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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
九月暑さ残る時間
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 《松浦商事にて》


 ずんぐりむっくりしたビルやなあ。

 第一印象やざ。

 ビルは四階建でそんなに高くはないんやけど、横幅広いんやって。

 ショッピングモールみたいやわ。

 いや? それよりは小さいか?

 こんな場所があったのは知ってるけど、実際来てみると印象が違うんやわ。

 「緊張してるんか?」

 宮本さんの問に、首を横に振る。

 「じゃあ、いくざ」

 「はい」

 

 中は広々したスペースやわ。

 ビルな入るとまずは、案内に行く。

 綺麗なお姉さんが、私と宮本さんを見る。

 お姉さんは宮本さんをみると、深く一列をしたわ。

 「宮本相談役、営業の松浦課長がお待ちしています」

 「幸隆……失礼、松浦主任……これまた失礼、松浦課長をロビーへ来てくれるように言ってや」

 「えっ?」

 「お嬢さんいるざ! そう言うてみや」

 受付のお姉さんが、半信半疑に頷き電話で呼び出しをかけてるわ。

 「松浦課長がすぐに来るそうです」

 「そか!」

 宮本さんのが言うと、近くのソファを見る。

 まあ、座ろうや。

 心の声が聞こえて来たわ。

 

 よう考えたら不思議なおっさんやわ。

 少し聞いてみたいなぁ。

 ただ、時間がないわ。

 一度、沙織に聞いてみよう。

 ……とは言え、連くんの話ばかりになるかも知れんなぁ

 そうこう考えてるうちに、幸隆さんが来たざ。

 この前見た、背広姿といっしょやわ。

 洒落た背広と言うよりも、動きやすい背広を選んだみたいや。

 つまり安っぽいんや。

 先程見た社長のあの背広姿の長男さんは、高そうな威厳のある格好やったけど……

 「なんや礼二さん、それに早苗さん」

 幸隆さんが言うた。

 「さて、お嬢さん任せるざ。こっちは社長にまた会いにいくわ」

 「え?」

 私と幸隆さんが同時に言うた。

 俗に言うハモったって。

 私と幸隆さんは顔を見合わせて、私は赤くなった。幸隆さんは笑ってるみたいや。

 「何しに来たんや?」

 幸隆さんが言うた。

 「明日の土曜日、家に来てや! 孝典さんのヒント欲しいんや。難解なんや」

 私は言うた。

 「デートは自宅か!」

 「違うわ!」

 「デートみたいなモンやろ? 例え孝典のことでもや」

 幸隆さんが言うたわ。

 視線は真っすぐ前を見ている。

 私に視線を送ることはなかった。

 「俺な、営業しとる。松浦の血があっても、その血を利用することは出来んのや。俺が今、この歳で課長までなったんは、自分の実力やと思うし思いたいんや」

 「聞いた。孝典さんは」

 「荒井が孝典のことを、ボンって言っとるのを聞いたやろ。あれな、孝典兄さんが何もせんかった証や」

 そういうと、幸隆さんは私に視線を送る。

 瞳の輝きは、二人共同じや。

 同じやけど……

 「とにかく、私を助けて下さい。お母さんの課題は難しいんや。身内の手助けが必要や。孝典さんは時間がないんや」

 「わかった、しかし仕事優先やぞ! 手助けは二の次やでな」

 決まったわ。

 決まった……何が決まったか?

 この課題は、幸隆さんとの共同作業や。

 一つ言うけど、共同作業はケーキにナイフモドキで切ることばかりでなないざ。

 それにまだまだ、そこまで私は考えとらんし。

 けど、なんか心強いんや。

 嬉しいんや。

 「とにかく、明日は朝から行ったるわ! 十月やな明日で、急ぐぞ!」

 「うん!」

 「さて、戻るわ」

 幸隆さんは戻っていく。

 一度、私を見て軽く挨拶してえれに消えたわ。

 もう明日で、十月なんかあ。

 いたずらに時間使ったなあ。

 はじめから、こうしていれば……

 孝典さんの時間は少ない。

 十月は取り戻すざ!

 それにしても、宮本さんどれくらいかかるんやろ?社長との話は。


 《宮本さんと一樹》


 「礼二さん、幸隆はようやってます。孝典とは大違いや!俺からしたら、孝典は要らん奴や」

 「そういうな、お母さんにも言われとるやろ」

 「まあ、今となっては……ところで、礼二さんも遊び好きやなあ。あんな娘に」

 「綺麗やないか」

 「そうではなく、まあええわ!」

 「アハハ……さて、話は終わった頃やな」

 

                 おわり

 

 

 

 


 

 

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