 「その時に孝典は、幸隆に代行を頼んだ。幸隆は嫌な顔しとったなあ、いつも貧乏くじばっか孝典から貰っとったからや。渋々と承諾したけどな」

 それが私と幸隆の始まり……

 「デートから帰って来た幸隆に、私はビンタしたって!」

 「え?」

 私は大きな声を上げたって。

 自然に視線が、お母さんを見たんや。

 「幸隆な、「ノリは間違いなく死ぬんか?」なんて言うたからやざ」

 「えー!」

 「早苗さん、幸隆なあ一目惚れしたんやざ! そしてなあ、「幸運が巡ってきた」なんてはしゃぎおるから、目を覚ましたったんや」 

 はーっ、そんな感じでため息を吐いたざ。

 けど、どこか笑とるんや。

 「八月のあん時、早苗さんと初めて会った時や、私が「わかるわあ」そう言うたの覚えているかぁ? これな、幸隆をビンタした時にな、この子はなんてアホな! と思たんやけど、理由がわかったからやざ」

 そうやったんか。

 なんか、わかったんやって。

 「幸隆は正直、松浦の跡取りには向かんのや。正直過ぎてや。お人好しなとこもあるしな。けど努力は惜しまない子や。早苗さん、幸隆を認めてくれんかぁ」

 「認める? 何をですか?」

 「幸隆をや……後は、幸隆に会って……やざ」

 ニッコリとお母さんが笑ったわ。

 ええ笑顔やざ。

 後は私なんやなぁ。

 廊下から足音がするざ。

 ドタドタした足音は、間違いなく……

 「さてと、お菓子ですざ!」

 やはり、オカンやわ。

 タイミングがええなあ。

 まさか! 計ってたか!

 オカンが私を無視して、お菓子を置いたんや。 

 置いたんやけど……ん? なんやこれ

 お多福の形した、クッキーみたいな菓子や。

 「今日はな、高塚屋の女将からもろた菓子や。これは敦賀の仲ようしとる和菓子屋から貰う菓子でなぁ、豆落雁やざ」

 オカンが言うたって。

 豆落雁かぁ。

 聞いたことはあるけど、始めて見たって。

 「細かい詳細は、せんから早よ食べてや。お連れのアンタも食べてな」

 そう言うと、新しいお茶が来たわ。

 じいちゃんが、挨拶して置いてってた。

 「あら、おいしい!」

 「そうやろ、豆落雁ええやろ」

 「タヌキが好みそうやなあ」

 「ゆっくりしててなぁ、剥がれ落ちても大丈夫やで」

 ……また、始まるんか

 止めた止めた、キリがないわ。

 それよりも、今は幸隆や。

 私は幸隆を愛した……と思うんや

 幸隆の気持ちを、もう一度見てみよう。

 そして……やざ

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