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《家に帰って……》
私オカンとばあちゃんに、話をしているんや。
ちなみに、じいちゃんは町内会で、オトンは仕事が終わらんらしいざ。土曜日なのに、お疲れ様やわ。
時間は夕方頃で、ご飯たべる前あたりやろか?
少し話し合いをしていたんや。
「なるほどや、ヨモギは考えたなあ」
ばあちゃんが言うた。
「そうやろ! なんで、ヨモギ羹がアカンのや?」
私がまくし立てるように、言うたって。
「姉ちゃん、姉ちゃんはヨモギ嫌いやろ」
沙織が口を挟むわ。
「なんや! 私はヨモギ食べれんけど」
「まあ、祥子も苦手やな」
ばあちゃんが、私とオカンを見たざ。
私とオカンが、顔を見合わせる。
二人して、笑た。
「沙織、アンタはどう思う?」
「え? 姉ちゃん! そうやなあ……わからんわ、一度食べてみんとわからんざ」
沙織は言うたわ。
確かにやな……
「オカン、ヨモギ羹作ってくれんか」
私が言うたって。
「……わかった、ヨモギの粉を使うわ。ヨモギ粉の挽き具合は、粉状でええやろ?」
ばあちゃんが答えてくれる。
肝心のオカンは……少し逃げ腰やって。
もう!
「オカン、私が部屋に入るざ! 私もお菓子くらい作れるんやでの」
オカンに言うたわ。
「祥子、どうする? 今回は早苗に作ってもらうか?」
ばあちゃんが私寄りや。
ひょっとしたら……
「い、いいえ、私が作りますざ。まだ、早苗は入れさせんざ」
オカンが、キッパリと言うた。
……はあ
「残念やったな、姉ちゃん」
沙織が冷やかし半分に言うたわ。
この小娘は!
「はあ、せっかく、孝典さんのお母さんに手作りの試作品を、持っていけると思たのに」
「双子の弟さんもいるやん」
沙織が冷やかしながら、お茶を啜っとる。
「沙織、アンタ! 私は孝典さんのために、お菓子作ってんのや! なんで、幸隆のためなんや!」
私が大声を出した。
……
……
……?
みんなが私を見る。
そして……みんながニタニタしとるわ。
なんなんや?
「姉ちゃん、いつから呼び捨てできる仲になったんや?」
沙織が言ったざ。
呼び……捨て……
呼び捨て……
……あっ!
幸隆を私、呼び捨てとる。
空気みたいに、いつの間にか呼び捨てしとる。
……答えはわかるんや
けど、なんで?
いつから変化したんやろ。
そしてなんで、変化したんや?
だけど、心が……
孝典さんより、幸隆を想い初めとる。
「早苗!」
オカンが、私を呼んだ。
「幸隆さん、ええ男やざ。不器用な娘にはなったらアカンざ」
オカンが、言うた。
五月のあの時、オカンから……
「不器用な娘!」
そう言われて抱きしめられたのを、思い出したんや。
少し私は俯いたわ。
「さて、男どもは居ないざ。女ばっかりの夕飯や! 沙織、手伝えや! 早苗……まあええわ」
オカンのかけ声で、夕飯が始まる。
始まるんやけど……
私は時間を遡っとる。
孝典さんとのデートをや、何回かしとるデートで今になり不思議な感覚におちたデートがあることに気づいたんや。
六月に美術館のデート……
七月のクラシックコンサート……
後のデートは書かんかったけど、初めて河川敷であった孝典さんのような感じやったんや。
この二つは、どこか違っていた……そんな気がする……ざ。
……まさか!




