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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
七月入りたて
25/120

25

 《午後 おやつ》


 「……って、夜に山本さんに紹介された農家へ行く。少し強行するざ」

 私は、くず餅食べながら言うた。

 ツルツル口当たりがよく、程良い甘さやあ。

 気合いれたつもりが、顔がにやけてまうわぁ。

 「ニタニタすなや! とは言え、なるほどや、ただ…もう一声欲しいなあ」

 オカンは言うた。

 えっ!

 「早苗! 梅、ブルーベリー、これはいい発想や。けどな、もう一つ考えや。人間は三と言うことばに安心感を覚えるんや」

 オカン……

 「そやな、それと早苗、色も足らん。梅干しでなくて梅だけで使うんやったら青の色や、ブルーベリーは赤や、つまりあと一色……黄色が欲しいなあ」

 ばあちゃんが、難しい注文付けたわ!

 ウソや……まだ、足らんのか?

 その前に、私がやろうとしていることの説明や。

 ズバリ、梅を練り込む菓子と、ブルーベリーを練り込む菓子を作るんや。

 まず、福井の梅は全国でも収穫量が上位なんやざ。一番はあことして、おそらく二番か三番あたりかなぁ。

 その梅を使って、夏の菓子を作るんやけど……やはりコレだけでは、物足りんかな……そんな私の表情を優衣さんは察して、もう一つの果物を紹介してもらった。

 それが、ブルーベリーや。

 福井にはブルーベリーを作っている農家を、優衣さんが知っていたんや。

 つまり、優衣さんには梅とブルーベリーの果物農家を二つ教えてもらったことになる。

 優衣さん、本当にありがとうございます。

 そして、梅とブルーベリーに合わす菓子……ズバリ! 若鮎なんや。

 若鮎って、菓子や。

 鮎の形をした菓子なんやよ。

 これは暁美さん、とこの会話からヒントをもらったんや。

 お義父さん、鮎つりに行った。  

 そういってたやろ。

 そこからや、暁美さん鮎は夏の匂いがする魚……そう言ってたやろ。

 ……もうわかったかぁ。

 つまり、私は若鮎に果物を練り込んで、味とほのかに香る匂いを夏の匂いとかけたかったんや。

 正直、自信あった!

 自信あった! オカンもばあちゃんも、興味深々でこれはイケる!

 そう思た矢先や……もう一つ足らないと言われたんは。

 「早苗、もう一声やざ」

 オカンが言うたって!

 「明日の朝には、試作品をこさえるで、もう一つ絞れや」

 ばあちゃんまで!

 えー、そんなぁ。


 はあー……

 なんやろ。

 もう一つなんてなぁ。

 ふらふらと、店に顔を……

 ん?

 咲裕美が接客中や。

 隠れよう。

 私、悪いことしとらんざ。

 そやけど、とっさに隠れたわ。

 しゃあーない、聞き耳たててっざ。

 

 「おばちゃん、ありがとうございます」

 「ここの菓子美味しいんや」

 「本当、ありがとう」

 「咲裕美ちゃん、ええ笑顔やわ。早苗ちゃんとは違う魅力やわあ」

 「……お姉ちゃんは、私には高嶺の花や。昔からみんなに注目されてたし、魅力的やし、何一つ勝てんかった……私、よう怒られ呆れられてるんです。それも、今もです……でも」

 「でも、なんやぁ?」

 「お姉ちゃんは、私の自慢や。呆れても怒られても、私に手を差し伸べてくれるんや。また、私のアホでお姉ちゃん振り回して……私」

 「ええ娘やなぁ、咲裕美ちゃんも、早苗ちゃんも! 桜井美人三姉妹とはよう言うたわ! なあ、咲裕美ちゃん、こんど家のキンカン瓜を上げるざあ。これ、メロンにも負けん甘さなんやざあ」

 「ありがとう、おばちゃん」


 ……!

 私はとっさに、店に出たざ。

 咲裕美と、おばちゃんが驚いてたわ。

 「おばちゃん! ありがとうやざ。それや!」

 私の勢いに、二人がビックリしてるわ。

 

 おばちゃんが帰ると、咲裕美に向き合った。

 「アンタなあ、お世辞ばっかりで呆れるわ」

 私は言うたざ。

 この妹は信じん。

 結局、私を振り回してるからや!

 出来の悪いモンほど可愛い……それは、そうしとくわ。

 「お姉ちゃん、私はウソ言うと……」

 「そんな実のない話はええ! 咲裕美、すぐにおばちゃんに、ソレをもらってきてや」

 「え?」

 「キンカン瓜や! これで……」

 「三色、そろたなぁ」

 店の中から、いきなりオカン登場や。

 「早苗、はよ梅とブルーベリーを、咲裕美はキンカン瓜をもらってきてや。夜中になるけど、試作品作ってみたるわ」

 オカンが言うた。

 「明日は、臨時休業やな。だけど、価値はありそうやなぁ」

 ばあちゃんも出てきた。

 よっしゃあ!

 道は決まったざ。

 「明日、夕方には高塚屋さんに間に合うかあ」

 咲裕美の目に涙がある。

 「咲裕美! ええ」

 私は咲裕美に言うた。

 「アンタ、楽し過ぎや。だから明日、アンタ一人で売り込みやざ」

 「え?」

 「一人で、説明してこいや!」

 厳しい口調で言うたわ。

 「ウソ……や」

 「咲裕美!」

 オカンが、大きめの声を上げた。

 「今から、試作品作ったる。早苗が言うた通り、アンタが一人で説明や。自分の蒔いた種を、最後まで早苗に刈らせるんか?」

 「……」

 咲裕美が俯いたって。

 オカンの言葉は、重いわ。

 「咲裕美、惚れた男に保護者付で説明は、情けなさすぎや」

 ばあちゃんが、優しい口調で言うた。

 咲裕美!

 答えは!

 「……ありがとうお姉ちゃん、私、一人で行く! お姉ちゃんが引いてくれた道、私が仕上げさせて貰います」

 咲裕美、シッカリ言うた。

 目にやる気を感じる。

 ……決まりやの。

 私がオカン、ばあちゃんにコクンと頷いた。 

 「オカン明日は、臨時休業やな」

 「今日は材料集めや。早苗、早よ行け」

 オカンが外を指差したわ。

 ……わかったざ。

 行くわ。

 行き先は、ブルーベリー農家や。

 梅はスーパーで福井梅として売ってるから、貰う前に代用出来る。

 キンカン瓜も、もしたくさんもらえないなら、スーパーで代用出来る。

 けど、ブルーベリーが採れるのは初耳や、そこに行ってみるわ。ひょっとして、スーパーにないかもしれんのや。

 え? あるやろってか?

 ジャムはダメやざ。

 それに……そこは福井産にこだわりたいんや。

 スーパーに福井産のブルーベリーがあるかわからん! 

 だから、行くんや。

 まあ……優衣さんが根回ししてくれた。

 私は、行くだけやって。

 さて!

 行ってみよ! 


 《夜中》 

 

 ……ごめん、ブルーベリー農家の話はここではせんとくの

 訳は……いろいろあったんや

 これは少しずつ、ハッキリさせてくわ。

 孝典さん、アイツは……孝典さんと違う!

 なんなんや、アイツは……



                 



 追従  キンカン瓜に興味あったらググってな!

 

 


 

 

 

  




 

 

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