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《時間は夕方、ご飯中》
食卓には、ハンバーグ、煮物、サラダ、味噌汁、ご飯、美味しそうや。
例え、スーパーの総菜ばっかりであっもや。
福井はスーパーが多く、総菜が多いんやっての。
共働きが多い関係で、総菜がよう売れんのやわ。
よう売れんは、よく売れるのいみやでな。
「ねーちゃん、勝ち目あるんか?」
妹がハンバーグをかぶりつきながら、なんか言うてるって。
ここで、家族紹介や。
桜井 沙織 十六歳、高校二年生になるようや。
三女でたれ目……
「うるさいって!」
沙織、聞こえたんか?
「早苗ねーちゃん、糸目やん」
うるさいって!
ほや、私と沙織の間にもう一人入るんやけど、今県外の大学に行っとんやわ。
いずれ紹介するけど、一言、女や。
美人三姉妹やってぇー。
「まあ、そう言うとけば、無難なギャグやで」
なんやってかあ?
「耕平さん、夢見せたらんとあかんて!」
オカン! もう。
まあ、もう一人紹介や。
桜井 耕平 オトンや、歳はいくつだっけ?
「祥子さんと一緒やって」
この時点で、年齢不詳決定やろな。
職業 高校の歴史教師、これにへばり付きや。偉くなる気は毛頭ないんやわ。
それと、養子さんや。
じいちゃんは居ない。
理由は、始めで言うたのぅ。
……少し、おや? と思た人いるかぁ?
えっ、何が?
じいちゃんと、オトンや、二人共養子やろ。
桜井家の七不思議の一つなんや……ちなみに後六つは知らんけど。
絶対、女しか産まれんのや。
理由は、わからん。
だけど、ずーと、ずーっと!女しか産まれんのやわ。
だから、男を養子に貰うんや。
ばあちゃんも、オカンもそうしてる。
そして、私に受け継がれているんやけど……
「早苗、早よええ男見つけや!」
「ほやざ、家訓知っとるやろ?」
オカンも、ばあちゃんも!
「はいはい、お役所仕事、公務員以外は男ではない」
ご飯一口食べながら、答えたわ。
「銀行員は……まあ、考えるわ。だけど、大企業はあかんてな!今からの日本は、大きい企業は駆逐されてくんや。中小企業ばっかりになるんやぞ」
オカンが言うわ。
オカン、結構こんな話好きやけど、だからって私の未来も決め付けんなや。
「そこまでや、祥子!なあ、早苗、家の家訓のもう一つ、男は外で働くの意味知っとるか?」
ばあちゃんが言う。
「確か、さくらいだけでは食えんからやろ?オトンらの給料も生活費になるからや」
オトン、笑てる。
苦笑いに近いって。
「そうや、お菓子だけでは心許ないからやな」
ばあちゃん、はっきり言い切ったって。
福井は共働きが多いんや。
理由の一つに、三世代が今でも多いんや。
昔の良き姿を、結構色濃く残ってんのや。
私は良いと思う。
都会人の核家族がカッコ良く映すテレビは、正直滑稽やったって。
……都会かあ。
「どうしたんや?ねーちゃん、コレもらうわ」
沙織の箸が、私のハンバーグを捕らえた。
替わりに、沙織の厚揚げ捕ったるわ。
「あっ、私の厚揚げ!」
「沙織が悪いんや!……ところで、オカン、ばあちゃん、実はな……」
私は昼間のお客さんのやり取りを話たんやわ。
「へえーええ男かあ」
ばあちゃん、方向が違うっての。
「お母さん、早苗は、そのお客さんなお菓子を見繕う方法を聞いてるんやざ」
オカン、ナイスやって。
「知ってるわの!そう言わんなや!」
ばあちゃん、ムキになったわ。
「しかし、偉い難しいなあ。お客さんの置き土産のお菓子を何にするか? それも、都会人かあ」
沙織が味噌汁啜りながら、他人任せな感想でほざいとるんやって。
コイツは!
「……なあ、早苗少し情報欲しいんやっての。明日、一度このお客さんにあって来てくれんか?」
「え? 何で」
ばあちゃん、何でや?
「祥子、ほら……」
「え? ……っあ、なるほどや、早苗、明日ここに配達な!」
……もしかして
「この会社の違う所から、お菓子の依頼があったんや。その納品が明日なんや」
やっぱりですか。
家の店、結構上手くやってるなぁ。
「早苗、明日、偵察やって」
オカンのいやらしい顔に、知らん間に私も首をコクンとうなずいてたって。
とにかく、明日、偵察や。
そうとなったら……あれ?
沙織を見ると……あっ!
「沙織、その唐揚げ返してや!」
声も虚しく、唐揚げが沙織の胃に消えてったわ。
「沙織!」
慌ただしいいつもの桜井家の夕飯はまだ続くんやって!