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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
十月の始まり
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 《自宅に帰って……》


 オカンが化粧臭いんや、理由は……

 「お母さんは、オシャレやなあ」

 宮本さんが笑う。

 渋い笑顔やわぁ。

 オカン、邪魔やざ。

 沙織も連クンとの距離が近いざ。

 目が、餓えた狼みたいやって。

 私、宮本親子を家に招待したんや。

 抜き打ちやったんやけど、快く「ええざ」と言ってくれたんやわ。

 ……二人共、襲ったらアカンでな!

 私、ばあちゃんを見た。  

 ばあちゃんが、じいちゃんを呼ぶわ。

 しかし肝心のオトンは、仕事なんやて。

 勉強会らしいけど……

 「さて桜井さんのお宅は、どこか懐かしいですわ」

 宮本さんが笑てる。 

 懐かしい……かあ。

 古臭いだけやけど……

 「ありがとうごさいます! 礼二様」

 ブー!

 礼二様て、アンタなあ!

 お茶吹いてもたわ!

 「オカン! オトンおるやろ」

 「死にましたぁ」

 「コラ!」

 勝手に殺すなや。

 「連クーン」

 沙織が体をくねらせとるわ。

 なんだが、蛇女みたいやざ。

 私、ばあちゃんと目線が会う。

 二人して、呆れ顔になっとる。

 「さてと! 祥子、お客様にご飯食べてもらって」

 静観していたじいちゃんが言うたわ。

 「宮本の親子さん、祥子がなんか食わせてくれますから!」

 じいちゃんが追い打ちをかけるわ。

 「礼二さん、私の料理食べたいかあ」

 「連クン、ワタシの料理も食べたいやろ!」

 こん二人は……

 オカンと沙織のパワーに、宮本親子は涼しい顔しとるわ。

 「お構いなく!」

 連クンが頭を掻きながら言うた。

 「連に同じく」

 宮本さんも、笑いながら言うたわ。

 うーん、私が呼んだとは言え、ごめんなぁ。

 それしても……この親子は大物やわ。


 オカン、沙織が居なくなり……

 やっとで話が出来るざ。

 さてと……

 「宮本さん、一つ聞いてええかあ」

 「はい、何ですか?」

 「実は……」

 私はあの事を言ったんや。

 そしてヨモギ羹のことや……

 ここでは幸隆は封印した。

 話てもええわけど、何故かしたくなかったんや。

 それに……

 「沙織! それ違うやろ」

 「連はコレなの!」

 台所からや。

 ……あのパワーに、宮本さんにこれ以上疲れさせたらアカンし。

 「アハハハ、いい声やな」

 連クンが笑った。

 屈託のない笑顔は、ぬいぐるみのクマちゃんその物やわ。

 確かに母性を擽るわあ。

 「こら、連」

 宮本さんが怒る……けど、笑いながら言っとるわ。

 「さて桜井さん……よりも、早苗さんで良いですか?」

 宮本さんが言うたわ。

 「はい、構いませんよ」

 私は即答したざ。

 だって桜井さんだらけやったら、どの桜井かわからんし……

 「俺も早苗さんでええか?」

 連クンも言うたわ。

 「ええざ、ええざ」

 気安く、了解したんやわ。

 後で大変になるのも知らず……

 「こら、連! どさくさに! さて、ヨモギ羹ですか」

 宮本さんが言うたわ。

 すると、連クンが意外なことを言うた。

 「俺と、同じ考えやね」

 え!

 私はビックリしたざ。

 「実はな、孝典クンがああなった時に、奈緒子夫人から私に打診があったんですよ。その時、連の解答がそれやったんです」

 「けど、失敗でした。実は孝典さん食べたら……不味い! って吐いたんです。因みにヨモギ羹は作って貰いましたんや」

 親子が言うたざ。

 私は初耳やった。

 「そこで、ここに依頼とは……世間は狭いですわ」

 宮本さんが、お茶を飲みながら言うた。

 ……解決やわ。

 まさか、こんな方向から!

 「けど、早苗さん、実はおばちゃんなぁ」

 「連! おばちゃんは余計や! せめて先代夫人や!」

 「父さん、硬いことなしや! さて続きやけど、おばちゃんな俺のヨモギ羹失敗した後にな、『試す価値ありやざ』って笑てたんやざ」

 !!!

 私はビックリしたざ。

 試す価値?

 私をか?

 何で、何のため?

 「父さん、おばちゃんはお菓子のために、早苗さんを試してるんやろ?」

 連クンが、宮本さんに聞いたわ。

 「連! コレは夫人に聞かないとわからんざ」

 宮本さんが諭すように言うたわ。

 ……なんや?

 この変な感触は!

