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さて、私はまだ松浦家にいる。
お母さんとの話し合いが面白いんや。
そして、幸隆さんへの違和感や。
違和感……つまり、幸隆さんの出会いについてやわ。
「なんや、早苗さん、俺なんかしたか」
どうやら少し怖い顔したんやろか? 幸隆さんがたじろいでるわ。
「別に」
私は流す。
今はそんなことよりも、お母さんや。
「お母さん、単刀直入に言います」
「なんやの」
「私のこと、どう思ってますか?」
私、言うたわ。
本当に、単刀直入や。
幸隆さんが、おいおいって顔や。
「綺麗なお嬢さんや、私の若い時よりもや、少し嫉妬しとるわ」
アハハ、笑いながら言うた。
上品な笑顔や。
私には出来んざ。
私には勝てん……ん? 何故争ってるんや。
私は私やざ。
どうしてや?
「桜井さん、聞かせてや! 孝典には何をたべさせてくれるんや」
お母さんが言うた。
「はい、ヨモギを使います。ズバリ! ヨモギ羹です」
「ヨモギ羹?」
「はい、ヨモギは薬草です。体に良いものです。それを水羊羹状にして、孝典さんに食べていただきます」
私が力強く言うた。
そう、これが私の発想や。
「どう思いますか?」
私は聞いたざ。
自信はあったんや。
けど……
「桜井さん、家族に相談してみてや。正直なるほどと思うわ。そやけど、何かが足らんとも、思うわ。それが何かはわからんのやけど……それだけではアカンと思うんや」
お母さんが言うたわ。
えっ……
ダメなんか。
「言っとくけど、その方向はええざ。けど足らんはずやわ。一度持ち帰ってみね」
お母さんが優しく言うた。
足らないモノ……何やろか?
ふと視線を外す。
幸隆さんを見た。
幸隆さんは呑気に、私とお母さんのやり取りを見ているわ。
コイツは!
幸隆め!
「なあ、幸隆! アンタ見せもんちゃうざ!」
大きな声を出したわ。
すると、幸隆が目を丸くしていた。
「は……あは……あははは」
お母さんが笑った。
え? え?
私、何かしたんか?
「桜井さん……いや、早苗さん、ありがとうや」
お母さんが言うたわ。
どうしてや?
「なあ、早苗……さん、そろそろ帰ろか。そこで報告や」
幸隆が言うた。
……そやな
「幸隆、帰らせるんか?」
「距離が近づいたんや。前進や」
「幸隆、お前は奥手やなあ」
お母さんが、深いため息をついたざ。
なんで?
「とにかくや、送るざ。ノリを頼むわ」
幸隆の言葉に、私は首を縦にふる。
幸隆、私は孝典さんの為に頑張るざ!
そう、頑張る!
かんば……る
何やろ、また違和感や。
さっきの違和感とは違う違和感や。
私、どうしたんやろ。
私の心が可笑しい……んか?
何なんや。
……とにかく、帰ろう
家族に報告や。
そして、お母さんの足りないモノを、オカンから聞いてみるざ。
ひょっとしたら、オカンも同じことを言うかもや。
それにしても……私の心はどうなってるんや?
不思議な感覚やざ




