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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
四月 桜満開
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 《夕飯 いつもの食卓》


 「いただきまーす」

 沙織が、トンカツかぶりつきながら言うた。

 今日の晩ご飯は、トンカツ、油揚げと筍の煮物、キャベツと胡瓜の漬け物、味噌汁やざ。

 煮物以外は全て、スーパーのお惣菜なんやって。

 私は忙しいからなあ。

 因みに、煮物はばあちゃんのお手製や。

 油揚げは、厚揚げなんやよ。

 福井の油揚げは、厚揚げのことやでな。

 油揚げの消費量は、平均で全国一位らしいざ。

 「早苗は、料理下手やでな」

 ばあちゃんが、皮肉るざ。

 「……」

 オカンが、無口なんやって。

 理由はわかる。

 オカズが一食少ないざ。

 それはトンカツで、他のオカズも少ないんや。

 ご飯も少ないって。

 「祥子、体に悪いぞ」

 じいちゃんが言うた。

 「気にせんといてや!」

 オカン大声だすなや。

 ビックリして、お茶吹いてもたって。

 「祥子、どうしたんや?」

 オトンが優しく言うた。

 「耕平さん……何でもないんや。うん」

 オカンが大人しくなったって。

 …………まさか!

 まあ、ええわ。

 後で沙織に、相談したれ。

 「日本酒に合うお菓子ってなんやろ?」

 私はいきなり言うたざ。

 みんなの箸が、止まったって。

 「実はな……」

 私は佐藤さんの話をしたんや。


 「へえ、和田さん、東京帰るんか?」

 「本社やって、普通は本社言うたら東京やろな」

 私は沙織に言ったざ。

 「へえー、酒と和菓子かあ」

 オトンがビール飲みながら言うたざ。  

 「なあ、オトン、酒に合うお菓子知らんか?」

 「知らんざ、お父さん知りませんか?」

 オトンが、じいちゃんに振ったざ。

 「知らん!」

 短く言われたざ。

 「祥子は?」

 オトンが、オカンに振ってくれたわ。

 「……え、な、なんや? 耕平さん、わ、私は知らんざ」

 不意を突かれたみたいに、オカン言ったんや。

 オカン……

 「なあ、オカン、なんか隠し事しとらんか?」

 私は直球勝負! そんな感じで言うた。

 「な、なんで、そんなんするんや! アホ娘が、飯口合わんわ! ご馳走さん!」

 あら、片付けしてどっか行ってもたざ。

 「……まえ、ええわ」

 オトンが言うたって。

 なんか笑てるざ。

 「なあ、オトン! なんかわかるんやろ」

 沙織が、イヤらしい顔でオトンを見たざ。

 「ああ、あれはな……」

 そう言って親指を立てたざ。

 ん?

 「ええええ!」

 沙織が味噌汁こぼしながら、大声上げたって。

 汚い……

 「ほんとかぁ!」

 ばあちゃんまで、大きな声上げとるざ。

 「し!」

 オトンがオカン出て行った所を、指差しておるざ。

 「そう言うことや、まあ祥子はあれでええ女なんや」

 そう言って、ご飯かっこんどるざ。

 ん?



 《部屋》


 あー、ええお風呂やったざぁ。

 今、髪渇かしとる。

 ドライヤーの無機質な音が、部屋中に響く響くざ。

 「早苗ねえちゃん、ええか?」

 うん? 沙織やな。

 「なんや、入んね!」

 入んねは、入って! のことやざ。

 方言な。

 沙織が部屋に入ったざ。

 沙織もお風呂上がりで、こっちは髪が渇いとらん。

 「髪乾かしな」

 「ドライヤー、壊れたんや。終わったら貸して」

 沙織が言うた。

 なんや……それだけなんか?

 「沙織、話があるんやろ? なんや?」

 「うん……私な、将来やりたいこと見つかったんや」

 「やりたいこと? お菓子やないんか?」

 「うん……早苗ねえちゃんには、言っときたいんやって」

 沙織の神妙な顔は、久しいざ。

 ようこんなとはあったんやけど……

 なんか、そんな雰囲気やないんやって。

 「ええざ、なんや」

 「私、看護師になりたいんや!」

 沙織が言うた。

 看護師? 少しビックリしたざ。

 まさかそんな言葉が、聞けるなんてやって。

 「私、連クンと付き合ってます」

 沙織が言ったざ。

 けど私はある程度予想しとった。

 理由は、県立図書館でのことや。

 なんか、連クンの雰囲気が違ってた。

 その前に、何かあったんは間違いざ。

 「連クンな、お医者さんになりたいんやって。ねえちゃんが、インフルエンザで倒れた時に、いろいろあって決めたんやって」

 「え?」

 私は素っ頓狂な声を上げたざ。

 これはわからんかったわ。

 けど……なるほどやざ

 それでいて、私のインフルエンザ発症が決め手なんて……複雑やざ

 「ええやん、さくらい は、私が継ぐんやろ」

 「ほんと? ほんとかあ?」

 沙織の目が、輝いたざ。

 私は沙織に言うたって。

 「アンタはアンタの道を行けばええざ」

 「ねえちゃん……」

 沙織が、泣いとるざ。

 私は沙織の頭を撫でたった。


 けど、この言葉の意味……後で大変になるんやけど

 今はわからんかったざ。

 それは、しばらくしてやけどな。

 さて、話を戻すざ。


 「ねえちゃん、ありがとうや。これはオカンには言えんかったで」

 「そうやろな……なあ、ところでやけど、オカンなんで近頃変なんや? わかるかあ」

 私は沙織に聞いてみたざ。

 沙織はいきなり表情が変わったんや。

 目が、点になっとるざ。

 ヤケに垂れ目の点やけど……

 「ねえちゃん、オトンが親指突き立てたやろ」

 「それが?」

 「これの意味はわかるか?」

 そう沙織が言うと、小指を立てたって。

 「知ってるざ、男が女となんかあんやろ」

 私が答えた。

 すると沙織が親指を立てたって。

 「これ、その反対や。女が……」

 沙織がここまで言うと、イヤらしい笑い顔になったざ。

 …………

 …………

 …………!

 「オカンにおと……」

 「しっ! 声でかいって」

 沙織が私の口を塞いだんや。

 「そう言うことやざ」

 「……誰やろ」

 「おそらくは……」

 沙織がそこまで言うと、ドライヤーを横取りしたざ。

 「髪渇かすざ。心配いらんてオトン言うとった。オカンが顔に出るんやから、罪の意識があるんや……そう言ってたざ」

 沙織がドライヤーを使い始めたって。

 「いろいろあるの」

 使いながら、沙織がポツリと言ったざ。

 どこか興味深々みたいな感じでや。

 いろいろ……か

 これからも、いろいろあんやろか?

 ……わからんな

 ううん、一つわかることがあるざ。

 わかるじゃあなく、やらなかあん事やって。

 それは……

 「なあ、沙織、お酒とお菓子って、どう思う?」

 「え? 私、未成年やざ。わかるわけないやろ!」

 そうやった。

 これは失敗や。

 ……よし、これは明日考えよ!

 今は沙織と、少し話すざ。

 なんかそんな気分やで。

 

 

 


 

 



 

 


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