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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
十月下旬から十一月
54/120

54

 《次の日 病院内休憩室にて》


 宮本さんがお見舞いに来たんや。  

 始めは孝典さんやった。

 いろいろ話をしていたんやけど、孝典さんの顔かわ冴えんかったんや。

 理由は、宮本さんが苦手らしいざ。

 そういえば、宮本さんも孝典さんを嫌っていたような………

 今、私は特別個人が並ぶ、最上階の休憩室にいる。

 こんな所を休憩室に使うのは、お金持ちばっかりやろなあ。

 「孝典くんは、今の所、寝てるようやな」

 宮本さんが言うたわ。

 「はい、だから宮本さんとデートやわ!」

 少し笑って言うたんや。

 もちろん社交辞令や。

 宮本さんも、渋い笑顔で笑たざ。

 オカンはいるわけない。

 いたら収集つかんようなる。

 「孝典くんは、孝典くんやな。今でもや」

 「宮本さんは孝典さんが、嫌いなんですか?」

 私は率直に聞いたわ。

 「単刀直入やな! 正直、好きか嫌いかで言ったら、気に入らんな。彼を小さい時から知っとるからやけど……ちなみに、連は嫌いではないらしわ」

 そうなんや……

 親密な付き合いをしとる宮本さんやから、こうなるんやろな。

 「あっ、そうそう、この前のヒントありがとうございます」

 「ん? あっ、ヨモギ羊羹やな。あれは早苗さんの発想力の賜物やざ。俺と連は、ご飯食べとっただけやし……」

 アハハ……確かにや。

 けどもこの雰囲気が、発想を呼び込んだようにも思えてるんや。

 宮本さんの雰囲気は、なんやろ? まあ不思議な感じなんやって。

 「ところで、早苗さん! 孝典くん、明日は勝負言うてたなぁ」

 私は笑顔が消えたわ。

 間違いわ!

 あの事や!

 「……実は、聞いて下さい」


 《その頃、桜井は……》


 「由美子ちゃん! そっちも来たんか!」

 「……]

 「そや、大名閣が自爆したんや! それなのに、なんで西地区を恨むんや」

 「……」

 「由美子ちゃん、しばらく早苗は使えへん。それに羊羹フェアーは二月の雪が落ち着いた辺りや」

 「……」

 「派手やな、福井の人間かコイツは! こんなんしても、福井では受けんざ!」

 「……」

 「まあ、今から作成会議やな! しかし、いきなりこんな、アホなモン送るなんて……大名閣も堕ちたモンやわ!」

 「……」

 「わかったざ、じゃあ、スマホ切るざ」

 「祥子、大名閣がウチらにケンカ仕掛けたな」

 「お母さん、このケンカは買わなアカンですわ」

 「ほや、これは桜井の運命が決まるケンカやざ」

 「大袈裟ですって! 負ける気はありませんけどね」



  《早苗と宮本さんの話は……》


 「なるほど、意中は決めてるんか!」

 「はい……幸隆を選びました。これは幸隆が……幸隆が生き続けるからやなく、アイツと居ると肩の力が抜けるからです。けど……」

 「けど……なんや」

 宮本さんが聞いてきたわ。

 けど、この後の言葉は知っとるはずや。 

 「その先を言いなさい。これは、早苗さんの宿命やざ」

 厳しい口調で、宮本さんが言うたわ。

 宮本さんは、知ってるようやって。

 「けど……私、嘘を付かなアカンですか? 時間のない、孝典さんに嘘を付かなアカンのか?」

 私は泣きながら、宮本さんに聞いたんや。

 「……宿命は、自分で切り開かなアカンざ」

 宮本さんが優しい口調で、諭してくれた。

 やっぱりやわ。

 けど、間違いないんや。

 私の気持ちは、私しか決められんのや。

 「それじゃあ、早苗さん、俺は帰りますざ。宿命から逃げてはいかんよ」

 そう言うと、宮本さんは席を立ったんや。

 一人になった私は、しばらく泣きじゃくり、そして二階の購買に行こうと思ったんや。

 買うもんはない。

 けど、孝典さんに顔を合わせ辛いんや。

 少し気を取り直して、孝典さんに会わないとアカンのや。

 そうでないと、心を読まれそうで……

 さて、一度降りよう。

 そして気分転換をはかるわ。

 私……弱いなぁ。

 

 

 


 

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