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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
十月下旬から十一月
59/120

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 《家中 午後》 


 松浦のお母さんを家に通したんや。

 始めは、「え?」としておったけど、オカンからも進められて入ってもろた。

 今はお茶を飲んでもろとるんや。

 「ええ感じやな」

 お母さんが、不思議そうにしとるわ。

 「奥様!」

 ヤギもいたんやった。

 「とって付けんといて下さい」

 あれ?

 「口に出てましたざ」

 ヤギが呆れてるわ。

 お母さんも笑てるし……

 えへへ……

 「可愛いわあ」

 「はい奥様」

 ……あっ!

 褒められたって。

 なんか嬉しいざあ!

 「ハイハイ、早苗、そこまでや」

 オカンが変な顔して、部屋に入って来たんざ。

 「早苗なあ」

 オカンが言うたざ。

 私が悪いんか?

 「松浦さん、初めてお目にかかります」

 「いいえ、お店で……」

 「こんな向き合った形ではですざ」

 オカンがお母さんの言葉を切る。

 ちょっと、失礼やざ。

 二人を見たわ。

 見比べた。

 ……美女とタヌキや。

 勝ち負けはついたわ。

 ……ん?

 「それにしても、ええ化粧品ですな。私も逸れくらい塗れば見映えようなるやろか?」

 お、おい、オカン!

 「違いますざ、地がええんですわ。桜井さんもなかなかポチャポチャして、たくさん養分ありそうやで、頑張ってみなはれ」

 ……へ?

 「あらー、すみませんねえ、肉付きようて特にお腹が」

 「何言うてんやの、それは贅肉やろ」

 この人ら、初めて同士なんか?

 私はヤギを見る。

 『しばらく見てませんか』

 小声で言うたって。

 ヤギも頷いたわ。 

 「ええ服やなあ。私も欲しいわあ」

 「そんな事ないでざ、福井産の織物でブランドの低いモンですざ。市販のブランド品に勝てませんわ」

 「えっ! 高いやろ!」

 オカンが驚いてる。

 いや、私も驚いてるんや。  

 福井の繊維業界は海外からの荒波に呑まれながら、何とか生き残ってきたんや。

 確かに廃れてしもた企業も多いんやけど、言い方悪いけどしぶとく生きとるんやざ。

 ブランド品としては、確かに知名度は低いけど物は負けとらんはず……やと思うんや。

 「はい、高いです。桜井のお母さんの、体脂肪より高いと想いますざ」

 ……お母さん、オカンを煽らんといて、この言葉が出てこんざ。

 理由は……オカンが……

 「あら、厚塗りなら松浦さんの方が得意そうやろ」

 やり返したー!

 「お腹の脂肪ですよね」

 「万年、ペンキ塗り立てのお顔ことですざぁ」

 ……二人に変な空気が流れとるわ。

 私はヤギと、冷や汗かきまくっとる。

 こんな時に、婆ちゃんも沙織もおらんざ。

 じいちゃんは店番しとるんやけど、変わって欲しいわあ。

 「なかなか、やりますのう」

 お母さんの言葉や。

 「あら、もう参りましたんか?」

 ……触らぬ神に祟りなしやざ。

 私はそーっと、部屋を抜け出そうと思うわ。

 そーっと!

 そーっと! 

 「早苗、お前何逃げてるんや?」

 「早苗さん、逃がさんでの!」

 二人が私に、的を変えたぁ。

 「ちょっと!」

 私はたじろぐざ。

 「早苗、アンタの事で「塗り立て」が来とるんや、しっとるんか?」

 「早苗さん、話があると言うから、タヌキに化かされにきたんやざ」

 そこは同じ空気なんやな。

 「早苗、逃げたらあかんでな! だいたい礼二様まで奪いよるバカ娘が」

 「オカン、誰が宮本さんを取ったんや!」

 「えー、早苗さん、幸隆と言う存在が……」

 「もう、ええやんかぁ」

 益々、収集つかんざあ。

 ヤギが一人、面白そうにしとるって。

 話がすすまないー!

 誰かー

 助けて下さいぃ

 


 

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