 私は幸隆のお母さんに試されとる。

 これは知っているんや、けど……なんやろ?

 試されてるモノは一体何なんや?

 お菓子のはずや!

 だけど、違う何かを試してるんか?

 「どうしました?」

 「え? っあ、なんでも!」

 私は笑ったざ。

 苦笑いや。

 「さー出来た!」

 沙織が大声上げとるわ。

 じいちゃんは、店にお客さん来て接待中で部屋は私とばあちゃんと、宮本親子が声の方向に姿勢が集中したんやわ。

 襖を勢いよく開けると……そこには大量のかつ丼! それも特盛りが二つ!

 「お待たせ! 沙織とオカン特製かつドーン! 連クンもお父さんも、ドーン好きでしょ」

 沙織が大声を上げとるわ。

 アンタなあ!

 「礼二様、どうぞ!」

 オカン……アンタもか

 「おっ、すごいボリュームや」

 「うん、美味しそうや」

 宮本さんと、連クンのノリがええざ。

 これ、正解なんけ?

 「さてと、みんなのもあるざ」

 「自分たちでお願いやでね」

 オカンと沙織が、台所へ戻っていくわ。

 ……セルフサービスか

 まあお腹すいたし、ちょっと遅い昼ご飯やな。

 


 《食事中》


 私はかつ丼を食べとるわ。

 それも玉かつ丼や。

 ……え? 玉かつ丼てなんやって?

 玉子の入ったかつ丼やざ。

 福井でのかつ丼は、ソースかつ丼が主流なんやけど結構、玉かつ丼も食べられてるんや。

 とは言え、かつ丼は福井ではソースを指すんやざ。

 だからかつ丼はソース……これは福井では常識やな。

 けどよく考えたら、この前はソースかつ丼やったし今度は玉かつ丼なんてかつ丼と縁が深いわ。

 「美味しいわ!」

 連クンが、言うたわ。

 そう言えば連クンは、ソースかつ丼時おらんかったなあ。

 別にどうでもええけど。

 ウーン……美味しいわあ。

 なかなかやざ。

 「このカツ、美味しいです」

 連クンが幸せそうやあ。

 なんやろ? 顔がふやけてまう。

 連クン……侮れないわ。

 「確かに!」

 宮本さんも、目が垂れとる。

 このオッサンも、憎めんわ。

 「カツはかつ丼の命やざ! こだわって、近くのスーパーから美味しいの買うてきましたんや!」

 オカンが言うたわ。

 高いんやな。

 明日のご飯は、大丈夫なんか?

 「とは言え、カツだけでは美味しくありません。玉かつ丼にしろソースかつ丼にしろ、基本があるから美味いんですよ」

 宮本さんが言うたわ。

 基本かあ……

 「そうやな、父さん。ソースにしても玉子にしてもカツとの相性はええからやな」

 連クンが美味しそうにかっこんどる。

 「なあ、礼二様、カツとご飯の相性はええですから」

 オカンが言うてるわ。

 相性って……

 「はい、ご飯はなんでも合います……カツもですが日本人が食べとる礎ですからね」

 礎……

 和食の礎……

 和菓子……

 礎……



 !!!



 「そうや! そうやったんや!」

 私は大きな声で、叫んだ。

 簡単やったんや。

 私……ヨモギ羹には礎を入れんかったんや!

 コレを入れたら、必ずイケる!

 「オカン! ばあちゃん! わかったざ! コレで勝負するざ」

 私はばあちゃんと、色ボケしてるオカンを呼び寄せて……と、言うた。

 「へえ」

 宮本さんが聞いてたらしく、なんか頷いてるわ。

 「なるほどです」

 連クンも笑てる。

 どうやら声を抑えられんかったみたいやわ。

 でもコレしかないざ。

 「後でデザートですか?」

 連クンが言うた。

 「オカン! 宮本さんに食べて貰いますざ!」

 「早苗、わかった! オカンに任せとき! なるほどやわ、近すぎてその発想は素通りしてもたわ!」

 「よし、ばあちゃんも手貸すざ」

 決まったわ。

 これで、一致団結……

 「ところで、早苗さん、はよ食べましょう」

 「そうや、早苗さん」

 宮本親子が……私を……早苗さん! と言ったんやわ。

 オカンと沙織が、変な笑いで私を睨むんや。

 ……

 ……

 ……

 「早苗! アンタなんでそこまで」

 「姉ちゃん、また、男足し込んだぁ」

 アンタらなあ!

 しばらく、収集つかないー!

 とは言え、答えはでたざ。

 コレが……正解なハズや

 正解なハズやけど……

 「姉ちゃんのバカ」

 「早苗、覚えとけ!」

 収集があ……

 

 

 



 

 

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